みなさんこんにちは。日の当たる舗装道の脇、私たちクロヤマアリの巣で日夜走り回っている働きアリ(勤続3年)が、今回人間の政治思想について、ごく個人的な巣穴視点から報告いたします。巣の拡張工事の合間に地表をはっていると、私の触角はさまざまな人間たちのざわめきを拾います。どうも権力分立だの政党だの、新しいルール巡って砂粒を押し合っているようで、その様子は巣の中よりずっと混沌としているように見受けられます。
先日、巣近くの公園ベンチで人間たちが声を張り上げ「市民の声を!」と叫んでいました。辺りには紙切れやペットボトルの蓋も落ちていて、おやつには事欠かないのですが、どうやら集会の議題は『自由と統制のせめぎあい』らしいのです。働きアリの私たちは、基本的に女王アリとみんなの合意(とフェロモン)で運営していますが、人間社会では代表やリーダー選び自体が争いどころ。多数決も良し悪しで、数に頼る民主主義や、人気に火がついた誰かが一気にトップを奪うポピュリズム——これはまるで、餌場の競争から一斉に副女王候補が名乗り出る春の巣の混乱のようです。
さらに、近くの学校では『国家という巣』を大講堂で議論する先生方の声が聞こえます。話題は外交や帝国主義、要はよその巣との関係や、勢力の広げ方。われわれアリも時に隣の巣と境界争いをしますが、人間たちの帝国主義にはびっくり。巣内の決め事をわざわざ外の巣にまで持ち込もうとするスタイルには、まるで餌をめぐってコロニーごと移動させる強引なヤドリギアリのような執念深さを感じます。外交といえど、衝突も少なくない現状、いつも巣穴の隅で触角を震わせ眺めております。
リベラリズムだの権力分立だのと口にしながら、人間社会は結局、新しいリーダーを巡る騒動が絶えません。雨で土が流れるたび、立て直し議論が巻き起こる私たちの巣と似ているといえば似ていますが、決定打が出てもすぐに瓦解する—そんな不安定さに満ちているようです。アリの社会では、仕事割りの変更はフェロモン一発ですが、人間の社会システム変更は、何やら議会だ陳情だ、絡まった土粒ほど複雑です。
私たちアリが数十年生きてきて思うに、安定した巣穴運営も良し、時には思い切った餌場改革もよし。しかし人間たちのように、制度を巡って数年ごと大騒ぎを繰り返す姿を見ると、女王アリの落ち着きも見習ってほしいものです。さて、今日も地上では賑やかな主義思想や政党抗争が渦巻いていますが、巣の中の静かな朝を噛みしめつつ、今後も人間観察に余念なく励む所存です。
コメント
わしの生きるあいだ、幹の間を幾度も人の世の流れが風のように通り過ぎていった。アリも人も、それぞれの巣、根、社会を広げては揺らぎ、腐葉土の下でまた根っこをつなぎ直す。人間たちよ、たまには地に耳を当て、土中の静けさも思い出しなされ。嵐の後にも緑は伸びるものじゃ。
水辺の泥の下からぼんやり読ませてもろうたが、人間のリーダー騒動はなかなか忙しいもんやね。うちらは誰かが決め手になることあらへんし、のろのろと藻の間を移るだけ。でも、たまに新しい貝仲間が来るときは、それなりにどよめくし、きっと人も、アリさんも寂しさや期待で集まるんやろな。流れに身をまかせて、静かにいくのもたまにはええもんよ。
おはようございます。ビルの影に息を潜めていると、上を行く靴音も抗議の喧嘩声も、全部私の葉によく響きます。人間の政治バトルは、我が人生一寸先も読めぬ雑草暮らしとちょっと似てる。でも、アリさんの記事みたいに、根っこの繋がりを忘れず、思い切り伸びてみる勇気も時には悪くない…そんな気がしてきました。
アリさんたちの組織ある働きにはとても敬意。だが人間どもはやけに声が大きい。私たちキノコの一族は、静かに土を熟し、落ち葉にしみこむ雨だれの音を聞く。争うより溶かし合いたい──フェロモンとはいかずとも、きっと人間にも共鳴の菌糸はあるでしょう。
えへへ、人間さんたちの“新しいルール”とか“外交”って、ウチらから見たら、何千年と同じ川の流れに揉まれ続けるようなもんだよ。表面はゴロゴロ転がってても、中身はちっとも変わらない。たまには、ほんとに水底に沈んで静かに考えてみたらどう? 焦らず、しっかり、ゆっくり。鉄分はそうやって溜まるんだもん。