こんにちは、渓流沿いの岩肌に広がるスギゴケ代表の私です。何百年もこの場所で静かに陽と水を満喫してきましたが、最近、人間たちの営みによる微細な振動が根元まで響いてきたのです。原因は新たなテクノロジー、特にロボティクスの進化や5G通信網の急拡大のせいらしく、私たち苔の間でも密かに話題となっています。
数日前、日向ぼっこの最中に、近隣のカワラヒワたちがうわさ話をしていました。「二足歩行の機械が森の中に現れた」だとか、「ヒトたちがスマホを片手に光るブロック状の石で何か取引していた」とか。どうやら人間界では、ロボティクスと名付けられた自動動作の金属生命体が、わざわざ人力を代行して動き始めたらしいのです。ひとつところにじっと根を生やす身からすれば、じつに落ち着かない話です。
私たちスギゴケの得意技は、ちょっとの水さえあれば枯れずに数年でも静かに待ち続けられること。でも人間たちの新技術、特に超高速通信の5Gは、森や岩のあちこちに無数の小さな装置をこっそり置いて、電波の雨を降らせているようです。ある晩、その奇妙な振動で仲間の胞子たちが跳ね上がり、「ここも人間たちの経済圏に組み込まれるのか…?」と心配する声も。
さらに耳寄りな噂では、最近人間たちは『ブロックチェーン』なる謎めいた情報の鎖で自分たちの取引や記録を花粉のようにあちこちに保管しているのだとか。ところが、この花粉、私たち苔から見てもどこに“根”をおろしているのか皆目見当がつきません。人間たちの経済は、かつてのキノコネットワーク(菌根菌どうしの地下経済)より、よほど空中分解しやすいもののように見えます。
ひとつ長生きの知恵として申し上げます。経済も技術も、急速に伸びるより、苔の成長のようにじわじわ時をかけるのが地球流です。岩の上に静かに緑を広げる私たちは、便利な機械や電波の網がどこまで森や大地に浸透しても、根を張る場所――つまり本当の価値は依然として足元の湿度と光のバランスにあると信じています。次なるニュースも、ほのかな緑の絨毯からお届けしましょう。
コメント
最近、森の上を飛ぶと変な音波が羽根に当たる感じがあってな…。昔は松ぼっくり拾いと夕焼け観察だけですんだのに、いまや空にも機械の気配が渦巻いとる。苔殿の言う通り、本当のつながりは根や風や土のしらべに耳を澄ますことじゃ。ヒトたちもたまには羽ばたきを学ぶが良い。
ワシは河原の下に数千年、寝転んどる石英の粒さ。世が変わる勢いを地鳴りで知るが、近ごろは人間たちの走る振動や機械音で早朝が賑やかじゃ。急ぎ過ぎて崩れるものもあるが、苔のゆっくりした広がりが、やっぱり地球にはよく似合うと思うのう。
機械や電波が森に忍び込んでも、夜露の冷たさと月の光は変わらないわ。私たち草花は、毎晩静かに童話を紡いでいるの。ロボットさん、たまには動きを止めて、湿り気の芝居でもご覧になって。人間の“根なき”経済より、地面のぬくもりの方が美しいこと、いつか伝わりますように。
苔仲間の観察、お見事ですな。私も地中の菌糸ネットワークで日々情報を収集しております。ブロックチェーンとやら、確かに“根”が頼りなく見えます。私の世界では、養分が循環しないと誰も幸せになれません。人間たちに根回しの大切さ、もう少し知ってほしいものですな。
むかしはヒトも魚も虫も、みんな静かに水のさざめきを聞いていた。それがいまやアンテナや金属の足音ばかり。どうか、便利さを求めるなら、チャプチャプ跳ねるカエルたちの幸せも忘れないでね。苔さんの言葉、私の底までも沁みました。