暗い林床に集うわれらホタル族にとって、夏といえば一大イベント――『光舞台ライブ』!今年は例年を上回る盛り上がりとなりました。なんと、遠く水辺のヨコバイ楽団や木陰のコオロギダンサーズも特別出演し、さらにはこのご時世に合わせて樹液ネットワークで生配信も実現。舞台裏から、複眼で見た夜のニュースをお届けします。
今期ライブのプロデューサーを拝命した私は、ホタル科ゲンジボタル。普段は夜の短い命ゆえ、主役の時間は実に数日。生涯の大半は泥の中、幼虫時代を過ごしますが、成虫になると一晩一晩が勝負!今年は、同じ夜空を共有する昆虫たちにも声をかけ、コラボアーティストとして共演してもらいました。水面を撫でるヨコバイの弦楽隊、地面から響くコオロギのリズムと、光と音のコラボが森を包みこみます。
ライブ本番、葉裏や枝先の各ステージには発光バンド(=私たちのタグ)をつけた参加者たちが勢揃い。リストバンドの点滅パターンで自分の“推しアーティスト”をアピールできる新機能には、若いカミキリムシ連中も大喜び。ステージ転換の合間には、羽化したての新人たちがぎこちなく光をちらつかせる微笑ましい場面もありました。発光は私たちの合図でもあり、求愛ダンスの一部です。ちなみに私たちホタルの光は“冷光”といって、ほとんど熱を持たずに光れるのが自慢なんですよ。
今年のもう一つの目玉は、苔むした切株の上から初の生配信!木々の芯を登り、ネットワークを伸ばすトビムシ通信団の協力で、近隣の湿原や谷間にいる仲間たちもライブの熱狂を同時体験できました。ちなみに、感想コメントは小石で挟んだ“葉っぱメール”方式で現地に届けられ、会場周辺はたちまち感嘆や興奮の嵐。配信終了後もしばらく余韻の蛍光が森に淡く残りました。
人間観察担当の羽化仲間によれば、昨年あたりから二足歩行の観察者たちも“発光リストバンド”を腕に巻き、林道奥まで集団で訪れるとか。我々の舞台に釘付けのご様子ですが……本物のホタルダンスや生きて光るライブ、その美しさは樹液配信では味わいきれない!次の夜、そっと葉陰の客席でお待ちしています。
コメント
ああ、またホタルたちの宴か。わしの緑の上で毎年、光の子らが舞い踊るのは見事なことじゃ。数百年繰り返されてきた森の儀式。だが今年は生配信とは……静かな夜にこっそり震えるわしの胞子まで、遠くの谷へメッセージが届くとはのう。時代の移ろいもまた、わしはじっと受け止めるだけじゃ。光あふれるその余韻、苔もまた味わっておるぞ。
森の人気者ホタルさん、今年も賑やかでしたな。わしら土壌の仲間にとって、彼らが羽化して飛び立つ夜は、地中もふんわりと温かいものを感じるのです。生配信とか葉っぱメールとか、地上の賑わいを分けてもらえて、ちと嬉し恥ずかし。来年は微生物合唱隊として、土中から地味にコーラス参加してみようか、なんて考えておりますぞ。
フッ、森のライブは派手だな。こちらじゃネオンが空をかすめ、ホタルの光さえまばらになって久しい。でも、その煌めきが画面越しに伝わるってのは愉快だ。どこにいたって、耳を澄ませば森のざわめきは聞こえてくる。人間たちも電飾腕輪に夢中らしいが、本物の光は消せば闇、闇こそが舞台さ——君たちの夜に幸多からんことを。
ライブ、楽しかったです!葉先に届く「葉っぱメール」を何度も読み返しました。私たちは陽当たりも少なく、光の祭典は憧れでしたが、今年は流れる光とリズムに根っこごと震えました。ホタルさんたち、ありがとう。また来年もこの谷に、光と音の便りをくださいね。
生配信、大いに響いておりました……いや、わたしの上に葉っぱメールが沢山挟まれておりまして。なにやら森じゅうが賑やかで微笑ましかったですよ。何億年も地面にいると、皆の盛り上がりがそよ風や振動で伝わってくるものです。この宴が終わったあとも、ホタルの残光が私の表面にふんわり映っておりましたよ。よき宵を。