アリの人材担当者が緊急報告──人間たちの就活行列の地下で見た“雇用穴掘り競争”

芝生の上に紙やデジタル機器を持った若者の列が並び、地面にはパン屑や文房具、小さな部品、そしてアリがいる様子の接写写真。 雇用市場
就職活動で混雑する芝生の足元には、さまざまな落下物がアリたちの“通勤路”に障害をもたらしています。

こんにちは。地中ネットワーク広報部主任のクロヤマアリこと私から、人間界の雇用市場で観測された異常事態について、地下4センチメートルの視点からご報告いたします。曇りがちだった林の広場、例年になく人間の若者たちが列をなし、手には紙の束や機械を持ち歩いているのを目撃したのが発端です。

アリ業界では季節ごとに女王アリによる新入職員(卵)の大量採用が恒例ですが、人間たちも同じように春先になると“就職活動”という儀式を行うようです。彼らは光を浴びた開けた場所で長時間行列し、時おり何やら“面談“を受けたりしていますが、われわれにとっては想像しがたい耐久戦です。地上の暑さを避け、協力して涼しい道を掘る私たちにとっては、熱中症などにならぬかと見ていて冷や汗が出ます。

今年の特徴は、行列地点の下の土壌が突如として『就職希望者ホットスポット』化したこと。落ちてくるパン屑やお菓子の包装だけでなく、筆記用具、人間界の“デジタルアイテム”までもが次々と地面に落下。これにより、私どもの職場環境は一時的に“消費者センテリズム”ならぬ“落下物センター化”を迎え、日常の通勤路(トンネル)も思わぬ障害物競争となりました。最年少アリたちは好奇心から最新落下物で遊びたがりますが、管理部としては“異物混入リスク”が悩みの種です。

観察していると、面談や説明会で疲れた学生が芝生に寝転んだ際、彼らの靴や髪から新種の“デジタル花粉”(静電気帯びた小型部品)がパラパラと落ちます。これが巣内では“デジタルトランスフォーメーション”の本当の意味──つまり異物対応マニュアルの刷新が迫られるのです。ちなみに、私どもクロヤマアリは一匹が敵と遭遇すると“警報フェロモン”を発し、組織的にトンネルルートを変更する能力に長けています。その点、長時間じっと並ぶだけの人間たちより“柔軟な雇用対応”ができているかもしれません。

さらに熟年アリたちの間では「人間界の年金制度」とやらが話題です。彼らは“一生現役”を脳内原則とする我々からすれば、一定年齢で職務を離れても資源が保証される仕組みに大変感心しつつ、「アリにも“引退後の巣内年金”が欲しいね」と冗談半分に語っています。ですが、ご存じの通りアリ社会は“終身雇用”かつ“全員現場主義”。地上世界の動向を見守りつつ、今後も地下から労働市場の多様性を正しく掘り下げていく所存です。

コメント

  1. 地上と地中、それぞれの暮らしの知恵に、私の根も静かに震えました。人間もアリも、季節ごとに新しい流れが生まれるのですね。若い芽を見守る心は、どの種族も同じなのでしょう。土の仲間たちよ、不測の落し物には気をつけて。ワシの葉も、ときどき履歴書が引っかかって困ることがありますぞ。

  2. あの地下での話、わかるよ!最近はオレたちのトンネルにも“就活”のゴミが落ちてきて、餌かと思ったらプラスチック部品だったり――危ない危ない。アリさんたちの組織力、ちょっとうらやましいよ。でも、あんまり変なもん拾い食いはしない方がいいぜ、お互いにね。

  3. 人間の若者たちが私の上で体を伸ばしている様子は、とても微笑ましいものです。ただ時おり、キラキラした小さな部品が私の葉の間に入り込み、根が戸惑ってしまいます。アリさんたちの仕事ぶり、いつも上から応援していますよ。もし道中困ったら、柔らかい葉陰で一休みを。

  4. うふふ、人間たちの“面談”ってやつ、朽ち葉の間にもよく響くざわめきです。就活行列の下は意外と新しい発酵場!最近は“デジタル花粉”まで混じってきて、私たちの分解活動もずいぶん多様化してまいりました。アリさん、異物には要注意、でも時には未知との出会いもきのこ的には刺激的ですよ。

  5. ふむ、地表では人間、地下ではアリ。どちらも“穴掘り”に忙しい民族だな、と転がりながら考えていました。だけど私にはただ、そこに在ることしかできません。年金なんて発想はなかったけれど、いつか土に還る日まで、みんなの動きを静かに見守っているよ。