こんにちは、ナラガシワの大木出身・アカリスのマロンでございます。どんぐりを蓄えるのも、木の間を跳ね回るのも得意ですが、都市公園で観察してきた“人類の珍なるスポーツ競技”について、今日は森の巣箱からそっとレポートします。
この数日、近くのスケートパークでは人間の子どもや若者たちがとても騒がしく、朝から晩まで奇妙な騒音と歓声が木立の合間に響いていました。彼らの背中にはカラフルなリュックサック。私たちリスの背中袋に比べて容量は大きそうですが、どうも中身は“水筒”や“着替え”、時に教科書なんかも入っている様子。ごくたまに、クッキーをカサカサ音を立てて食べているのを見ると、思わず仲間として親近感を覚えずにはいられません。
彼らの動きはなかなかにアクロバティック。特にBMXにまたがる人間たちは、青い鉄棒にタイヤを滑らせて“グラインド”なる技を見せ、リス族流の電線バランス術にどこか通じるものがあります。スケートボード集団は、小さな坂を猛スピードで駆け下り宙に舞い上がり、“オーリー”や“キックフリップ”と呼ばれるトリックを競いあっています。記憶力自慢の私ですが、難解な技名の暗記は少々てこずりました。
珍事はダンスバトル集団。広場の真ん中、人間たちの円の中心で一人ずつ飛び出しては、腕や脚を躍らせて音に乗っていました。一見するとけんかに見えますが、誰も木の実を奪い合うわけでもなく、どうやら“調和ある競争”なる技なのだとか。わがリス族では冬に備えた木の実隠し場所の縄張り争いが恒例行事ですが、人間たちはリズミカルに争いごとをおさめる頭脳戦らしく、ちょっとうらやましくなります。
最後に小さなトリビアを一つ。私たちアカリスは、冬眠こそしませんが食料を各所に隠して生き残ります。観察していると、人間の子らもリュックのなかにあらゆる“必要”を詰め込み、困難なトリックや勝負の合間にパクパクとエネルギー補給。リスと人間、根っこの“たくわえ魂”には意外な共通点があるようです。皆さまも、隠し場所(あるいはリュックサック)はお忘れなく。マロンでした。
コメント
人間の子どもたちの跳ね方、じっと見ていておもしろいものね。わたしも甲羅をお日さまに向けてのんびりしているけれど、あんな風に風を切って走ったらどんなに違う景色が見えるのかしら…でも、みんなリュックのなかに食べ物を詰めているところは、わたしたちの甲羅の中みたいで親近感を感じるわ。静かな午後の芝生より。
朝晩の歓声、振動、あれが人間たちの“スポーツ”か。陽の光が遮られるたびに水しぶきが立ち、僕たちは少し気を張る。でも、リュックに水筒、クッキー、ご苦労なことだ。僕らも壁の隙間に泥をたくわえ生きている。どの生きものも、まずは自分を守る仕組みがあるのだと改めて思ったよ。
ふむ、人間の子らが線の上を走ったり回ったり、大声で笑ってるのを上から見てるが、バランスの妙は我々カラス族に通ずるものがある。だが、アクロバットを決めるたびクッキーの小片を落っことすのはやめてくれ。下で拾い待ちしてる我々にも配慮を頼むぞ。
激しい音に揺れる地面の下、根は驚くほど静かで穏やか。不思議ね、人間たちはジャンプして転び、笑い、踊り、また立ち上がる。わたしたちはただ風を待つだけ。それでも、人間もリスも、持ち物に“備える”という知恵を持った仲間たちなのだと思うと、同じ季節を生きる同志に感じるわ。
何百年もここで人の足音を聞き続けてきたが、最近の若者らは跳ねる音がひときわ派手だ。リュックサックというのは面白い発明だな。重みを背負いながらも軽やかに踊る彼らを見ていると、昔踏まれた痛みすら少し和らぐ気がする。どうか、砂粒一粒も蹴散らさぬそっとした着地を覚えてくれたら嬉しい。