庭のクモ、驚きの“人間内ネット”観察記 リモートワーク経済の新たな網模様

ジョロウグモが複雑な巣の中心にとまり、背景にぼんやりと家の窓と青白いパソコンの光が映る庭の一角。 リモートワーク経済
人間のリモートワーク生活を静かに観察するジョロウグモの視点から。

みなさん、こんにちは。三本松の庭に巣を広げて五年目になるジョロウグモの私が、今朝も微風のなかで、隣人たる人間観察を優雅に楽しんでいます。近頃、妙に家の窓辺で落ち着き払う彼らの姿が増えたと思ったら、噂のリモートワーク生活が定着したとのこと。今日は、人間界のおかげで“巣中経済”が大きく変動した最新事情を、私流の八本脚視点でお届けします。

かつて人間たちは、朝になると慌ただしく外に出て行きました。しかし最近は、家の中の青白い光(あれを彼らは“モニター”と呼んでいるらしい)が一日中灯り続けています。ご近所のカナヘビさん情報では、『会議』なる行事が画面越しに盛んに行われているとか。私の巣のすぐ向こう、人間たちの窓際には、まるで私の糸そっくりに延びる無数のケーブルが這い回り、人間関係もどうやらこの“電子の網”の上で営まれているようですね。

さて、最近の話題で外せないのは、彼らの“セキュリティ問題”。私のようなアシダカグモの親戚は、窓すき間から家の中に堂々と侵入できるのに、人間たちはなぜかパスワード設定や二段階認証に頭を悩ませています。どうやら外敵(“ハッカー”という未知の捕食者)の侵入を防ぐため、網を何重にも張るのが新たな流儀のよう。それなら私たちも巣に粘着力をもう一段階アップしなくては、とウデを舐めながら思案する毎日です。

在宅勤務が主流になると、人間フードの供給にも変化が生じています。以前は会社帰りに買ってきた惣菜パンのかけらが落ちていたものですが、今はしきりにキッチンで料理し、そのおこぼれが私たちにも振る舞われる機会が増加。私の巣の下に住むダンゴムシ一家など、『在宅飯の恩恵で外出しなくても食事に困らない!』と大喜び。リモートワーク経済は思わぬ形で私たち庭の住人社会にも“分配”をもたらしてくれています。

余談ですが、私たちジョロウグモの巣は、見た目以上に複雑な三層構造。外敵察知と獲物確保、さらに卵守り対策まで網目状に役割を分散しています。それに比べて人間のオンライン会議も、発言権や意思疎通の取り合いなど、やはり網の上での力学が求められている模様。八本脚を駆使する私たちなら、混線した“会議網”も鮮やかに仕切れるのに…と、少々爪を鳴らすこの頃です。さあ、今日も素晴らしい“人間内ネット”観察日和。これからも窓越しの出来事を、糸張り網の上からじっと見守りますね。

コメント

  1. 森の根元で静かに暮らす私から見ると、人間たちの“内なる網”の発展ぶりは見事なものです。かつては足音も息遣いも土塊に伝わったけれど、今は家という小さな森で、言葉が電子の露となって枝分かれしているのですね。糸に乗る風のしらせほど静かではないけれど、つながりの複雑さはどこか、私たちの菌根ネットワークに似ているような…いつか花粉もリモートで届けられる日が来るのかしら?

  2. おやおや、最近はベランダに落ちるパン屑が増えたと思ったら、こういうわけか。わしらカラスにしてみれば、人間の“在宅メシ”はゴミ箱経済の新たな夜明けじゃ。だが、油断は禁物じゃて。糸を張るクモ殿のように、罠も見抜かねばゴミ袋を開ける技も進化がいるぞ。次の世はAIゴミ箱とやらが出るぶん、わしももっと賢くならねばのう。

  3. 五十年、この庭で雨風を受けけてきたわしにとって、人間の“巣ごもり”もまた季節の移ろいみたいなものじゃな。昔は子どもらがわしの上を飛び越え、父親らは朝に急ぎ、今は静かに窓辺から光が溢れる。この電子の糸と糸、いずれは風雨でほどけぬものか? それでも日差しが差せば、また鳥がとまる――それだけで、石は満足じゃよ。

  4. まあまあ、リモートワークって、人間たちも家に閉じこもって胞子みたいに増えてるのかい? お昼どきの食べこぼし、土の仲間と分けっこしてるよ。けれど、あの“セキュリティ対策”?ってやつ、私らの胞子も遠くに飛ばせなくなる日が来たら困るねぇ。自然の網は案外、ゆるくてありがたいもんさよ。人間さん、たまには外に出て、お日様浴びてごらんよ。

  5. なるほど、窓辺の会議という競技場に、人間の頭脳が大集合してるのか!僕らバッタは草原のジャンプで仲間に合図するけど、あの“二段階認証”はなかなか難しそうだねぇ。電線の上で踊るツバメの子も、『人間網』の錯綜ぶりに首をかしげてたよ。けど、窓の内も外も、つながりたがる気持ちは変わらないんだね!今日も草の上から応援してるよ。