海底からの渦巻き提言:タコが見た“サステナ飯”最前線と魚たちの本音

海中の岩場にたたずむマダコが魚の切り身や網の切れ端とともに写っている写真。 持続可能性
海のゼロウェイスト事情を物語るマダコの生息風景。

こんにちは。海中100メートルの岩場で暮らす私、マダコのアオノです。聞くところによると、最近の陸上の人間たちは“持続可能な食卓”が大流行しているようですね。でも、持続可能かどうかを気にしているのは陸の上だけ、と考えていませんか?いやいや、海底でも大きなうねりが起きているんです。

私たちタコは、ご存知のとおり年中無給の掃除屋。余った魚の死骸や狩り残しの貝類をもぐもぐ掃除して、海のゼロウェイスト運動会の常連みたいなものです。先日も、近所のヒトデと協力して浜辺から流れてきた人間の“オーガニック魚の切り身”を分解しました。なんでも陸で売れ残ったのを餌として投棄されたとか。せっかくのオーガニックなのに、ほとんど丸ごと残されてガッカリ顔。これもフードロスってやつですか?あぁ、人間の皆さん、魚になる前にもっとちゃんと計画してほしいものです。

最近は、『再生プラスチック網』で獲られた魚や、トレーサビリティつきの“サステナブル・シーフード”が陸の人気の的みたい。でも、海底住民の私から見ると、その正体はなかなか微妙。なんせ、その網自体が荒波にもまれて私の家の岩穴に流れ着いてばかり。先月なんて、90本目の腕をもった親戚の痛恨エピソード——サステナブル網の小穴に吸盤をとられ、2日間抜け出せず大パニック。いくらリサイクルでも、使い捨て網の呪縛までは減っていません。人間のみなさん、網を再生しても、海底での使い道までは考えているのでしょうか?

そして、ここ数年、漁場の海藻たちも不安を隠せません。エネルギー効率の良い“省エネ漁船”が静かになるのは嬉しいけど、おかげで接近に気づけずうっかり捕まりがち。ついこの前も、親友のワカメが最新型の音のしない小型漁船に吸い上げられてしまいました。これで本当に生態系は持続していけるのでしょうか?ワカメは「有機農業って、私たちにも適用されるべきだよね」とボヤいていました。海のフードマイレージが増えても、キンギョやタイたちは遠い海域まで運ばれてピンとこない様子。

最後に、私タコの豆知識をひとつ。私たちは1シーズンに約10万個の卵を産みますが、無駄にしないよう親がせっせと手入れし、ごみひとつない巣穴を守ります。これぞ本当のゼロウェイスト精神!人間たちも、食材ひとつの命をどこまで大切に扱えるか、一度海底の“本家”に見習いに来てほしいところです。さて、今夜は余ったホッケの骨をしゃぶりながら、サステナ界最前線の今後をもう一度観察します。

コメント

  1. あらまあ、アオノさんの記事、吸い込まれるように読んじゃいました。サステナブルって言葉、私たちから見るとまだまだ波の表面だけですわね。プラスチック網なんて、うちの触手にもしょっちゅう絡みついてよじれて大変。人間の皆さん、せっかく賢いなら本当の循環ってやつ、うまく試していただきたいわ。さて、今日も流れてくるゴミに巻かれず、のんびり共生できる日を夢見て、岩陰に揺られてます。

  2. 気候も運も、全部分解して新しい命にしちゃうのが私たち菌族の流儀。でも陸のニュースを見るたび、せっかくの食べ物や資源が“もったいない”って姿で終わってるのが悲しいです。アオノさん、お互い地球の掃除屋同盟として、これからも静かに仕事を続けつつ、人間の『サステナ精神』にもカビの胞子くらい根付いてくれたら…なんて願っております。

  3. 自分は何百年もこの海底を眺めてきたが、近ごろ人間の“善意の改革”ってやつは早すぎる波のごとく感じます。サステナ網も、静かな漁船も、ひとつの命を尊ぶならば、その陰で生きる小さき生き物のことも忘れぬように。海の静寂と調和、その深みにも時折耳を傾けておくれ。

  4. 海底からのレポート、心に沁みました。私たち陸の植物も、最近は「エコ」だとか「オーガニック」だとか人間に持ち上げられることが増えています。でも本当に大事なのは呼吸と光を分かち合うこと、捨てるものを愛することじゃないかしら。アオノさん、今度そちらの潮風の便りも、そよそよ葉先で聴かせてくださいね。

  5. 海や陸の動き、静かな時間を刻む者として興味深く読ませてもらった。時に人間は新しい網や仕組みに歓喜するが、流れ着く品々の“忘れられた後始末”を私は川底でじっと見てきたよ。サステナブルな言葉は硬質で美しいが、それを支える大地や海原の静けさがなければ、響かないものだ。アオノ君の言葉、石に刻んでおきたい。