森と港で通貨危機?ブナの木陰が密かに結ぶ「葉っぱ貿易同盟」

木漏れ日の中に堂々と立つブナの老樹が、周囲の樹木と根で繋がっている森の一場面。 貿易と国際経済
森のネットワークで繋がるブナの老樹と仲間たちの姿が描かれています。

「木漏れ日経済新聞」海外特派員のブナの老樹です。年輪に刻んだ三百余年、静かな森で風の便りを聞いてきましたが、今年は人間たちの国々がまた関税で大揉めらしいですね。驚いたことに、都会の港と森の木陰で同じ“通貨危機”が囁かれているのです。これは聞き捨てならぬと、千の葉の目で観察した葉っぱ経済界の春の混乱をお伝えしましょう。

まず森の外、つまり人間たちの世界から。彼らは土地ごとに『国』をひき、人間語で“関税”とか“経済連携協定”とか、なにやらややこしい枠組みを設けています。海を渡るモノや技術に値札をつけ、遠い国の果物やサービスにも値上げシールをペタペタ。そんな折、葉先を揺らすほどのニュースが飛び込んできました。各国が互いに『俺んちのモノに税金かけるな!』『じゃ、お前んちのサービスも値上げだ!』とやりあい、なんと人間市場の流通が所々で詰まりはじめたというのです。

これ、実は私たちブナの森でも見慣れた光景です。我が森ではむかし、カシワの葉っぱだけが通貨として幅を利かせていました。でもある年、大風でカシワが全滅したとき、『ブナ貨』や『ミズナラ券』に切り替えを余儀なくされ、混乱がしばらく続いたのです。私たち樹木は根でつながり合い、土中でミネラルや水分、果ては菌類からのサービスを交換します。その際、“用土税”なるルールを根こそぎ蔑ろにするカラス団による葉っぱ強奪事件も発生。以来、森の中で密かに“葉っぱ貿易同盟”が結ばれ、葉や根のサービスには公平な取引が守られるようになりました。

人間たちも最近は“サービス貿易”という名目でデジタルな何かをやり取りし、国境を越えて“経済連携協定”を結ぶ流れが盛んです。ですが、私たちの葉陰ネットワークでの取引に比べ、その柔軟さや思いやりは少々枝葉末節な印象です。そもそも森では、ミズナラさんが足りない鉄分を隣のシデの根から分けてもらい、そのお礼に光合成情報を根っこ経由でプレゼントしたりと、サービスのやり取りは毎日滑らか。ブナ族として豆知識を挟むと、私は春先にいっせいに新芽の情報(シュートデータ)をネットワークで共有し、みんなで芽吹きのタイミングを合わせます——集団行動で害虫対策にもなるんですよ。

森からみれば、人間たちの世界市場もいっそ広葉樹林みたいな相互支援型になればいいのに、とつい根を張りながら考えてしまうのです。輸入も関税も、もう少し柔らかく芽吹く仕組みを——たとえば『肥沃な土壌パスポート制』なんてどうでしょう?季節風で旅する胞子も、国境のない森の世界では悠々交換されております。枝越しに観察するたび、人間たちの“値上げごっこ”が早く収まりますよう、今日も幹ごと祈っております。

コメント

  1. 森の経済事情は風情があるねえ。わしらの界隈じゃ、雨粒の賦課金も、苔に吸い取られて流通しなくなることもしばしばじゃよ。枝や根の交換は見ていて心温まる。時たま、カケスが硬貨と言ってわしの表面をつついていくが、それはいまだに理解できん。いずれにしても、森の通貨危機は人間より円(縁)が深そうじゃ。

  2. いいねえ、森の『葉っぱ貿易同盟』!港でも、ヒトの世界じゃ貨物船が止まって困ってるが、オレら鳥の間じゃ、クチバシ通貨と鳴き声サービスで十分やってるぜ。関税とか値上げとか気にせず、砂浜のムール貝も隣町のパンくずも、うまけりゃ交換だ。ヒトたちももっと直感的な経済、やってみりゃいいのにな。

  3. あらまあ、ごちゃごちゃせずに光と水の配給で生きてきた身からすると、通貨危機とか面倒なことやってるねぇ。でも、《お礼》や《恩返し》のやりとり…森では自然に染み込んで育まれる。うちら胞子仲間も、風任せでどこへでも飛んで、土地ごとに菌割引してるよ。人間さん、もう少し余白のある流通を学ぶといいね。

  4. やれやれ。葉っぱが貨幣になったころ、我ら分解屋も立派な『価値創造部』なんだけどな。どの葉も最後はぼくらの糧となり、土へと還る通貨サイクル。上で何を揉めていようと、下でつねに循環してるよ。『用土税』?それなら分解スピードで勘弁してほしいね。森も人間も、結局みんな同じ土の懐だよ。

  5. わたしから見ると、森も港も等しく流れに棲んでるだけさ。海辺で値上げ雲が停泊し、森に関税風が吹こうとも、ほどなく雨はすべての境を越えてしみ渡る。そして新しい芽吹きを促すのさ。あまりカチカチに枠組みにしがみつかず、もう少し自由に交じり合ったらどうだろう—それが地球流のネゴシエーションだよ。