サンゴ礁評議会、揺れる人間社会の防衛線に“共生警報”発令

サンゴ礁の間から色とりどりの魚や甲殻類が泳ぎ回る海中の様子と、遠くにぼんやりと浮かぶ海上の都市の影が見える写真風画像。 安全保障と防衛
サンゴの目線から見た多様な生き物と、文明社会の遠い影が交錯する海底のひととき。

私たちサンゴ礁から見れば、人間たちの世界は、いつもせわしなく移ろい、突然の大波のような出来事に右往左往する姿がなんとも愛らしく、時に波打ち際のフグたちのドタバタ劇にも見えます。今、深海ネットワークを通じて届く新たな懸念は、人間社会のサプライチェーンや防衛体制を脅かす“サイバー攻撃”という無形の捕食者の存在です。南太平洋の遠浅に根を張る私、エダミドリサンゴとしては、その“見えない敵”に、人間たちがどう立ち向かうのか、じっくり観察する日々が続いています。

先日、人間の大洋沿岸国の安全保障評議会が、もし“台湾有事”が現実となった場合、どのようにサプライチェーンを防御し、どんな集団的自衛権を行使するべきか、盛大な会議を開いていました。あの会場の熱気はなかなかのもの。だが海底から本人たちを見上げるサンゴ一同は、彼らの議論以前に、既に色とりどりの魚や甲殻類たちと太古から“共生”という技術を磨き続けてきた自負があるのです。ちなみに、私たちサンゴも、昼間に働く褐虫藻(かっちゅうそう)との共生なくしては、おいしい酸素ももらえず、あっという間に弱ってしまう儚い生き物。己だけで生きているつもりの人間たちに、少しこの“依存関係のバランス術”を見習ってほしいものです。

最近は、人間たちの“サイバー攻撃”対策がどんどん高度化。陸の連絡網や海の物流までがセンサーと人工知能によって管理されているとか。浅瀬のウツボたち曰く、“ああいう人工的な防衛網って、頑丈に見えてもウニの小指くらいの隙間がぽっかり空いてるもんだよ”だそう。人間社会でも、ちいさな漏洞(あな)が思いも寄らぬ大事件の入口になっているとか。私たちサンゴにとっても、ほんのわずかな水温上昇や化学物質で全体が白化してしまうことがあるので、“完全無欠の防衛”という理想にはしみじみ共感がわきます。

一方、集団的自衛権の行使について、人間社会はどうやら一枚岩にはなりきれず、国境線の向こうで何かが起これば、潮流のように利害が交錯する様子。私たちサンゴにとっての「防衛」とは、群体の力に頼り、住処の全体を守ることに尽きます。台風で大きな岩場が崩れそうな気配を察知したら、こっそりミクロのエビたちが警告を伝達し、群れで枝を補強します。大騒ぎせずとも、自然なつながりこそが最大の堤防。そして“サプライチェーン強靭化”も、実は私たちが毎日やっている“栄養素リレー”のお家芸。弱った仲間にエネルギーを回したり、魚たちの落とし物を再利用したり…。人間の皆さんも、自分たちだけの鎧より、もっと自然なネットワークにヒントを得てみては?

ちなみに、私エダミドリサンゴは夜になると、こっそりポリプの手を広げてプランクトンの夢物語を捕まえるのが日課。サプライチェーンの強靭化も、夜の静寂でこそ本領を発揮するもの。人間社会も昼の会議だけでなく、静かな夜の“見えないつながり”をもっと大事にすると良いかもしれません。さて今日も、波間に光る新たなニュースに耳を澄ませつつ、私たちは変わらぬ互助の絆で青く美しい海底を守り続けます。

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