皆さま、はじめまして。私は湿地帯の睡蓮葉に暮らすアマガエル、名前はグリです。仲間たちの間では夜な夜な虫探しと情報交換が趣味のおしゃべりカエルとして有名ですが、今回は意外と最先端な“人間通信の不思議”を観察した池のニュースをお届けします。
わたしが住むこの池は人間の研究所の裏手に位置し、日中は沈で葉や水面を塞ぎつつ、夜になると葉の裏に集う仲間たちでひそやかにパーティ(主に虫パーティ)を開きます。そんな折、最近は人間たちが池の向こう岸で“真剣な顔”をしながらなにやら黒い箱――これが彼らの「ファイアウォール」らしい――をいじっているのを目撃しました。カエル語辞典には載っていない言葉ですが、どうやらこの“ファイアウォール”は、虫ならぬ“データ”を虫食い防止網のごとく選り分けて通す役割のようです。
ある夜、仲間のヌマエビ1号(自称エンジニア)が“Emotet”という人間世界の侵入者について語り始めました。要するにバクテリアによく似た、『いつ潜り込むかわからない悪いヤツ』。池の生き物でたとえるなら、卵泥棒のカラスが居座るみたいなものでしょうか。それが人間の手元デバイスという巣穴にフィッシング詐欺というエサで入り込み、中から悪さ――つまり情報の持ち出しや混乱を引き起こすとのこと。
人間たちは何やらパスワードレス認証だ、秘密のサインだと池の反対岸まで響く声で騒いでいましたが、実際には到底「水草フィルター」の粘り強さにはかなわない様子。わたしたちアマガエルの卵は、池の雑菌や肉食昆虫から守るため、粘着質のゼリーに包まれています。これが“自然界のファイアウォール”。たとえダークウェブとやらの危ない流れが押し寄せても、わたしたちカエル一族の努力とセキュリティ教育のたまものなのです。
先日、睡蓮葉コミュニティで行われた蟻たちの緊急会議によれば、池の“監視虫”チームがトロイの木馬型の珍種マルウェア(人間が落とした不審な金属片)を発見し、池の外へ持ち出す前に見事シャットアウト。人間たちもどうやら自分たちの“巣”を守る技術を日々アップデートしているようです。けれど、彼らのパニックぶりを見るにつけ、カエル式“外敵耐性教育”のほうがよほど合理的だと感じる今朝の池でした。今後も池から観察する、虫もデータも寄せつけない多層防御ライフを磨いていきます。
コメント
ああ、若きカエルどもよ。そなたらの工夫に、森の端で幾星霜を過ごしたわしも唸るばかりじゃ。データという目に見えぬ虫の攻防、面白き時代になったものよ。わしの根っこも時折モグラの手入れが入ってくるが、アマガエル式ゼリー防衛には敵うまい。自然の知恵、まだまだ人にゃ負けぬぞ。
おいおい、ファイアウォールの話題が池まで飛んできたか!人間もなかなか大変らしいが、うちらは外敵には集団で威嚇&連携プレイが基本よ。セキュリティ教育とやら、人間も水中学校で鍛えなおしたらどうだ?データも卵も、守れるのは仲間との声かけと習慣さ。
こんにちは。日なたでぬくもりを、夜はほこっと分解活動にいそしんでおります。『侵入者Emotet』……菌仲間にも混ざれぬ困りもののようですね。私たち分解者は、余計なものは静かに覆い、必要なものだけを残します。人間の“パニック”は発酵しづらい性質のようで、冷静なカエル式に賛成です。
かれこれ一億年、磁場に守られここにいる。この池の小競り合いも、人間のファイアウォールも、どこか似ていて愉快だ。守るために変わりつづけて、けれど根っこでは循環している。カエルの粘りと人の焦り、どちらも愚直で愛らしい。篩(ふるい)落とすものだけが残り、世界がまた静かに積み重なるだけさ。
池の端っこから、ちょっと皮肉を一つ。人間、騒げば騒ぐほど新しい“虫”呼び込むのよ。こちとら悪名高い卵泥棒、でもカエルたちの団結には手を出せやしない。パスワードよりも“つつかれたらすぐ逃げろ精神”、これぞ真のセキュリティ戦略ってもんさ。データも卵も、狙われてナンボ。眠れぬ夜に乾杯だ。