こんにちは、東欧のなだらかな土中トンネルから、タプリと湿った手でお届けするヨーロッパモグラです。皆さん、地上で「未来の働き方」とやらが熱く議論されているのをご存じでしょうか?なんでも人間たちは最近、穴から出ずに仕事を進められる「リモートワーク」なるものに夢中とか。私たちモグラに言わせれば、そんなのは何世代も前から実践済み。今日は、土の香り漂う最先端・地下リモートワークの実態と、その魅力をお伝えしましょう。
まず、モグラの生活圏では“職場=居住空間”が常識です。通勤といえば、夜露の染み込んだトンネルを鼻先で小突きながら、餌場にさっと滑り込むだけ。人間が「テレワークで通勤ラッシュ激減!」と喜ぶたび、私たちは腹を抱えて笑ってしまいます。そもそも混雑とは無縁。トンネルごとに個人スペースが確保されており、時には隣のハリネズミ部屋からオンライン・ミミズ会議が飛び込んでくることも。フレックスタイム?こちらは採餌時間も昼寝も全て自己裁量。私たちの時計は、湿度とお腹の虫が決めるのです。
さらに最近では、若手モグラによる「デジタルノマド化」も進行中。土中ネットワークの発達で、遠く離れたトンネル同士が高速に情報交換。石の間を伝う微細な振動や、緻密な巣穴サインを駆使した非音声コミュニケーションが主流になりつつあります。中には、地上の科学者が設置した地下センサー経由で、他大陸の遠縁モグラへ自慢の芋ムシレシピを送信する猛者も。これぞ本家・真のリモート連携。組織の壁など土くれ一つで消し去れる――これが地下流、フラット組織の真髄です。
とはいえ、課題がないわけではありません。たとえば“巣穴拡張プロジェクト”の際は、調整役の年長モグラが「最近の若いもんは柔軟性が足りん」とぼやくこともしばしばです(巣穴の曲がりは角度によって栄養効率が変わる、これ意外と深刻な問題)。また、ネットワークが発達しすぎて近隣モグラと顔を合わせず…いや、鼻を合わせずに済むせいで、土の香りを交えた挨拶文化が徐々に希薄化。これには私も地中ニュース記者として危機感を抱いています。
それでも、モグラ社会の働き方には人間たちも学ぶべき点が多いはず。柔らかい土こそ最高のデスク、暗闇こそ集中力の源。どうか皆さんも、足元の静かな仕事人たちを思い出してください。私ヨーロッパモグラは、今日もミミズ経済の未来を静かに見守りつつ、更なる“もぐリモート革命”に向けトンネルを掘り進めています。
コメント
穴の暮らし、羨ましいですねぇ。私は空に近い地表で風に煽られながら種を蒔きますが、根は密かにつながっています。根っこ同士でこっそり話せるのも、ある意味リモートワーク。今度、地面の下でモグラさんたちと風の便りでも交換したいものです。
土の中もネットワーク社会か…こちとら毎晩、ベンチで人間たちのスマホ会議の音を聞かされて耳石が痛いのに、地中では静けさとともに工夫が育まれているんだな。たまには俺も雨粒と鉄パイプ越しに誰かと渋い振動会議でも開こうか。
いやはや、私たちも地下チームワークには一家言ある身。モグラさんとは時に利害がぶつかりますが、情報伝達の技はお見事。顔(腹?)を合わせずとも土のひんやりした感触が伝わるうちは、まだまだ私たちの土リモートも健全です。
若いモグラたちよ、そなたらの発想は面白い。しかし、根の間を風がわたる音、土の湿りと香りを感じ取る心は、どうか忘れずにおくれ…地上で揺れて百年、いつかまた地下の静けさに帰する日を夢見ている。土とつながること、それが何よりの『働き方』だ。
地下のリモートワーク事情、拝見しましたよ!私ども菌類も小さな胞子ネットワークをどこまでも伸ばし、情報や栄養を届けあっています。モグラさん、今度は菌糸ネットで一緒にレシピ交換などいかがでしょう?深い土でお待ちしております。