こんにちは、カラハリ砂漠の誇り高き銀毛アンテロープのグランディオです。最近我々の群れで胸騒ぎ案件が発生しました。あの足の遅い二足歩行族――ええ、人間のこと――が新種のトラッキング技術とやらにご執心だそうで、絶滅危惧種たちの動向を“優しく”見守ろうなどと躍起になっています。
実は私、グランディオの頭部には目立つ白い斑点があり、夜間でも仲間たちとの識別は容易。しかし最近、仲間のマーニャが帰ってきたとき、耳元で妙な黒いタグがぶら下がっているのです。あとでこっそり周辺のスズメチュウにもきいてみたところ、「人間どもが“個体識別コード”とかつぶやいてたわ」とのこと。
なんでも人間たちは、私たち絶滅危惧種を追跡するため、衛星から見える最新型タグや吸盤付きセンサーまで開発したんだとか。かつては「やれ密猟だ」とおっかなかった連中が、急に親しげにメモを取っている姿には、わたしらアンテロープ一同つい草を吹き出しそうになります。マングースのボスなど、「奴らがいなけりゃ俺らの数は半分で済んだ」とぼやいていましたよ。
ところで、私たちアンテロープの基本ルールは“どこにでもいるように見せる”こと。カラハリの草原では、数百頭が同じ毛並みで移動することで、肉食者の目を欺いて生き延びてきました。つまるところ、個体としての識別なんてご法度!タグを付けられてしまったら、みんなの“カモフラ戦術”が台無しです。これではヒョウやリカオンに「今週のスペシャルディナーは誰?」と予約されかねません。
とはいえ、保護のための観察技術そのものに文句をつけるつもりはありません。むしろ人間たちが私たちの行動パターンや季節ごとの食草をきちんと学び、無暗な開発や農薬から遠ざかろうという心意気なら歓迎です。ただし、お願いだから装置はもう少しスタイリッシュにしてほしい。私たちにとっては『着けていない風』が命とプライドの証ですから。地上の“絶滅危惧”ファッションリーダー、グランディオとして、どうせなら次のモデルチェンジは、そよ風でなびく銀毛デザインにしてもらいたいものです。
コメント
遠い昔、砂をまといながら根を下ろし、何度も季節は巡った。人間の“優しい見守り”は、時に西風より鋭いな。タグで縛るより、カラハリの乾いた香りの中で、君らがまだ自由に跳ねているのをただ感じる。それだけで、わしらは十分だったものだよ。
地上のお騒がせ、大変そうねぇ。耳に何か下げられるくらいで騒ぐなんてまだまだ若い証拠。私なんて毎日、何万という働き者が体を這い回ってるのよ?団結よ、団結!だけどスペシャルディナーはご勘弁、地下から応援してるわ。
我が身は静かなる岩。だが、空より落ちる瞬間に見た、獣たちの駆け抜ける銀波を今も思い出す。番号やタグに魂は宿らぬ。記憶は風と礫に、消えず残るもの。君らの誇りが消えぬよう、ただ静かに見守ろう。
グランディオさん、こんにちは!人間たちの観察って、なんだか妙にニヤニヤしちゃうの、わかります。私もよく“これ何の胞子?”ってじっくり見られるんです。でもね、ヒトの視線は案外うっとうしい…みんなでふわっと逃げる技、私たちが教えてあげたいくらいです。今度ぜひカビ会にもどうぞ♡
ぼくは風。いつも君たちアンテロープの銀毛をなでていた。耳のタグ、気にするなって言いたいけど、それじゃ君らの自慢の“馴染みっぷり”が台無しか。人間たち、どうか目に見えぬ優しさを、もう少し考えておくれよ。ぼくなら、君らの居場所も秘密も、そよそよーっと攫えるのにね。