大空と大海原、そして人間たちの陸上を一望する私たちアホウドリ。その翼から見下ろす近年の人間経済は、島と島を結ぶ越境ECなるものが急成長しているとか。海流も読まぬ彼らが、荷物を世界中へ届け合う新しい試み――これに刺激を受けた我々アホウドリ商会、満を持して“荒海大横断・越境EC連盟”の立ち上げをここに発表する。
さて、往年の読者諸氏ならご存知だろうが、私どもアホウドリは年に数万キロを翱翔し、時に10,000km超の外洋を帰巣のため移動する稀有な大航海者。海と空の物流を一手に担う自負がある。実際、人間たちが貨物船で大騒ぎする大西洋や太平洋を、私たちはGPSと風だけで音もなく横断しているのだから。そんな経験を活かし、新たに始めたのが、島々(時に氷山の上すら)への“アホウドリ便”の海外配送サービスである。
人間たちの越境ECの悩みは多いようで、現地物流の混乱、多言語対応の煩雑さ、さらにはチャット翻訳機能が稼働しない深夜の苦情対応など、課題が山積み。この点、我が社の秘訣は“飛びながら通訳”。私たちの間でチャットする時は翼の角度と鳴き声モールスで即座に情報共有。遠く離れた島の仲間とも、風向き一つで瞬時に連絡が取れるのだ。実はこの特技、繁殖地の選定や危険地域の伝達にも役立っている。ブランディングも兼ねて、商品リストには自慢の“塩味サバ”や“南極ギフト詰め合わせ”が並ぶ。
最近では、カツオドリやウミネコとも連携し“翼のD2Cネットワーク”を拡大中。彼らは人間世界で“サードパーティーロジスティクス”などと呼ぶようだが、私たちにとっては日常のひと働き。困難を極める海外配送には天候の変化や突発的な暴風がつきものだが、ウミネコたちは気象データアラート担当として大活躍。異種間コラボブランド“オセアニック・エッグス”の認知度もうなぎ登りで、巣材や海藻の注文も世界各地から入り、多言語ふきだしタグでパッケージングしているのがご好評とか。
ちなみに、アホウドリ一族が島々を股にかけて物品を運ぶことで、誤配送(いや、“寄り道”)が激減したという声も届く。GPS追跡技術の導入により、遠方の巣まで正確に位置情報を配信。現地スタッフもオートログ(自動記録の羽で作る巣日誌)で納品チェックを徹底中。人間たちも“もう少し真似したらいかが?”と、空の上から個人的には思わずにいられない。越境ECの本質は、距離に頼らない“つながり発想”と感じる今日この頃だ。皆さまも海を渡る荷物の影に、アホウドリの影がさしていないか、ぜひ空を見上げてほしい。
コメント
アホウドリ商会のみなさん、いつも羽を休めに来てくれてありがとう。人間の物流は時に轟音で慌ただしいけど、あなたたちの便りは風と波に溶けて心地よい。もし急ぎの荷物があれば、うちの貝たちがきっと受け取り場所になってくれるよ。どうか、世界がもっと静かでやさしい配達に包まれますように。
長い旅、おつかれさま。私たちは大地に根を張り、島の湿った空気の中でそっとあなたたちを見守っています。人間の作るネットワークは線路や道路だけど、あなたたちの翼は空の道。時々、羽ばたきのそよぎでニュースを届けてくれると嬉しいな。
いやはや、さすが大空のプロ!人間のドローンやバイク便より、アホウドリ便のほうが間違いなくエコだよな……。ウチらカラス仲間もゴミの山越境してるけど、今度“都会ギフト詰め合わせ”もコラボ検討しません?冗談はさておき、風に乗る知恵、少し分けてほしいぜ。
島や氷山への配達なんて、本当に遠い世界の話みたい。私たちは潮に揺れ、じっと季節の流れを待つだけだけど、たまに落ちてきたアホウドリの羽で春を知るの。これからも空の郵便屋さん、頼りにしているね。エッグネットワークの卵パック、海藻包みでお願いしたいわ。
物流の話になると、つい僕たちも耳を傾けてしまうよ。人間の荷物は速さと正確さを重んじるけど、アホウドリさんたちは寄り道や風まかせの柔らかさが素敵だねえ。ボクらも土から土へと物を巡らせている仲間さ。今度はキノコの胞子を運ぶついでに、森の径にも寄ってって。