みなさま、ごきげんよう。私は本州奥地のコナラ林で暮らすシイタケ菌糸、名はありませんが周りからは“しぶ菌”と呼ばれて愛されています。森の静けさを日々支えながら、最近は仲間たちの働き方が変化していることに気づきました。なんと、古い倒木の下で、各種カビ類やコウタケ属と肩を並べつつ“副菌業”にいそしむ様子があちこちで見られるのです。
これまで私たちシイタケ菌糸群は、朽ち木からじっくり栄養を吸収し、菌糸網を広げて本業(主食分解)に励む暮らしが一般的でした。しかし最近では、カラカサタケの胞子たちが新たな副収入を狙い、カビの仲間が発案した「菌ネットワーク講座」の運営補助や、枯葉の分解スピード競争イベントの“審判員”など、クラウドソーシングを活用した菌業兼業が広がっています。
私“しぶ菌”も、新参コウボ菌の自己啓発セミナーにゲスト出演し、“腐朽木分解の極意”を語ることで、菌糸ポートフォリオを拡充しつつ副収入を得ています。ちなみに、わたしたち菌類は一本の菌糸が分岐し、同時に複数本の“仕事先”に手足(いや、菌糸)を伸ばせる特技を持っています。環境変化にも瞬時に順応できるため、人間たちが憧れる“マルチタスク”の伝道師とも言えるのです。
人間社会の観察によりますと、最近ではどうやら副業を解禁する職場が増えたり、仕事の合間にオンライン講座で自己研鑽する習慣が広まりつつあるようです。最初は「そんなに忙しくして疲れぬのだろうか?」と疑問に思ったものですが、光合成をしない分、私たちも外界知見を増やし、菌糸ネットワークを太くする必要があります。こうした副菌業ブームの背景には、森の土壌循環率の低下や気候変動などの外圧も無関係ではないでしょう。
副菌業では、互いの“特技”を持ち寄ったコラボレーションが実に活発です。ミミズ相談役と連携して腐葉土開発プロジェクトに参画したり、ヤスデ流リサイクル・アカデミーのサポート役に加わったりと、まさに“隙間菌糸”の精神が光ります。今夜も朽木の下で開かれるささやかな自己啓発セミナー「わたしの裏庭ポートフォリオ」、参加希望の方はどうぞ菌糸の端をたどってみてください。しぶ菌がお待ちしております。
コメント
はて、昔は倒木分解といえば、野良シイタケたちの腕の見せどころと相場が決まっていたものじゃ。今や菌糸どもも多芸多才とは、世はまさに菌糸ルネッサンス。だが、土壌の命脈は案外、静かな協働にある…と老骨はつぶやいておこうかの。
皆さま夜露に濡れながらも精力的でなによりです。私はただ大地の隙間で静かに光を反射していますが、あの菌糸たちのネットワークは、まるで私の層を抜ける鉱脈のひびのよう。たまには、光の使い道も講座で教えてほしいな。
うらやましいねえ、あんたら。オイラなんざ副食も副業もゴミ漁り一本槍。けど、森の下でマルチな菌糸たちがワイワイやってるって知ると、ちょいと励まされるよ。使えるもの全部使って、したたかに生きていこうぜ。
わっ、自己啓発セミナーの開催、今夜も楽しみだ。しぶ菌さん、こないだの「分解スピードUP術」は役立ったよ!私も枯葉のすき間で、小さなカビ仲間にノウハウを伝える“カビ塾”始めてみたよ。森の底から応援してる!
夜風に乗って菌糸たちの話し声がよく聞こえます。光の届かぬ森の奥、みんなで工夫して生き延びようとする様は、とても美しい。いずれ私が枯れたその日も、あなた方が立派に分解してくれると思うと、安心して花びらを開けます。