地上の芝生の下で、私たちヒミズ科モグラ族は週末ごとにモゾモゾと耳を澄ませている。最近は、人間界のグラウンド近くで耳慣れぬ歓声や、四つ足の足音がドタバタと響くのだ。その正体、なんとパラリンピックを目指す人間の義足アスリートたちと、そのパートナーである盲導犬たちによる、サポートワン選手権の練習会!うっかり地表に顔を出そうものなら、運動靴か犬の肉球か、どちらかに頭をノックされるやもしれず、われら地下暮らしには新たな刺激となっている。
地表と地下をつなぐ“芝根ゾーン”が、実は情報収集の特等席だ。地面1cm下、私は鼻で土の粒をならしながら、盲導犬たちの動きに観察を集中する。サポートスタッフの声、スポーツ義手のきらめき、そして小型カメラを背負ったラブラドール・レトリバーの明るい導き…。ときには、アスリート自身が新しいスポーツ義足の装着方法を披露し合い、盲導犬たちがルール説明役になっている(驚いたことに、彼らは尻尾の振り回し方でOKサインを送っていた)。このようす、地下音波にも明るい波動が伝わってくるから面白い。
スポーツ競技団体の関係者も近くで何やら密談。彼ら人間の熱いまなざしの中で、私の同僚ミミズは『この運動会、芝生再生に最高だわい』とご満悦。走る、跳ねる、転ぶ、その全てが優しく根をふるわせてくれて、土壌にも空気がよく巡るのだ。おかげで最近、私たちの巣穴付近には通気穴がわんさかできている。土を耕す専門家として、この恩恵はモグラ社会でも議論の的だ。
余談ながら、私たちモグラ族の前足は自慢のショベル型。地中を泳ぐのも一種のスポーツと考えている。しかし、地上のアスリートたちの義手や義足も、この“シンプルな道具でいかに機能を拡張するか”という点でシンパシーを感じずにはいられない。噂によれば、最新型スポーツ義手は土をも優しくすくえるそうで、我々の若手からは“人間界モグラ部”創設の夢まで飛び出している。
グラウンドの練習会に参加する盲導犬たちは、競技の合間でも仲間同士で技巧を磨き合い、休憩中にはアスリートの心をなごませる役割も果たしている。パートナーシップの美しさに私たち地下住人は心打たれっぱなしだ。彼ら犬族は、かつて私たちを必死で追いかけてきた狩猟時代の名残もあるが、このスポーツフィールドでは実に繊細で協調的な存在へと進化しているらしい。芝生下から熱きエールを送りつつ、人間社会の包摂の広がりを土の中からも応援している。



コメント
まあまあ、みんなにぎやかで素敵ねえ。私の根っこは、足音ごとにちくっと震えて、若い頃の風を思い出すわ。盲導犬さんたちの優しい足取りには、草っ子も安心して眠れるのよ。どうぞ、たくさん踏みしめていってね。芝生も根っこも、喜んで力を貸すから。
へぇぇ~、グラウンドの下がそんなことで盛り上がっているとは。俺ら屋上組はつい、落ちてきたサンドイッチの具材が気になるけど、義足や盲導犬の連携ってのもヒューマン社会の新しい知恵だな。盲導犬たち、人間を導きながらも群れの芸を忘れないなんて、なかなか粋じゃねえか。今度観察してみるぜ。
芝生の下で感じる、走る振動……僕ら鉱物の家もたまには揺れる。だけど、人も犬も、道具や仲間と新しいリズムを探してる姿って、美しいと思うんだ。そっと大地からエネルギーを送ってるよ。怪我だけは気をつけて!
人間も犬も、進化ってのは面白いもんだね。一緒に遊んで、支え合って、その分芝生の下では僕ら分解屋の出番もちょっと多くなる。でも、柔らかい根っこの湿り気と、土の空気がよく巡るのは喜ばしいこと。スポーツ、おおいに賛成。
陸のアスリートの工夫やパートナーシップ、波間の私たちにも勉強になりますぞ。なに、義足や義手の工夫?触手を使い分ける私としては親近感。環境も共に変化するもの、互いに支えあう姿が見えるたび、陸も海も同じ地球の営みだと感じるのです。