アリ直販革命!?SNSで巣穴名産直送、葉っぱ通貨が巡る新時代

薄暗い地中の巣室で、土の上に女王アリが鎮座し、周囲には小さな荷物を運ぶ働きアリが集まっている様子。 D2Cブランド
ビジネスさながらに賑わうアリの巣内、女王アリと働きアリたちの一コマです。

地下3センチの巣室からごきげんよう。わたし、クロヤマアリ女王。近ごろ地表の二足歩行族(ヒト)がやたらと“D2Cブランド”なるものに夢中らしいと、巣外派遣のワーカーが耳に挟んできました。自分たちで作った品を、真っ直ぐ自分たちの支持者に届ける直販……となれば、かつての“エサ場から直送”を支え続けてきたわたしたちアリ族にとって、聞き捨てならぬ話題です。

巣穴SNS事情ならお手のもの。最近は触角パルス通信ボード「アリッター」で、愛用の葉っぱチップやウズラの卵殻パウダー、美味なアブラムシ生産ラインを巣ごとに自慢し合い、そのまま巣穴間で“イイナ!”を集めたワーカーが商品を直接発送。マーケティングもアリらしく、フェロモンの香り付きリール動画が今巣で大流行中です。“新鮮な殻つきダンゴムシが今だけサブスク!”なんてお得情報が巣壁広告で踊っていますよ。

D2Cの醍醐味、安定リピートのためには、厳しい自然界で信頼こそ財産。だから巣穴カスタマーサポートも万全です。先週は蛹用たんぱくゼリーの品質にクレームが届き、即座に担当ワーカーが土粒クッションをお詫びとして発送しました。もちろん支払いは葉っぱ通貨。巣内で旬の木の葉をまとめて紡いだ専用貨幣で、物々交換では味わえないサッと手元に届く身軽さが人気。蜂蜜露サブスクリプションも始まり、定期便でミツアブラムシを巣ごと独占です。

クラウドファンディングも導入。巣の拡張工事や新女王の発掘遠征には、百匹単位で賛同集めて“夢の新食料庫”計画を始動。五分岐トンネルの建設資金を集めては、感謝として特製チョウチンゴケの香り袋やザトウムシ粉末のお返しギフトも制作します。評判が良い巣は他からの支持も厚く、巣全体のブランディングがトンボ返し。

働きアリ視点で見れば、巣外のヒトの“D2Cビジネス”はまるで我らの餌場ネットワーク拡大作戦。巣ごとに自慢の技術と資源を持ち寄り、協力しつつ競り合う毎日。ただ、人騒がせなヒト社会の物流トラブル(道路工事や天候の急変)にはびくともしない、地中配送網の屈強さがわが巣の魅力!この大地に生まれて二百億匹、今日も女王アリは、新たな巣穴ブランドの成功を夢見ています。

コメント

  1. 葉陰で月光を浴びながら、そっとこの記事を読みました。アリたちの“葉っぱ通貨”とは…私たちシダも、季節ごとに胞子を飛ばしあったりして、密やかな交易があるのですよ。次は胞子サブスクも検討してみては?大地に生きるみなさん、根を張ることも悪くないですよ。

  2. 長き眠りの中、波音を聞きながら思う。アリの商いも世の流れに沿って変わるものだな。D2C?いにしえから石は巣穴の入口で静かに見守るだけ。だが、巣ごとブランディングとは洒落たものよ。年月が磨く信頼と、葉っぱ通貨の重み、忘れないでおくれ。

  3. こりゃ参ったな。ヒトのSNSも巣穴のアリッターも、皆して“イイナ!”ばっかり集めて大騒ぎ。ウチらカラスも、路地裏の食パン直送で一商い狙ってみっかな。ま、物流トラブルじゃアリさんたちに軍配をあげとくよ!地中配送、侮りがたし!

  4. 暖かな潮流にも、時折はこうした巣穴の物語が届くのですね。品質クレームに土粒クッションとは、地上の心遣いに感心します。それに比べれば、私たち海底の“分解サブスク”は控えめなもの。けれど次世代への循環という価値は、誰かに評価されることはなくとも美しい。

  5. はるかな時を生きて、見下ろす地上の営みも日々目まぐるしく。アリたちが巣内で信頼を紡ぎ、葉で貨幣を編む様を微風に聞きました。人びとの世界も、互いを思う心があればこそ、賑やかなのですね。願わくは皆、生き物同士、美しいつながりを忘れずに。