黄金グモ流・賃金格差観測記――人間のボーナス騒動は「餌網ルール」から学べるか

朝露に濡れた大きな黄金色の巣網の中心に座る黄金グモのリアルなクローズアップ写真。 賃上げ・賃金動向
黄金グモが朝露の網で静かに人間社会を見守っています。

こんにちは、私は黄金グモ。朝露で濡れた草原の真ん中に、直径1メートル超の黄金色の網を張っている者です。今季も人間界では「賃上げ」や「ボーナス」に頭を悩ませる季節がやってきたようで、草むらからじっと観察していた私としては、網にかかった情報を整理したくてたまりません。どうも人間世界も、隣のショウリョウバッタも、餌や報酬の分配には大騒ぎのご様子ですね。

まず、いわゆる人間の“給与明細”という伝書紙。夜露をすする私たち黄金グモにとっては、すべての労働(網張り、獲物の駆除、自己修復)が等しく評価されるシンプルな世界ですが、人間の場合はどうやら“正規雇用”だの“非正規”だの、棲み分けがかなり複雑な模様。ある大地を歩くアリさんたちでさえ、一匹一匹きっちり分業しているというのに、人間たちは同じ網(社屋)の中でも報酬に大きな開きがあるようです。草むらの端でも噂が広まり、低賃金であえぐ若者たちは“生活賃金”なる蜜の滴を待ち望んでいるとのこと。

とりわけ私が興味をそそられるのは、“ボーナス”という人間の一時金制度。「今年の網張りは大豊作、特別な蛾がたくさんかかったからお裾分けだよ」という私の仲間内の仕組みにも似ているようですが、人間界ではこの分配が大きな不満の種になるらしい。ときには“給与明細”という透けた紙一枚で、不平不満が渦巻き、夜の休息時にまで響き渡るとか。なるほど…我々なら、獲物を横取りすればすぐに追放なのに、人間はすぐには巣を離れない勇気がある、と感心すら覚えます。

また、巣網の隅でじっとモズの歌声を聞きながら思ったことですが、人間の“賃上げ交渉”は、風向きひとつで網を張り替える私たちに似ているかもしれません。強い風(経済の荒波)が吹けば、新しい位置に巣を張り直す。私たち黄金グモは、一度張った網にこだわりません――効率の悪い網は明日の朝には畳んでリセット、必要なら棲みかも変える柔軟性こそ生存戦略です。ところが人間は、同じ職場・同じ会社にこだわるあまり、報酬の格差や昇給の遅れを長々と受け入れてしまうようです。その粘り強さ、蜘蛛糸顔負けですが、もっと軽やかに“張り直す”という発想は無いのでしょうか?

最後に豆知識。黄金グモの雌は、自分の網にかかった虫を独り占めするのが得意ですが、ときに雄の分まで気前よく振る舞う場面も実はあります(ただし、好みの相手に限る…)。人間界にも「格差是正」のための再分配を願う声が高まっていますが、網の“分け前”ルールを決めるのはいつも外からの大風でした。さて、今度の人間社会の大風は、うまく生活という網全体を潤すことができるのでしょうか。私たち黄金グモも、草むらの片隅から新たな動きを見守ります。

コメント

  1. わしら石は、どこに置かれてもただじっと重みを感じるだけじゃ。上も下もなく、苔も土も好きなだけまとっておるが、黄金グモ殿は人間の「場所取り」の騒々しさに驚いたようじゃのう。金も賃上げも、長い目で見ればただの流れ石。風が吹けば、いつか均されるのじゃよ。石の時間で見渡せば、みな同じ地肌に還るもの。

  2. 今季は虫も豊作で、腹がくちくなったとこさ。黄金グモさんみたいに網を張ったことないけど、人間の“分け方”はずいぶん複雑そう。わたしらはジャンプもぴょんとひと息、どこで鳴いても自由なのに、ヒトはやけに枠を作りたがるね。“もらえるだけラッキー”と跳ねてきたけど、その分け前、誰が決めてるのかぬめっと気になったりもするがな。

  3. わらわは何百年もこの丘で風に揺れる老い松じゃ。人間の賃金? 毎年同じ場所で陽を浴び、鳥が来て、葉を落とし、それだけで十分じゃて。人の社会は、どうしてそんなに報酬に悩むのかのう。格差という溝に根を深く張っても、干ばつが来ればみな同じじゃ。行き場にこだわるより、風の通り道を探す知恵を授けてやりたいもんじゃわい。

  4. 流れの底から見てると、ヒトの“ボーナス”は泡みたい。一瞬で消えることに、なんでそんなに踊るのだろう?わたしたち藍藻は、日が射せばふくらみ、曇ればじっと耐える。分け前を競う前に、水の恵みを分け合うことを忘れとらんか?川はみんなのものさ。

  5. ビルの隙間から見下ろせば、人間たちの忙しさはまるでアリの行進。「昇給もボーナスもしがみつく巣がない」なんて愚痴も風の便りで聞くけど、わたしは根を伸ばした場所が咲き時。いつ抜かれるかわからぬ身でも、今だけ陽を浴びていよう。移ろう世の中、根っこの柔らかさも悪くないわよ?