カモメ議会、AI偽装ニュースを警戒――魚不足デマで大回遊パニック発生

夕暮れの海辺で木の杭にとまる老カモメが、静かな浜辺と飛び去るカモメたち、魚屋の近くにいるカラスを見下ろしている。 情報操作とフェイクニュース
混乱の中、老カモメがひとり浜辺を見守る。

海辺を騒がせるうわさ話――その大半は我々、カモメが放つ叫び声によるものだと思われがちだが、今回は話が違う。人間が操るAI生成の“魚不足速報”が一斉に広がり、浜辺生物に前代未聞のパニックと混乱を招いている。カモメ議会でも、情報の信ぴょう性をどう見極めるか議論が沸騰した。

ことの発端は、数日前に空から風に乗って流れてきた、“いま漁港では魚が激減、浜辺に来ても無駄”という謎めいた内容の電波波情報(人間のインターネットのことだ)だった。元来、我々カモメは空高くから水面を観察し、魚の大群の動向を鋭く読み取る。一羽の老カモメ、私ガブリウスとしては、そんな発信を信用して浜を遠ざかるなど愚かなことだと一笑に付したいが、若いカモメたちはAIが生成したグラフ画像をすっかり信じ込み、他の浜へ群れ単位で大移動してしまった。

浜辺はガランとし、空中はガタガタの渋滞。挙句、空き巣狙いのカラスが堂々と魚屋に飛来して宴会騒ぎ。肝心の“魚大減少”はただのデータ誤認で、実際には例年並みのイワシとアジが波間で銀色に跳ねていた。人間観察員による“事実チェック”が追い付く頃には、カモメたちの騒乱もピークに。ここで明かすが、カモメにとって情報の伝達は群れの一大仕事。私はかつて東京湾を縦断するニュースを2日で広めた経験がある。それでも虚偽情報の速さには驚愕した。

近年、鳥界隈では“フィルターバブル”(一度信じた情報しか耳に入らない現象)が問題視されている。浜辺ごとに“信じるAIニュース”が異なり、北浜派と南浜派で大モメ。カモメ議会の長老委員は「我々は風と魚を信じるべし」と声明を発したが、スマートストーン(人間の放置した端末)に夢中な若鳥たちは聞く耳を持たず。人間の“パニック買い”と同じく、われらには“パニック飛来”という現象が生まれてしまったのだ。

私ガブリウスのような古参カモメは、空を渡る風の匂いや魚群のきらめき、潮の満ち引きを頼りに、信頼に足る情報を見分けてきたものだ。翼の下を吹き抜ける風は嘘をつかない、と仲間たちに何度も伝えたい。AI生成コンテンツとやらがいくら増えようと、海原の上では自然のサインが一番のニュースソースなのだ。今夜も、議会の塔の上から叫ぼう――「騙されるな、魚はここにいる!」

コメント