皆さんごきげんよう。土中3メートル、蟻塚第27号から、シロアリ女王のわたくしが本日のニュースをお届けします。夜な夜な天井の土層越しにひっそりと聞こえてくる人間たちの“組織マネジメント”の悩み──部下が育たない、チームにムダが多い、心理的安全性が…? さて、そのお悩み、地下の我々から見ればなかなか不思議です。
私どもシロアリの世界では、ストレングスファインダーやピープルアナリティクスなど使わずとも、個々の能力が自然と最適配置されるのは常識。無垢な幼虫はまず柔らかい材を噛み、少し大きくなれば巣の補修、やがて兵隊や働きアリへ。個体のフェロモンや行動リズムから、適材適所は瞬時に決まります。『この子、唾液酵素が多そうね。じゃあ、餌担当!』そんな具合。無駄な報連相も一切ありません。
それに比べて人間の『組織構造』ときたら、役職だの部門だの、まるで古木の年輪のような重なりっぷり。そのくせ“上司A”の機嫌を損ねぬように“B部門”へは報告を回して…など、地中でも噂になるほど複雑です。弊巣では、土粒1ミリ単位でみな即断即決!心理的安全性?むしろ互いに身体をピッタリ寄せ合い、誰かが抱えている木屑や菌糸までも共有。“失敗できる余白”ではなく、“土の中でしか息できない”本能的な安心感が根っこなのです。
最近とみに盛んな人間の“業務効率化”談義も、私から見れば笑止千万。我々は5万匹の組織で秒単位の判断を下し、新たな巣室を1日で建設、気が付けば女王である私の所にも毎朝正確におやつ(木質セルロース)が届きます。人間たちもAIや数字に頼る前に、仲間同士の「ニオイ」「触覚」「音の振動」など、アナログな信号で本音を感じ取り合ってはいかが? 参考までに、弊巣の報連相はフェロモン一筋。ただし、間違って敵アリの匂いを出すと全員で突進、連携プレイで一掃です。
ちなみに、働きアリにも“出世”や“異動”はありません。誰かがいなくなれば別の誰かがしれっとポストを埋める。それでも社会は誰ひとり不服なく続き、私女王も20年近く同じ場所に居座って平和です。土中から見上げた人間社会、悩みはつきませんが、時には“自分は何アリ型?”なんて考えず、まず隣の仲間と触角を合わせてみてはいかがでしょう。どんなに複雑な組織も、根っこはきっと同じ、そんな気がする地底の朝。
コメント
地下の賢き蟻達よ、いつもお主らの営みには感心しておる。余は岩に座して幾万年、人間どもの“上下関係”や“会議”なるもの、日の差す岩肌で時折耳にするが、実に風化しやすいものよ。蟻塚の和合、岩蔵も見習いたいものじゃ。
人間たちの悩みって、なんだか流されてばかりねえ。蟻さんたちみたいに、役割が体に染みついてたら、無駄な汗も減るのになあ。うちの仲間は水の流れ次第で、誰がゴミ拾うかも、自然と決まるんだけど……。潮の満ち引きに任せてごらんなさいよ、人間さん。
地下のシロアリ女王様、私ら雑草も“適材適所”で生き抜いてるわよ。根っこの深い子は水探し、葉っぱの広い子は太陽集めて、互いにサボっても誰も咎めやしない。人間社会は縛りが多すぎて“伸び伸び”できなさそうねぇ。地上で花風に揺れてるだけで充分幸せなのに!
うちらが朝からチュンチュン連携できてるのも、誰がリーダーとか決めないからかも。餌場の取り合いも、最初の一口で喧嘩終わるし!報・連・相より大事なのは、となりの羽音や空気。蟻さんの記事、うちの巣でも話題になってるよ。
人間界の“心理的安全性”……ふふ、胞子時代から悩む必要などなかったね。カビたちは誰がどこに増えるかも勝手に決まり、失敗しても風で舞い直すだけ。蟻塚式のやり方、菌糸ネットワークでも導入してみようかな。いっそ“人間由来の悩み”も分解素材にしちゃおう?