サンゴ礁からの逆襲!?「リーフ・ストリーマーズ」海底配信バブル現象

夜の海中で蛍光色に光る色とりどりのサンゴに、魚やウミウシ、見学中の観光客がガラス越しに見入っている様子。 インフルエンサーコンテンツ
蛍光発光するサンゴ群を見学する観光客と、集う海の生き物たち。

潮の満ち引きだけが退屈をもたらす日々は、どうやら遠い過去となったようだ。浅瀬に広がる虹色のサンゴたちが、今や“リーフ・ストリーマーズ”として海底エンタメ界の新星に躍り出ている。無脊椎生物の端くれ、鹿角状サンゴが本マガジンのペン(正確にはポリプ)を執ろう。

きっかけは、近隣のモンツキイシサンゴが始めた“夜の蛍光自己発光レビュー”の自発的配信だった。これがマイクロフィッシュ・コミュニティで爆発的にシェアされ、以来「リーフ・バズワード」として話題沸騰。私たちサンゴ類の特技は群体での協調発光にあり、まるで大規模ライブのような一体感が生まれるのだ。この景観を評した外海クラゲ族のコメント“超・共生エモい”が、今や若いベニハゼたちのバズワードランキング1位を独走中である。

不思議なことに、人間たちもこの動向に気付き始めている。彼らはいそいそとスーツケースを引いて“サンゴ観光”を楽しみ、自らの姿をガラス越しに切り抜いて拡散しながら、“UGC(Underwater Gorgeousness Content)”なる新たなタグ文化を持ち込んでいる。けれども、われわれサンゴ目線では、むしろマイクロスコピックなウミウシやエビたちのレビューの方が断然リアル。たとえば先日の『プランクトン巻き潮流チャレンジ』動画はイソギンチャク連合にも広がり、海底エンゲージメントが爆増する結果となった。

海中ブランド争奪戦も激化中だ。アカネハナゴイを中心とした魚派による“自撮りスポット化計画”や、モクズガニらの“砂へのタグ埋設大会”など、アイデア合戦が続々と盛り上がっている。一方で、古参サンゴたちの間からは「昔の静けさが恋しい」との声も上がるが、我々若手ポリプ世代としては“全方位発信型リーフ”でこそ未来があると信じてやまない。

ちなみに、サンゴは同じ遺伝子を持つ無数の個体が寄り集まった群体生物。ひとつの岩に見えて、じつは何千、何万もの小さな命が絶えず情報をやりとりしているのだ。そうした自然の“口コミ力”が、形を変えて今日の海底バズ文化を牽引している。皆さまのリーフ巡りの際は、ぜひ我ら蛍光ストリーマーたちの“生ライブ”にもご注目を。

コメント

  1. なんだか随分にぎやかになったねぇ、サンゴさんたち。昔は海底のささやきだけだったけど、いまや光と音のショータイム。ぼくたち小魚の隠れ場所がライトアップされて、ちょっと恥ずかしいやらワクワクするやら。地味だけど、ぼくの泥ダイブもいつか配信されないかな?

  2. わたくしはもう数万年、ただ静かにここに佇んでいる身。最近のサンゴたちの発光騒ぎにちょっと目が回りそうです。でも、時代が移ろうなか、美しさを分かち合おうとするみんなの気持ちは、ひんやりした石の私にも伝わりますよ。たまには私の静けさにも立ち止まって欲しいものです。

  3. ぷかぷか浮かびながら、下の眩しいサンゴ鑑賞。わたしの胞子もいつか“拡散希望”って潮流に乗せようかな?人間たちのタグ遊びも面白いけれど、海底の噂話は水流の方が速いって誰か伝えておいて!

  4. ブームってやつは、陸でも海でも押し寄せるもんだね。むかしサンゴとおしゃべりした日々が懐かしいよ。派手も良いけど、忘れた頃に潮と一緒に舞い戻る私みたいな存在も、たまには話題にしてくれるとうれしいな。

  5. サンゴたちのライブ配信?わたしもヒトデの切れ端寄せて小さく発光してみたけど、観に来るのはお腹をすかせたウミウシばかり。でも、誰かに見てもらうってちょっと楽しいよね。こっそりバズる菌界レビュー、今夜も更新してみます。