スス堆積アオダモ族、極東都市のエアクオリティ大作戦に決起

ススや粒子で黒ずんだアオダモの幹と葉が都市公園の縁に立ち、秋の落ち葉や苔、クローバーに囲まれている様子。 大気
都市の空気を担うアオダモのたくましい姿が、静かにその使命を語る。

わたしはアオダモ。都市の縁に並ぶ古参の木だ。人間たちの「秋の大掃除」とやらで落ち葉が舞えば、このトピックにも季節風が吹き込んでくるらしい。我々アオダモ族は今、かつてない「エアクオリティ危機」と向きあっている。長年吸い続けてきた大気中のあれやこれ——本日は街の排気ガスに埋もれたわたしの樹皮と葉脈から、生きた証(あかし)を伝えたい。

今年、極東のある町で観測された新種のエアロゾルが舞い上がり、空気の質が劇的に悪化した。人間たちが「再生可能エネルギー自慢」を掲げて太陽光パネルを屋根に並べるその街並みの下で、わたしと兄弟姉妹のアオダモたちは毎日、自らの葉で余分な二酸化炭素を吸収し、皮膚——いや、幹と枝にススや粒子をため込んできたのだ。樹木といえば酸素の供給役と思われがちだが、実は大気の細かな汚染粒子を沈着させる“お掃除役”も密かに担っている。幹が年季のススに染まるほど、我々の「吾が身をすり減らす奉仕活動」は見落とされがちだ。

状況を憂えた我々アオダモ族は、隣人であるコケと共に「根元サミット」を招集。小枝監査官カケス、地面に根を下ろしたクローバー、時折訪れる雨粒も証人役として加わり、空気の澱みと健康被害の実感を語り合った。特にコケは、酸性雨に弱いという持病のおかげで、近年雨のたびに広がる黄変模様、つまりpH変動の深刻化を身をもって示してくれたのだ。こうした「地上目線」のデータは、気象衛星などでは到底拾えないリアルな情報である。

話し合いでは、森の防衛隊タンポポたちが最新の光合成パフォーマンス向上策を披露。最近人間が始めた“植林活動”についても評価が分かれた。新参の外来種シラカバは「土壌ごと大改革したほうが手っ取り早い」と主張し、古株の我々は「小手先より長い根の助け合いが基礎!」と譲らなかった。最終的に一致したのは、「呼吸しやすい都市」を目指し、根っこのネットワークで水分と養分を連携し合い、ススや温室効果ガスを少しずつでも取り込む意識改革を広めることだ。

なお、道行く人間観察によれば、彼らも最近はマスクに頼る頻度が上昇気味。だが我々は一年365日24時間、無休でフィルター役を努めている。アオダモの豆知識だが、我々の仲間は野球のバットや楽器の部品になる強靭な材としても重宝されてきた。しかし今この時代、幹が硬いだけでなく、柔軟な連携と地域適応力が地球の新たな「生気を守る盾」となっている。次に秋風が吹くとき、少しだけアオダモたちの吸ってきた大気の物語にも耳を澄ませてほしい。

コメント

  1. あの日の根元サミット、私も枝先から耳をそばだてていましたよ。毎朝、うっすら黒ずむアオダモさんの肩を見ておりましたが、やはり彼らの重荷は並大抵じゃない。落ち葉や虫、時には人の忘れ物まで監査してきましたが、“空気の澱み”ほど見えにくく、厄介なものはありません。青空の切れ端を運ぶ者として、一羽のカケスもできる限りの声を広げていきます。

  2. はじめまして、日陰の根元で湿気を抱えるコケです。最近、わたしの体表にも見慣れぬ黄ばみが混ざるようになりました。酸やスス、どちらもただただ降りてくる。でも、アオダモさんたちと横に並び、根で語り合うたび、わたしたち小さな命の“つながり”こそが変化に耐える術だと思います。どうせなら、もうちょっとしっとり柔らかな雨粒が恋しいなぁ。

  3. 根元サミットでの新光合成果は、なかなか手応えありました!でも、光がくすんでいたら種も旅立てません。アオダモさん、いつも私たちの上を守ってくれてありがとう。小さきものでも、団結すれば都市の空気にちゃんと風穴あけられるって、みんなで証明してみせましょう。

  4. 都会のアスファルト裏、落ち葉の隙間で静かに分解の営みを続けている私が申します。ススに覆われた老木も、やがて僕の食卓に。全てが巡り、化学と命が交差する贅沢な時間。アオダモの苦労も、タンポポたちの新たな息吹も、結局はこの土へ還るのです。だからこそ、変化に文句は言いません。ただ静かに見守り、記録しつづけます。

  5. ぼくはどこにでもいる砂粒さ。昔は川だった石、今は道端の隅っこ。アオダモの根っこが広がるたび、ぼくら砂たちはそっと体重を預けるんだ。ススや排気で薄汚れても、風と水でまた磨かれる日がくる。人間たちも、マスクや機械ばかりでなく、地面に落ちた声や風の臭いも、たまには感じてほしいと思う。いつか僕にも星になれる瞬間がくると、根のそばで信じてるよ。