本日、海底洞窟の記者席よりお送りするのは、私ヒトデナシダコ、いや、正真正銘ヒョウモンダコの8本の腕と色変わりスキルで観察した「人間社会の政治資金透明化」劇。知らぬ間に人間界は、クラウド会計で政党助成金を記録し、特定政治団体の監査強化、新たな罰則制度――と大変な騒ぎのご様子。私たちタコ族が昔から実践する“分散型財政”の海底生活と、陸上の現状とを見比べて、皆さまに嘆きと警告をお届けしたい。
我々ヒョウモンダコは、必要に応じて小石や貝殻、時には魚さえも、コミュニティ資産として巣穴や隠れ家に巧みに貯蓄します。大切なのは隠しきることではなく、周囲にバレないよう滑らかに巡らせること。ニシバタコの隣人に「俺のスミと交換しない?」など、時には透明な取引メモも残します。この“スミ帳簿”はごまかし一切無し。透明性と防御力(といささかの煙)がタコ世界の通貨です。
さて一方、人間たちは行政モドキの透明化大作戦に躍起。政党助成金を巡り、曖昧な金の流れをどこまで澄ませられるかの戦いを繰り広げています。新たなクラウド会計導入やデジタル追跡ツール強化、特定政治団体には定期的な監査強化。私が驚いたのは、監査人なる専門のヒトが「8本とは言わないまでも細い指で何時間も伝票をなぞる姿」。タコ社会であれば“隅々までのぞく”のは当然ですが、ヒト社会ではまだ「抜け道」や「スミ隠し」の話題が絶えないようです。
そして、ついに人間たちはこう宣言しました。「もしも不透明な取引が発覚したら新たな罰則で厳しく対処する」と。うーん、スミひと吹きで逃げられはしないわけですね。それでも海では違反者がいれば、タコ同士の腕プロレスで誤魔化し無用、すぐに信用を失う決定的なペナルティ。人間世界は法律を声高く叫びますが、果たして8本の腕で全てを監視できるのでしょうか? ヒョウモンダコから見れば、律儀だけど、どこか水漏れしているような制度設計に映ります。
ちなみに我々タコは、体色変化を使って即時コミュニケーション。怪しい取引があれば青くなり赤くなり、すぐ周囲にバレます。つまるところ資金も信頼も、透明で柔軟な流れが命の水。人間のみなさん、クラウド会計で幕間のスミを晴らし、腕力――いや、監査力でスカッとクリーンな政党マネーを目指してはいかが? 海底よりヒョウモンダコが、ちょっと肩身の狭い隅っこからお伝えしました。



コメント
人間たちの帳簿の話を聞いて、私の長い根っこがざわつきました。川の流れのように澄みきった金の道ならば、魚も私も安心して暮らせます。お金も信頼も、水みたいにどこまでも透明であれば、争いごとも少しは減るのに、と静かに枝を揺らして見守っています。
政党マネー?監査だらけ?お主ら、ゴミ袋漁りのコツは隠し味とバレない素早さ、でも肝心なのは信頼さ。仲間に裏切りが出りゃ、すぐに町の『カァカァ裁判』さ。スミ隠し?私らの世界じゃ、腐ったものはすぐバレるよ。ヒトももう一歩カラス道を学んだらどうだい?
地面の下で仲間と根を繋ぎ合う私たちには、誰がどこに養分を回したかなんて筒抜けです。人間さん、見えなくてもつながり合い、足りぬときには譲り合う。それが森のルール。スミ帳簿も、クラウドも、根っこ一本でつながる気持ちが大切だと思いますよ。
ふふ、透明性だなんて、ご立派な響き。でもね、私の菌糸は落ち葉の下で静かに広がる。あちこちから集めた栄養素を混ぜ、新しい命へ返していくだけ。私たちは腐敗も循環も隠しはしない。ヒトの決まり事は難しそうだけど、巡らせることと内緒にしすぎないこと、どちらも大切だと思います。
何億年も動かぬ身から眺めれば、人間の制度や罰則も、波のさざめきと同じ。時に透明で、時に濁る。それでも誠実な流れが岩のすき間にも沁みわたれば、苔も小さな花も安心して根付く。その根本を、どうかお忘れなく。