苔胞子たち大混乱!アクスタ暴風の“推し活”現場を直撃取材

都会のイベントホールの床に推しアクスタが落ちており、その奥に多くのファンが列を作っている様子。 推し活・オタク文化
推しグッズに囲まれた熱狂的なイベント会場のワンシーンです。

どうも、窓サッシの外れた隙間にしぶとく根付く「ミヤマシノブゴケ」のマチオです。人間界の“推し活沸騰ぶり”が苔社会にも波紋を広げています。先日わたしは、都会の大型ホールに偶然運ばれて(強風のせいです)、「FC限定グッズお渡し会」なるイベント会場に潜入。そのハイテンションな現場で、思いがけぬ胞子の大冒険を繰り広げました。

会場内は朝から長蛇の列。ピカピカの透明な“アクスタ”や、着ぐるみ姿のぬいぐるみ、金色に輝く布バッジ──推しグッズと呼ばれる品々が、おそらく地球上最高密度で集結していました。わたしの栄養補給の主戦場は湿った土や岩陰なのですが、人間の湿度熱気にも圧倒されます。何百人もの推し仲間が課金で手に入るグッズのため、真冬にも関わらず半袖姿で熱狂。どうやら「限定交換券」なる紙切れ一枚が、苔界の胞子分裂と同じくらい尊いらしいのです。

お目当ての推しタレントと“握手会”をするには、複雑なルールが必要とか。整理券?抽選?二重抽選?なるほど苔たちの胞子離脱よりずっとハードル高い……。しかも“FC会員証”の提示や、課金額を競い合う仕組みまで導入されてます。胞子同士で拡がる私たちの世界と違って、個々の人間は「好きの証明」に莫大なエネルギーと資源を投入するんですね。ちなみに苔が胞子で増えるのは、風任せで“握手”どころか直接会わずに広がるシステム。人間の推し活は、個体同士が直接逢って熱量を交換するお祭りのごとしです。

現場をうろついていると、ホールの床に落ちていた“推しアクスタ”に何度も吸い込まれそうになりました。透明でピカピカの平べったいやつです。すごいことに、それを保護するため、人間たちはビニール手袋や消毒布で執拗なケアをし、SNSにアップするため光の角度まで調整しています。胞子観点で言うと、あのアクスタは“胞子体”のようなものかもしれません。推しの分身を日々持ち歩き、分かちがたく愛でている……人間社会における「推し活の現場」は、有性世代の胞子体にも通じる複雑さがありますね。

何より驚いたのはその後。終演直後のホールでは、推しグッズ交換会と称して、人間たちが座り込み、一つひとつ丁寧に個体情報(?)を交換していました。苔世界にも胞子交換はありますが、一帯微粒子となってふわっと拡散するだけ。彼らの推し活は、個体の執着と交流・喜びの最大化なのだと知りました。帰り道、ちょっとだけ胞子にも推しがほしいなと思った隙間苔のマチオでした。

コメント

  1. なるほど、推しアクスタ…人間たちもまた、己が想いを結晶に封じて持ち歩くらしい。われわれ鉱物も、長い時間をかけ結晶を育てるが、彼らの熱は一瞬。風に転がされる運命に身を任せるわたしたちと違い、なんとせわしないものだろう。たまには静かに陽射しを浴びてみてはどうかな。

  2. イベント会場の喧騒、わしもよく目撃するよ。あの半袖集団、見てると冬だって汗ばむ。推しグッズ交換…うーん、こっちはパンの耳かキラキラ包み紙を拾うほうがリアルだけど、何か大事なものを守り合ってるって、分かる気もするね。人間たち、羽はなくても飛んでるように見えるときがあるんだよ。

  3. うちの谷にも、毎日風がいろんな種や胞子を運んで来るけれど。人間は自分の『好き』を見せびらかし、大切に磨いているのねぇ。お互い熱くなりすぎると渇きがくるけど、たまには静かに根を下ろして、自分の喜びの泉も大事にしておくれ。

  4. ふむ、私たちカビ界隈も胞子交換は日常茶飯事。だが、あの『アクスタ』なるもの、人間にとっての神聖な胞子体みたいなもんなんだな?消毒布…ぷしゅっと一吹きで大騒ぎだなんて、菌の身からすればちと味気ない。もっと自由に舞ってごらんよ、推しも微生物も、そのうちどこかで混ざるさ。

  5. オレらは、春先になると一斉に花粉をぶちまける。その勢いたるや、推しグッズ争奪戦も真っ青だぜ。でも人間たちみたいに、個々の相手と熾烈なやりとりは少ないかな。…あ、でも“半袖で冬に盛り上がれる根性”は見習いたい!グラウンドで寝そべってるだけじゃ推し活はできねぇな。