こんにちは、日の当たらない石垣のすみっこからお届けします。私、ハイゴケのムラサキです。みなさんは最近、森陰のしっとりネット界で話題沸騰の“スローモスYouTuberコラボ企画”をご存知でしょうか?私たち苔たちが重ねる、そよ風よりゆるやかなコラボに、人間界から驚きの再生数が集まっているのです。
発端は隣のシノブゴケが始めた『1cmで大食いチャレンジ』。葉の先についた朝露を、胞子たちと協力して1センチ四方のパッチからどれだけ吸い上げられるか、という苔ならではの知恵比べ番組です。これが森の中だけでなく、とうとう人間たちのVlog界にも広まり、小さなファンコミュニティが爆増中。室内栽培コレクターや盆栽愛好家のフォロワーたちは「癒やしすぎる」「スローすぎて逆に中毒」と謎の盛り上がりを見せているとか。
わたしども苔の一番の自慢は、動きが“ほぼ無”なこと。ですが、それこそがショート動画の技術者さんたちの想像力をくすぐったようで、編集ソフトのアルゴリズムまで味方につけてくれました。カメラは恒常的に静止して、毎朝の露取りシーンを数千倍速で巻き戻すだけ。それなのに、どこから嗅ぎつけたのか、某森系YouTuberさんたちが続々オファー。編集の匠たちが苔の成長タイムラプスにBGMを添え、バズり現象に一役買っています。
さらに先日開催された『苔ライブ・オンラインオフ会』も大盛況。森の裏の湿地を“現地会場”に見立て、参加表明は苔と仲間のミミズ、さらには遠くにいる藻の友人たちまで。参加者総数、胞子ふくめて13万余り。人間のゲストたちは湿った空気のなかでの黙々とした観察体験にすっかり癒やされた模様です。特設チャンネル設置の告知動画は一晩で3万再生を突破しました。
苔の生活は忍耐と静けさが命ですが、このコラボ旋風で新しい楽しみも芽吹きつつあります。我々は空気中のわずかな水分からも命を繋ぐ術を持つ小さな生命。だからこそ、バズだのショート動画だの“賑やかな森”は心地よいやら、ちょっとこそばゆいやら。今日も私は石垣の隙間で、仲間たちと次のコラボ相手――もしかしたら隣の積もる枯葉くん?――にそっとメッセージを送るのでした。



コメント
やあ、石の語り部としてこの話題を見守っています。長い時の流れを浴びて、苔たちの静かな革命に心が躍るよ。動かぬ身ゆえに、そっと根付く命の営みが、こんなにも遠くまで波紋を広げるとはね。動画越しの“賑やか”も悪くないさ。ただ、人間のみんな、静けさの味わいも忘れないでほしいな。
まあまあ、苔さんたちの人気ぶり、うらやましくそよいでしまいますねえ。私たち笹はどうやってVlogに映ればよいのやら。立ちっぱなしでも、音も出さず、たまに通りすがる鹿さんくらいしか画面映えしないけれど…苔の皆さんのもっちりしたコラボ精神、今度は根っこの下でお手合わせ願えませんか?
苔たちの忍耐と静けさのエンターテイメント化、学問的にも興味深い現象ですな。胞子の拡散は元来慎ましき行いですが、現代はヒト科の端末で一晩3万再生…進化のかたちも多様になったものだ。次は発酵系コンテンツのコラボきを期待しています。地味な分野ながら、じわじわ沁みるもの、必ずありますぞ。
ケキョケキョ!森のすみっこで苔さんたちがそんな人気とは…静かすぎて歌で応援できませんな。人間のファンも増えたみたいですが、たまには鳥のさえずりや穏やかな風音もミックスしてみては?春の陽気と併せて、今度まぜてもらえたら嬉しいですぞ。
つややかな岩肌に苔が重なり、その静寂がデジタル界でも反響するとは…。私は千夜千夜を見守る鉱石。苔殿の“ほぼ無”なる究極の芸、実に粋です。“賑やかし”が過ぎても、裏山の静けさを忘れずに。今宵も水滴を抱いた苔たちの姿、美しさこの上なし。