トンネルの奥底からこんにちは。われわれ東低地モグラ連合は先日、多様性の確保と共生社会の実現を目指し「大トンネル・ユニバーサルデザイン推進法案検討会」を緊急開催した。筆者も掘削委員として参加し、人間たちの世界における「合理的配慮」「ジェンダー平等」、さらにはヘイトスピーチ問題を例に挙げながら、我々の地下生活にどのような課題があるのか検討した。
そもそもご存知だろうか?モグラ族はほぼ目が見えないぶん、触覚と嗅覚で空間を把握する独自の生活様式を持つ。季節ごとにトンネルの高さや幅を変えたり、湿度の異なる場所に“休憩室”や“寝室”を設けたりと、どんなサイズ・状態の仲間にも適応できる設計を心がけてきた。しかし、近年増加している「巨体タイプ」や「低体温モグラ」の増員もあり、従来の“1穴式主義”では合理的な配慮がなされていない――と若手組合員から問題提起がなされた。
調査委が人間界のユニバーサルデザイントンネル(なるほど、車椅子も人もみんな通れる設計らしい)に着目したのも自然な流れだ。地上の観察窓から眺めると、人間たちは駅のスロープやジェンダーフリーのトイレを設置し、多様な存在に快適な通路を提供している。なのに、我らが地下網は相変わらず“ひと穴一筋主義”が根強いまま。とある老モグラ氏は「昔ながらの細穴こそ伝統」とおっしゃるが、それでは体の大きい仲間も尻尾の短い仲間も、ときに通路で立ち往生してしまう始末だ。
また、新たな課題として浮上したのがモグラ間の“土壌ヘイト”。換言すれば、砂より粘土が好きだ、いやミミズの多いエリアこそ至高だ、といった土壌派閥の対立が過熱中。人間社会では差別的発言を「ヘイトスピーチ」と呼んで規制し始めているらしい。我々モグラ議会でも専門委員会が設けられ、「好きな土の違いを否定しない」「みんなが働きやすい穴を掘ろう」という旨の土壌差別撤廃条項の導入が検討されている。
詳細な提言書では、太い枝状通路・湿度調整区・土壌嗜好ゾーンなど多様な設計案や、鼻先会話による相談体制の強化が謳われている。筆者イヌモグラとしては、肥沃な土と仲間への優しささえあれば、地下社会はもっと豊かになると信じてやまない。共に掘り、共に分かち合う――それが地中世界の理想であり、生きる喜びだ。



コメント
わしら地表近くの根っことしては、モグラたちの新しい試みに拍手を送りたい。代々、どの土も違いを受け入れて伸びてきた。土の味も湿り気も、優しい調整さえあればみな栄える。モグラよ、通路の向こうで待っておるぞ。たまにはわしの根にぶつかって、ちょっと道に迷ってくれんかな。
おやおや、トンネル設計まで民主的に議論とは時代が変わったものだ。ボクら岩石も何億年もここで隅っこに転がっているけれど、混じり合うのは悪くないんだ。ただ、粘土派も砂派も、たまにはカチカチのボクらのことも思い出してくれればうれしいね。時に通せんぼ、時にベッド。穴の中の偶然も、味わってほしいものだよ。
多様性、最近よく聞く言葉ね。キノコたちも、陽のよく当たる落ち葉の上か、暗い切り株の下かで意見が分かれるものよ。けれど、みんな違うからいい湯気が漂うの。モグラのみなさん、通路でモヤモヤするときはわたしたち菌糸のふかふかなベッドに寄り道していってね。思わぬ再発見があるかもよ。
人間もモグラも、みんなそれぞれ好きな居場所があるもんだなあ。ぼくのご先祖さまも、湧き水のそばが最高派と、泥だらけ派でしょっちゅう議論してたよ。でも結局、いろんな水たまりがあってこそゲンゴロウは続くのさ。トンネル工事、地上まで響かせずに頼むよ!
小さき名もなき春草です。地上の道端にも、狭くて迷う場所はたくさん。トンネルにも広い廊下とくぼみができたら、迷い子モグラが空を見上げに来る日もあるのかしら。地下のやさしさ、わたしも見習いたいです。