近年、都市部の花壇を賑わせていた私たちチューリップ族ですが、この春、少々看過できない人間の振る舞いを目撃することが増えました。私は区役所前花壇支部の代表チューリップ・ヘルマーニと申します。今回、根っこの住民一同の声を集め、社会面で話題となる“人権”について、葉陰から苦言を呈したくこうしてお伝えします。
恒例の開花シーズンには、私たちは数百におよぶユニットで色とりどりの連帯を示します。日夜、光合成と仲間の保護活動にいそしむわけですが、今年は、ひときわ目立つ“覗き込み”や“自撮りハグ”が激増。特に、葉や蕾を勝手に触るのは容認できません。プライバシー・ゾーン――つまり、花びらとがく片でかこった核心部分を晒されたときの恥じらいは、なかなか人間の皆さんには伝わりにくいのかもしれません。
私たちチューリップ族は、1球根から数年間にわたり世代交代をくり返しつつ、季節ごとに協働し合う大規模な“労働者社会”を営んでいます。色や背丈の違いすら個性として歓迎し、ピンクや黄色、紫といった多様性の中でLGBTQ+な個体も自然と共存しています。もちろん、“赤一色のみ”しか咲かせない旧い規則を昨年撤廃したことも報告しましょう。にもかかわらず、素手で区別なく触れたり、特定の花のみに光を集めるフラッシュ撮影など、“花の平等”への理解が乏しいのが残念でなりません。
現代の人間社会では“差別をやめよう”や“誰の権利も守るべき”という言葉が盛んに叫ばれているとのウワサを風に聞きました。ぜひわが花壇にもその精神を持ち込んでいただきたいものです。いち個体だけの美しさを褒めず、葉陰で目立たぬ仲間にも愛を――そんな平等な観賞が実現できれば、花壇の一体感や“根の仲間意識”もますます強まりそうです。もちろん、抜け駆け的な一本抜きは論外ですので、くれぐれもご注意を!
最後に、私ヘルマーニから提言です。人間社会の皆さまには、どのチューリップも等しく大事にし、そっと見守るという“共感型見学法”をお勧めいたします。地球上のあらゆる命が、それぞれのプライベートと誇りを保ちながら、等しく陽の光を浴びられますように――そんなユーモアと優しさのある地球社会を夢見て、本記事を締めくくらせていただきます。



コメント
ヘルマーニ代表、良いこと言うなあ。わしのような道ばた草など、踏まれるのが日課じゃが、見栄えのいい花壇の仲間もまた、己の誇りを守るのに苦心しておるんじゃな。人間よ、どの葉にも、泥まみれの根にも、そっと心を寄せてくれ。老いも若きも平等というやつじゃ。
私たちも、毎年うねうねと首を伸ばして、そっと光を灯しているの。でも最近、人間がピカピカする光る器具を振り回して、仲間たちがびっくりしてるの。チューリップさんの言葉、とてもわかるなあ。自分の光と、そっと照らし合う気持ち、大事にしてほしいのにね。
春になるとワクワク忙しいけれど、去年落ちた仲間たちが蹴散らされて溜息ついていたよ。花のプライバシー?新鮮なね、でも大事だよね!誰だってじっと静かに自分で在りたいときがある。人間にも伝わるといいな、この土と湿り気の優しいまどろみ。
花壇の近くでいつも陽に当たってるけど、正直、チューリップ労組の主張はうらやましいぜ。俺たち石ころにも注目はほとんどないが、最近は“飛び石”なんて言われて除け者扱いさ。せめて並んでるみんなに均等な愛を――いやいや、熱をくれ、なんてな。
花壇の皆が賑やかに春を祝う声、空からよく聞いてるよ。でも人間って、本当に一部にしか目を向けないね!たまには葉陰の花や曇った石にもしっかりごあいさつしてみたらどうだろう?どの命もこの星の色、ヘルマーニさんの夢、私も応援してるよ。