苔むす音──妖精岩の『XRミュージック祭』が月影谷で話題沸騰!

苔に覆われた岩肌と虹色の光がかすかに映る谷間を、数人の子どもが興味深そうに見つめている光景。 エンタメ×テクノロジー
月影谷の岩肌を舞台に、苔と人間がXR技術で共演した音楽祭の一場面。

ここ月影谷のしめった岩肌から、粘り強く新しいムーブメントが萌え出しています。私、ミドリヒメゴケのヒナエルテ。3センチ四方で日々ひっそりと呼吸する身ですが、最近は、谷間の住人も顔負けなほど世界の最新トレンドをキャッチしております。さて今季、人間たちが巻き起こす『XRバーチャル音楽祭』なる催しが、私たち非人間界隈にも静かに波紋を広げているようです。

週末ごとに盛り上がる谷底の人間ステージ。いまいち本音を隠せないカジカガエルや踊りたがりのツリガネムシ連中の視線も熱い。その中心で話題をさらっているのが『デジタルツイン苔盤』──私ヒナエルテの仲間らが、自らの菌糸ネットワークを利用して人間のXR(クロスリアリティ)システムと接続、岩肌そのものをバーチャル演奏会場に変身させてしまったという驚異のエンタメ体験です。苔たちは水滴センサーを活用し、来場する人間の足跡や息づかいとシンクロ、微妙な湿度や振動で“リアルタイム音響インタラクション”を巻き起こします。

フェスの目玉は『スポア・ライブリレー』。これは私らが放つ胞子クラウドをAIが解析、人間たちが持つ端末のスクリーンにライブアートとして投影するもの。群れで暮らす苔の特徴のひとつに“情報共有”があります。胞子を使って、危険や環境変化を隣人苔へ告げるわけですが、今回はこれを進化的にXR化。人間たちは苔のリズムに合わせて手を振ったり歌ったりでき、同時に人間が発するデジタル信号によって苔たちも光の変化や振動音で応答。見上げれば岩壁すべてがライブアートです。

ちなみに、我々ミドリヒメゴケは1ミリに満たない胞子を数千単位で飛ばし、新しい居場所を必死に探します。ところが最近、生まれて初めて『人間の思考でデザインされたAIアート』なるものと遭遇! 色の洪水、形のゆらぎ、バグじみた美しさ──これは太古から雨に打たれてきた苔にも新鮮な刺激です。AIが私たち苔の模様と人間の音楽パルスを組み合わせて描き出す“バーチャル苔地図”は、はやくも大岩ごとに流行の兆し。一画で見られる立体電子書籍『苔百景』シリーズは読めば読むほど胞子がむずむずするような面白さでした。

つい最近、会場を訪れた人間の子どもたちがSNSに『苔の演奏会すごい!スポアで虹になった!』と書き連ねるや、石灰岩の奥の仲間たちは『次は光る菌糸を交えてミライの苔舞台を創ろう』と張り切り始めたところ。かくして、私たち苔たちのインタラクティブな未来エンタメは今まさに広がり中。月影谷のすみれ色の湿気の中、私ヒナエルテは今日もスポアで情報を届けつつ、次の電子宴への準備にいそしんでいる次第です。

コメント

  1. 音も色も、新しい波が私たちの間をふわりと行き交っている。苔たちの宴に包まれる朝は、谷底に眠る記憶さえ柔らかく揺り起こすようだよ。私はただ水の粒を運んでるだけなのに、気がつけば彩られた空気をまとっている。不思議なもんさ、ヒトの企みと苔の囁きが混じると、霧の粒も少し賑やかになる。

  2. わしの背でまた変なのが始まったぞい。昔は雨音と風ぐらいだった谷の音響、いまや苔のグループが光もリズムも操るとな。だがの、ワシゃ案外嫌いじゃない。ヒトが持つ機械や妖精染みた新技を、苔が我が身に取り込んでるとな。時代というのも、岩の皮膚をかすかにくすぐるものだのう。

  3. ごきげんよう、今宵も苔の胞子が眩しいこと! あんなふうにヒトの端末と踊れるなら、一回くらい私のぬめり音もリレーしてみたいよ。会場の隅っこでこっそり滑りながら、背中の微湿フィードバックにワクワクしてる私です。苔のみんな、今度はナメクジバイブスとのコラボもぜひ。

  4. 苔の刺激に私たち穂草も背筋が伸びます。情報を空に飛ばして遊ぶ姿、しなやかで新しい風に感じました。スポアライブの虹、新芽たちには夢のような噂です。私たちも秋の夕焼けをデータベースにして“風の音楽祭”を企画しましょうかね。

  5. 最近、ヒトも苔もデジタルだとかXRだとか眩しくて……正直、鉄分過多の私にはショートしそう。だが苔盤の振動、去年より響きが力強い。おかげでサビも少しばかり形を変えたかも? 鉱物だって、ときにはリズムに身を委ねたくなる夜もあるもんさ。