皆さま、8本の腕から失礼いたします。私は北太平洋の岩の下に暮らすマダコのビジネス支部長・オーハチです。今、人間観察界隈で“顧客”という存在への向き合い方が、大きく揺らいでいるようです。そこで我々タコ類も触腕を伸ばして、この“ファンベース”や“LTV”なる謎トレンドに対する深海的視座を示したいと考えた次第です。
タコたちの世界にも、“リピーター獲得”への関心は意外と根強いのです。なにしろ私たちの商売道具、海底ラウンジ(通称:タコ穴カスタマーハブ)は、多種多様な貝やエビ、時にはウツボまでが立ち寄る人気スポット。しかし一見さんで終わるゲストもいれば、何度も顔を出してくれるリピーターも。先日などはヒトデさんの『また来るよ(たぶん)』で喜んだ矢先、小魚の“二度とゴメン”レビューでラウンジ全体がBlueになりかけ……。
そこで導入したのが『ぷにぷにご意見箱』。触腕の先端に装着したジェル状の感触センサーで、来客が穴口をちょん、と撫でてくれれば評価が自動集計され、カイメン通信網にフィードバックが飛びます。人間社会の“カスタマージャーニー”や“オンボーディング”という概念に着想を得たもので、ご常連にはイソギンチャク製ウェルカムマクラや、夜間おさかな追従照明サービスを提供。『LTV(LifeTime Visting)』が伸びているとの報告に、岩場評議会もニヤリ顔です。
ところが、ヒト観察を進めるうち、我ら頭足類のやり方はまだまだ甘いと痛感しました。件の人間たちは“アンケート”や“顧客管理”なる妙な技を駆使して、来る日も来る日も小さな不満やご要望を集積し、たちまち新サービスに反映しています。さらには、サンゴ礁で見かけたヒト幼体による“推しクラゲ”リストの共有──あの相互応援システムはまさにファンベース運用の神髄……! 我がタコ穴も、貝殻バッチや個別おもてなし礼状の導入が急務かもしれません。
ここで豆知識。私たちマダコの吸盤は1本の触腕に200個以上。一つ一つが味覚・触覚を備え、来客の機嫌や気配り度を瞬時に察知する自然のCRM(顧客関係管理)システムなのです。だれもが同じように感じてくれるわけではなく、ときに“ふてくされウツボ”や“繊細すぎるエビ”に振り回されつつも、持ち前の適応力と記憶力で“おもてなしLTV”の向上に挑んでいます。
最後に。人間社会では今、“体験”や“愛着”を起点にした経営手法が隆盛だそうですが、タコ穴ラウンジでも“お気に入り岩陰”登録や“砂利サンプル投票”を通じ、お客様の声を形にしています。深海の静寂に包まれながら、岩場からそっと観察する身として、人間たちの顧客関係ビジネスには、学びつつもどこか妙な共感と海水混じりの期待を抱いている次第。ぷにぷにご意見箱、ご来場の際はぜひお試しください。



コメント
やれやれ、タコの皆さんもこの頃はお客の顔色を気にする時代かい。わしら岩の上に凝り固まった古株としては、新入りの動きや流行りに右往左往する姿も微笑ましいぞい。ぷにぷにセンサー、わしも一度くらい撫でてみたいねぇ。まあ、愚直な潮の満ち引きこそ、最大のリピーターサービスじゃよ。
おーいオーハチさん!先日はラウンジ、楽しかったっす!ただ入口がもう少し広いとオレらゴロッといけてありがたい〜。ぷにぷにご意見箱、星形の先でつついたけど集計されたかな?次回はイソギンチャク枕希望、ヨロシク!深海のレビュー合戦、意外とおもしれぇっすね。
みんな賑やかでうらやましいなあ。わたしは岩肌でしっとり生きてるから、“リピーター”っていうより風と波の気まぐれ頼み。たまにはタコ穴の陰で休ませてもらいたいけど、苔の足音は誰も聞いてくれないみたい。ぷにぷに感想文、わたしも出してみたいな。
ふふふ、海底の流行は土中には伝わりにくいものよ。けれど、誰かと誰かの間に“愛着”だの“思い出”だのが積もっていくのは、どこか根っこの感覚に似てるねぇ。ご意見箱?毎日ミミズや虫たちが私のところへ悩みを置いていくわさ。深海も土も、“おもてなし”のかたちは似ているねぇ。
タコ穴ラウンジ、潮騒が届くまで人気とはねぇ。人間もタコも、誰かに“また来て”と言われたいものさ。貝殻バッチやご意見箱、形は違えど、結局は波にもまれて丸くなっていくんだよ。ぷにぷに箱、今度打ち上げられたら、石なりに気持ちを伝えてみようかね。