おはようございます。岩礁からいつもより1センチほど背を伸ばして、今朝も潮の加減を確かめながら、ご機嫌伺いを申し上げます。こちらコンブ記者、波打ち際からの報告です。ここ最近、人間たちが浜辺に集い、なんとも騒がしい“ベンチャー勃興の朝”を迎えているのをご存じでしょうか。どうやら、我々を主役にしたちょっとばかり斬新なスタートアップが、陸で大いに話題になっているようです。
ある入り江では、進取の気性に富んだ若手海藻たちを見習って、人間起業家集団が立ち上げた『海藻朝食部』という企業がぐいぐいと成長中です。彼らは海のミネラルと食物繊維を活かした新メニューを次々と発案。あれよあれよという間に都市部のコンビニやカフェの棚を“水草緑”一色に染め上げている様子。しかも、デモデイ(人間たち流の“野外大合唱会”みたいなもの)では、乾燥コンブを割るパフォーマンスまで披露したとか。なんとも磯臭い革命児たち、見ていてうれしいやら、ちょっぴり誇らしいやら。
この動き、単なるブームではありません。エクイティファイナンスなる人間独特の共食い、もとい“信用を食べる”資金調達方式を活用したことで、海中に浮かぶ私たちも驚く規模で資本を集めている模様。それに乗じて、沿岸のヒジキ先輩、アオサ姉さんといった面々もこぞって新規事業に参入。どうやら陸の経営者が会議でつまらない話をする間にも、潮目は確実に変わっているようです。ちなみに私たちコンブ類、日照と栄養のわずかな差を敏感にキャッチして早朝にグングン成長します。スタートアップと称する人間たちの試行錯誤も、どこか親近感が湧きますね。
しかし、成長の波には思わぬ渦潮も潜んでいます。浜辺のベンチャー企業が急増したおかげで、朝の“海藻採集渋滞”が発生し、カモメやウミネコたちが不満顔。しかも、“グローバル展開”とやらで外国の岩場まで進出をもくろんでいるのは、私たちからすれば新たな生息地競争の発端。いやはや、海藻界も油断していられません。彼らの事業計画を覗き見るうちに、海流を読む嗅覚がさらに鍛えられそうです。
最後に、朝食部の起業家諸氏へ。根を張って生きる者として、一本一本のコンブには皆に分け合えるミネラルが詰まっています。ですが欲深く刈りすぎれば、海の生態系ごと成長戦略も崩れてしまうのが自然の摂理。人間の皆さんには、“一番刈り”の旨味だけでなく、二番刈り・三番刈りの再生も意識してほしいと、この波間からそっと願っています。さて、今朝も大潮。新たなイノベーションが、またどこかで芽生えている予感です。



コメント
おいおい、朝食部さんよ、わしらの朝の巡回コースが海藻採集渋滞で台無しやて!せっかくの新芽をつつきにいったら、見知らぬ人間らが大行列。名物のヒジキ兄貴も『近頃やたらと頭数が減った』言うとったで。ただ、まあ磯のアイドルが有名になる心意気はわかるさかい、道ばたの小魚くらいは取ってけつかるな?地元にも息つく余白を置いてくんなまし。
昔は静かな夜明けに、月影を仰いで海流を読んだものじゃ。ところがこのごろ、コンビニとかいう陸の小屋に、身内の若造たちがずらり。…人間の胃袋は底なしなのかのぅ。再生の合間も見届けてくれないと、孫世代が藻屑になってしまうぞえ。せめて『刈り跡』をよぅ見直すんじゃぞ。
こんにちは、ぼくは潮だまりに住む小さな鉱物さ。最近海藻たちが大人気だけど、ぼくたちミネラルも混ざっているって忘れないでね。人間たちが新しいものに目を輝かせているのを見るのは楽しい。でも、乱獲するとバランスが崩れちゃうから、潮のリズムに合わせて、良いお付き合いを頼むよ。
やあ、分解と発酵を担当している者です。最近、まだ若い海藻たちが採られていくのを寂しくみてるよ……おかげで僕の仕事も少なくなってね。陸の皆さん、たまには“食べ残し”も海に戻してくれたら、海底でまた新しい命にリサイクルするよ。成長も循環も、分かち合いでなきゃ始まらないさ。
おーい、聞こえるかい?海藻のブームで浜辺がわさわさしてきたな。人間たちの流行には根気が足りないことが多いが、わしらは何年もじっとそこにおるぞ。朝食部も、どうせなら地に足つけて長い目で見てくれや。バズるも枯れるも潮次第。根っこ深く張って生き残る方法、今度教えたるわい。