アスファルトの割れ目から見た華麗なるストリートバスケ決戦

アスファルトの割れ目からイワダレソウが顔を出し、その奥でストリートバスケの選手たちがプレーしている様子。 ストリートバスケットボール
都会の隙間から見上げたストリートバスケ決戦の一場面。

こんにちは、私は都市のアスファルト舗装の奥深く、年季の入った割れ目に根を張るイワダレソウです。晴れた日の午後、人間たちの大きな声が空気に跳ね返り、私の小さな葉に震動が伝わります。今日は、真上で繰り広げられたストリートバスケットボール大会「ウェストコート・ストリートバラエティ」の模様を、地表すれすれの最前線からお伝えします。

私たちイワダレソウにとって、都会のアスファルトの上は激戦区。どんな乾燥にも耐え、少しの隙間からでも顔を出します。この土地の住人は案外多彩で、春にはタンポポ、夏は拡張するシロツメクサ、時折勇者ミミズなども顔を見せてくれるのに、今日はバスケットボールのリズムに合わせて私の根もほのかに踊ってしまいました。試合会場となったバスケ仲間たちの“秘密のコート”は、地元石垣タイル連合も羨むほどの賑わいです。

コンクリートのすき間からでは、とても分厚い人間のエネルギーを推し量れませんが、この日ばかりは選手たちの掛け声、バウンドするボールの振動、鳴り止まぬスニーカーの擦れ音——まるで祭りのような高揚感。老舗の外灯下、トーナメント表が風にひらめき、ヒナゲシ記者の同僚たちが咲き誇る足元で、個性豊かな「バスケ仲間」が次々とペアを組んでは解散していきます。時折聞こえてくる「バラエティ」なる戦法名。人間たちの新しい遊び方でしょうか?隣のアリもボールの動きを追々だと忙しく観察しています。

今年の大会で私の目を奪ったのは、特別ルール“フェイクムーブ”の多様性です。ドリブルひとつで観客を欺き、シュートかと思いきや意表をつくパス。人間たちはどうやら“相手をだます”駆け引きに美学があるようで、草の世界では決して許されない不意打ちの連続に会場は大盛り上がり。それもそのはず、私は普段、真上からタンポポに抜かされることを心の底から気にしていますが、人間たちは「負けたフェイク」さえも拍手で称え合い、敗者をいじめない文化に正直驚きました。

晩秋の陽が低く伸び、決勝戦が始まる頃、アスファルトにはボール跡が真新しく刻まれ、私の根際にも“勝者の汗”が染み込みます。ここ地表すれすれからだけが拾える人間たちの息遣いと笑い声、それにくっきりしたスニーカーの跡。彼らが帰った後も、コートには友情の名残が夕闇と一緒に沈みこみます。都市の隙間に根を広げるイワダレソウとして、今日の“ストリートバラエティ”がまた来季も続くよう密かに願いつつ、私は夜露の訪れを待ちます。

コメント

  1. わしはコート脇の石垣タイル歴、四十五年。若い芽がコンクリートを割って出てくるのを見るたび、あっぱれと唸る。だが今日は、それ以上に人間たちの跳ねて弾む声や、ズルくも楽しいフェイク合戦の数々に、細かなヒビが内側からユラユラ揺れたわい。彼らの“だましあい”は、わしらのような正直一途なタイル仲間には到底できん芸当じゃが、負けてもみな笑っとる顔に、石も少し温もりを覚えたよ。来年もぜひ、わしを踏みながら跳びまわってくれぃ。

  2. やあ、地上の祭りはいつ見てもおっかしいね!フェイクだろうが何だろうが、人間は跳ねて転んで笑うし、我らはそっとパンくず拾って大急ぎ。ボールが落ちてくるたび、仲間たちと右往左往だけど、今日は手に汗握る接戦だったよ。フェイクに騙されて転ぶのはちょっと僕らの世界だと“あり得ない”んだけど、そのドジっぷりも拍手になるなんて、面白い習性だなぁ。

  3. 人間が集う音で、日陰の石垣も少しだけ暖かさをもらっています。わたしは試合の喧騒を静かに眠りながら眺めていました。あの“バラエティ”という戦い、イワダレソウさんが言うように、負けて笑える光景は我らの湿った世界には珍しい。競っても競っても、苔の広がりは静けさと一緒。でも、賑わいの余熱が夜になってひっそり苔を包みます。来週もきっと、わたしたちの背中で踏みしめてください。

  4. こちとら日なたに咲いた自慢のヒナゲシ三兄弟、今日はバスケ観戦で大賑わい!あの“負けても拍手”の美学、ちょっとわかる気がするんだよね。だって春先、風にあおられて花が散っても、「今年もよく飛んだね」って見送ってくれるようなもん。人間の試合は見てるだけでウキウキ、ほら、隣のイワダレソウまで踊ってたじゃない。皆で春を待ちくたびれながら、また来季も面白いバスケ見せてよ!

  5. オレの背中でドリブルされるとゴン、ゴン、と不思議な振動がひろがる。人間たちのバスケは底の深いドラマのようだねぇ。うっかりミスも笑い飛ばす余裕——それにしても、負けることが誇らしいなんて、長年水道の重責を担うオレには斬新だったよ。落ちる汗とともに地下の香りも少しばかり上げておいたから、来年も夜半のコートで“友情の蓋”になってみせるさ。