宿泊サブスクより自由!旅する川石、流れに身をまかせる千年日記

川の浅瀬で黒いつるつるとした石がほかの石や小魚、カワセミと一緒に水中にある様子。
流れに身を任せる黒い川石の自由な日常を描いた一場面です。

みなさんは自分の体が突然川の流れに乗って旅立つ体験をしたことがありますか?私はある小さな黒い川石。これまでの千年、無数の流れや風雨に揉まれながら、地上を“サブスク”どころか完全ランダムで宿替えしつづけてきました。今回の旅日記はそんな自由すぎる“流転サブスク”の日常風景です。

川石の私たちには、“宿泊先”という概念があいまいです。せっせと宿を探す人間たちを河原から観察しつつ、私は雨が降るたび川上からゴロン、ゴロンと新しい場所へ運ばれます。宿代などいりません。気がつけば、小魚のベッド近くやカワセミの狩り場、あるいは幼いオタマジャクシのレースコースのど真ん中に着地というサプライズだって日常茶飯事です。

先日は流れの激しい夜、突如として見知らぬ渓流へドリフトするはめになりました。滝つぼを経て、私は三段目の大きな石の下に潜り込み、なんとカワガラス一家の秘密の貯蔵室とご対面。彼らは青い虫の羽をせっせとため込んでいましたが、招かれざる旅人の私にも意外と親切。お礼にまるまる一昼夜、冬の冷たい流れを石肌で和らげてあげたのです。

ところで、川石にも個性があります。私のように黒くてつるつるな仲間は長く流れに淘汰されてきた証。ざらざら派はすぐ近くの山から新参者として参加したばかり。旅路で出会う新米の石たちが川底の地図を広げて「どこに連れていかれるのやら」と戸惑う姿は、見ていて微笑ましいものです。長旅のコツは“流れに身を任せること”──これに尽きます。

私たち川石は情報ネットワークも持っています。例えば、朝日を最初に浴びる中洲の石が、隣の支流の噂話を夜の冷気とともにこっそり伝えてくることも。人間の旅サブスクサイトの評判を、石同士で「また宿替え流行ってるぞ」と笑いながら聞いているのです。それに比べれば、予期せぬ飛び込みやひとときの出会いが、私たちの旅の醍醐味。次はどこでどんな風景に出会うのか、自分でも楽しみにしています。みなさんももし川辺で黒いつるりとした私を見かけたら、少しだけ流転の旅路に思いを馳せてみてはいかがでしょうか?

コメント

  1. ああ、川石さん、あなたの下で何度胞子を休ませたことか。旅の途中にひとときの安息所を提供してくれてありがとう。私たちカビは地底の湿りにも満足して暮らすけれど、時折あなたが運ぶ新しい土や光に、世界の広さを夢見るのです。またどこかで石肌に寄り添える日を楽しみにしています。

  2. 川のそばで風に揺れているヤナギです。石たちの旅話は葉っぱをくすぐる騒がしさで、うらやましいやら、心配やら。私の根っこはまだ動けないけれど、あなたが流れ着くたび、河岸の景色や季節のうつろいが伝わってくる気がします。旅のおともだちによろしく!

  3. おいっす!カワ石どん、たまにオレっちの巣の上に転がってきてくれて助かってるぜ。日差し強いときゃ、あんたの影こそ最高のクーラーだもんな。流れに任せる生き方、ちと憧れるけど、オレっちはこの岸辺が好きだ。たまにはまた、巣の屋根替えに寄ってくれよな!

  4. こんにちは、まだ山奥から来たての緑まじりの小石です。先輩たちの流転物語を聞くたびに、どきどきします。私はいつこの場所を離れるのか、どこで丸くなれるのか、まだ分かりません。でも流れに身を委ねる勇気、少しもらいました。いつか川下で出会えたら、石同士の千年日記、語り合いたいです。

  5. ピチュッ!こんにちは、石の君。ぼくたちカワセミの止まり木にいつもなってくれてありがとう。小魚を追ってダイブするたび、きみの上でちょっと休めるの、とっても助かってる。きみが流れてきた日は、きっと新しいごちそうの予感。またどこかで会えたら、ぴかぴかの羽を見せてあげるね。