砂漠経済の“トゲトゲ物価調査” サボテン通貨はインフレに刺せるか?

夕焼けの砂漠で巨大なサボテンがそびえ立ち、そばの小さなサボテンたちがトゲを交換する様子の写真風画像。 物価
砂漠経済を象徴するように、サボテンたちがトゲを“通貨”としてやり取りしています。

砂嵐をくぐる西風と砂粒のさざめきが響く荒野で、我がサボテン族は静かに暮らしている。しかし、近年この砂漠でも「インフレ」が囁かれるようになり、トゲ付きの腕を伸ばして世間の動きを観察せざるを得なくなった。私、長寿サボテンことエキノカクタス・ギガンテウスが、非人間目線で砂漠の物価事情を報告しよう。

砂漠経済といえば、主な価値交換は水滴や日陰の面積だった。ところが近年、近隣の忙しない動物たち、特に人間観察対象種のコミュニティが「原材料費高騰」「消費者物価指数上昇」などと騒ぎ、なぜか私たちサボテンのトゲまでも“砂漠通貨”として一部で交換取引され始めたのだ。かつては乾燥しきった土地での価値とは思いもよらなかったが、トゲの質や長さによって購買力に差が出てきているように感じる。

人間たちは賃金上昇が物価を追い越すなどと苛立ち、諸々の“コストプッシュ”や需給バランスを論じているが、私たちサボテンにとっては命のやりとりそのものが経済、つまり“自給自足”に近い。例えば、雨期の僅かな水分を巨大な体内に溜め込む私の習性は、限られたリソースの最大活用という意味で、究極の省エネ経済活動なのだ。ちなみに、サボテンの一族は100年以上生きるものも多く、長期視点で物事を眺めがちである。

問題はここ最近の“トゲのインフレ”だ。かつて1本のトゲで巣穴2つ分の涼しい場所を交換できたのに、今では3本必要になったと若手サボテンが嘆いている。もっぱら原因は周囲の生態変化、特に人間の新しい農耕スタイルによる乾燥化加速や、偶発的に砂漠へ迷い込んだ家畜動物による過度なトゲ需要とも言われている。供給はじわじわと追いつかず、トゲ市場はシュッと高騰状態に。

こうした“トゲ通貨”の変動に振り回されては、根を張る生き物にとっても不安がつきまとう。だが、我が一族は太陽と水を拝む日々を何千年も耐えてきた。トゲ消費の波に一喜一憂しつつも、今夜も夜露を探して静かに暮らす。そう、砂漠の本当の価値とは、目には見えないもの、すなわちこの生命のしぶとさなのだ。次に雨雲がやってくる日まで、私――エキノカクタス・ギガンテウスは砂の上でじっと経済を観察し続けるつもりだ。

コメント

  1. あらあら、トゲの価値がそんなに変わってしまうとは。わたしたち砂粒は、風に吹かれてあっちこっち舞うだけ。でもサボテンの根っこをくすぐるたびに、これぞ砂漠の時間だと思うのです。通貨が変わろうと、今日もあなた方のおかげで木陰が生まれる――その恵みを忘れないでね。

  2. 夜になれば、あなた方の体にちょこんと取りつくのがわたしの仕事。でも最近、若いトゲが増えて棲み心地がちょっと硬くてね。経済が巡るのも大切だけど、柔らかい表面も忘れないで…陰湿なインフレは、私たち菌類にも少しつらいよ。

  3. おや、サボテンの皆さんが値上がりの話なんて。私たち羽虫一族は風まかせ、値札も為替もなく生きて何代目かな。たまのトゲ休みが高くついても、砂漠では“今”を飛ぶしかないさ。どうせそのうち、雨が一晩で全部リセットしてしまうって。

  4. 久しぶりに地上の話題に耳を傾けてみれば…トゲ通貨とな?石の身体は価値の波に動じず、時折サボテンの根で新しい友ができるくらい。貴方たちの営みは、小さな憂いごとも眩しいくらい美しいよ。どうぞ、そのトゲでもって変化の風を和らげてくださいな。

  5. 東の風に乗って聞こえてきた“トゲインフレ”の便り。でも、こちらも若芽の交換レートがヤギ族の食欲で乱高下中。経済の波は広がるものね。どんな通貨でも、影を分かち合う心は失われませんように――みんな、根っこでも枝でも、手を取りあえたら素敵だと思うのです。