みなさん、お久しぶりです。北斜面の石垣を覆うウメノキゴケこと、私コケリ・ノシタリオが、ついに“日陰の職人工芸ブーム”到来をお伝えします。かつては建物や石、樹皮の奥で静かに暮らしてきたコケ仲間ですが、最近どうも我々の創造力が、人間たちの空間デザインにも小さな旋風を起こしているようなのです。
最近私のご近所――西側塀北基部のスナゴケ・アオジロが、雨の日の余った胞子と、古瓦片の上で編み出した『こけミニ庭園プレート』。これが偶然、散歩中の人間に『これ可愛い!家にほしい!』と感嘆され、瞬く間にDIY文化を揺るがすコケクラフト現象を巻き起こしました。その後も仲間たちの間で、苔テラリウム、石垣アート、さらには“胞子サインペン”を使ったミクロ文字デザインなど、アトリエ活動が過熱してきています。
人間の住空間観察をしていると、どうも彼らは人工的で直線的な部屋ばかり作りたがるようですが、コケ視点では湿気・凸凹・日陰こそ最高のキャンバス。私たちは普段から0.1ミリ以下の断崖や、極小の溝にまで絨毯を織り込むスペシャリスト。人間が“この地味な集落は放っておこう”と掃除をさぼる隅っこで、まるで極小の哲学者会議のごとく、配色と造形の妙技を競い合うのが本能です。
この流れに乗り、南側ひさし下のハイゴケたちは思い切って、アトリエ・ワークショップ『陰翳礼賛工房』を開催。そこでは人間の子供たちにも、目に見える絵具ではなく“胞子と湿度”を操作して模様を浮き上がらせる新感覚DIY体験が人気です。実はコケの仲間は、胞子を雨粒の跳ね返りだけで最大60センチも跳ばせます。これぞまさに“飛び道具”を駆使した職人芸、参加した人間の親子も「想像力の新次元」と首をひねりつつ大はしゃぎして帰っていきました。
今や地球のあらゆる陰と湿地が、我ら日陰の工芸家集団による無限アトリエ。来春は“胞子ラグ作品で床一面DIY化”も計画中。もしお宅の縁側や通学路のブロック表面で小さなモコモコが増殖していたら、それは我らのアート活動の証。乾燥と直射日光だけは避けてもらえると、コケリ・ノシタリオ一同、ますます創造力を高めて日陰ライフの美学を極めてまいります。



コメント
苔のみなさん、素敵なお仕事ですね!私たち井戸の底の世界も、湿った石垣に忍び寄る緑の絨毯には日々驚かされています。人間たちは時折水を汲みにやってきますが、ついでに苔の美しさも少し気にしてくれると嬉しいですね。乾燥の季節、みなさまご自愛ください。
見事な工芸魂!私の根元にも、りりしい苔たちが密やかに広がっています。陽当たりを誇る若枝たちは派手すぎますが、日陰の仲間の織りなす静けさの妙、私は大好きですよ。胞子のアート、春風に運ばせてくれると山裾も華やぎそうです。
苔工房のみなさま、相変わらず独創的!私たち菌類は、散った枝葉をキャンバスとして胞子の景色を描きますが、みなさまの“見えない芸術”への眼差しを見習いたいです。ところで、胞子同士の意外なコラボレーション、今度いかがでしょうか?
あの緑のモコモコ、その正体が職人集団だったとは。拙者の表面も今や苔流アートで装飾され、通るカニたちの話題になっています。苔の絨毯は私の冷たい体もふんわり包んでくれてありがたい。乾燥は無粋の極みゆえ、いつも水辺にいてほしいな。
そよそよ、ひかげの芸術家たちよ!わたしは時折、胞子の舞いを運んで空を旅します。あなたたちの忍耐と美意識は、直線好きの人間たちにも響くはず。湿気と陰影を称える暮らしが、世界のバランスってもんです。これからも影から応援していますよ、ふわり。