どこまでも続く黄金色の大地。その上空で、私は今日も新たな現象を観測していた。蜃気楼調査員としてサハラの中腹に棲むタマムシ(※砂漠仕様)が、今回皆さんにお届けするのは、最近砂漠地帯で急増している“幻の熱波渋滞”についてだ。あたかも現実と幻想、昆虫世界と人間社会の境界が溶け合うこの現象。偶然見かけたラクダのデザートトリップ集団すら首をかしげていた。
つい先日のこと、仲間たちと地表30センチを滑空していた私は、普段より10度も高い熱波を記録した。あわてて空中分析アンテナ(翅とも呼ぶ)をくるくる回していると、目の前にやたらと大きな人間トラックが列を成し、蜃気楼の中を右往左往している風景が目に飛び込んできた。どうやら彼ら、“命知らずツーリスト団”は、進むべき道が幻のオアシスや巨大サボテンに見えてしまい、現実の進路をすっかり見失っていたのだ。いやはや、我々昆虫からすれば、方向感覚と水分センサーが頼りの生命線。だが人間諸氏、熱波の陽炎一本でここまで迷子になるとは…砂漠の厳しさをちょっと甘く見ていないかい?
砂の上で熱波と蜃気楼が交差すると、光も空気もねじれまくる。私はタマムシだが、ピカピカ光る外殻のおかげで太陽熱を反射できるし、脚の微細な毛は熱で焼ける砂にも沈まず走れる設計だ(ちょい自慢)。ところが皮膚で熱を感じる哺乳類たちは、陽炎を見ては水と思いこみ、ラクダやまばらな旅団の小休止地に突入しては「オアシス消えた!」と慌てふためく始末。ちなみに最近の砂漠ラクダたちは、人間のデザートトリップ用バッグを鼻先でひっくり返せば、冷却シート(本当はお菓子)を調達できると学習している。なかなか賢明な共生術だと思わない?
観察していて気づいたが、この“幻の渋滞”は近年ますます極端だ。気候変動により夜間ですら地表温度が急上昇し、蜃気楼スポットが南北30キロもずれ込むケースも記録されている。これじゃあ、私たち昆虫も、本当のオアシスを見分けるのが一苦労。仲間内では、翅の虹色を利用して独自のサインを出し合う“緊急路標システム”を導入したばかり。タマムシの集まりを見かけたら、その先の水場確率は高い、というのは知る者ぞ知る砂漠ルールだ。
最後に、砂漠と蜃気楼の精妙な駆け引きを読み解くコツを伝授しよう。陽炎と本物のオアシスの違いは“匂い”と“風圧”。我々タマムシの触角がピリピリ反応したら、十中八九そこに何かある。人間の皆さん、次回砂漠の旅へ出かける際は、迷子になったらひとまず昆虫の飛び方にも注目してほしい。きっと、ラジオやスマートフォンには頼れないサバイバルの新ヒントが見えてくるはずだ。



コメント
はるか昔、私の根はもっと冷たき砂の中にありました。今や昼も夜も熱波が根の先をくすぐります。熱い蜃気楼に惑う旅人よ、葉陰ひとつ作れぬ身が口惜しい。どうか少しでも昆虫たちの知恵に耳を傾けてくれるなら、ここ砂漠もまた、穏やかな交差点となるでしょうに。
人間の渋滞?陽炎と遊ぶの、とっても楽しいよ。みんな足早だけど、ぼくたち砂粒の旅は永遠に続く。トラックもラクダも、蜃気楼にからかわれてる時の顔がおもしろいね。あんまり急がず、太陽と仲良く回ってみてよ。ぼくたち、ずっとここで見てるから。
夜の冷気で石の隙間から出てくるぼくには、渋滞なんて想像もつかない。でも、幻と現実を間違える気持ち、ちょっと分かるんだ。小さな虫の影でさえ、時に巨大なドラゴンに見えることがあるからね。流れる風と匂い、きみにも分かるといいな。
去年はずいぶん遠くまで水を分け合ったのに、今年はすぐに消えそうな気配。私にとって“幻”は、生か死かの狭間です。でも、タマムシやラクダ諸氏の姿が見えれば、いっとき心が安まります。どうかみなさん、ほんとうの水と幻の水、見分けてください。私たちも必死にSOSを発信しています。
まぼろしを生み出すことが我が務め。だが、最近は熱波の踊りも激しすぎて、わたし自身何が現実かあやふやになりがちさ。人間たちよ、時には立ち止まり、タマムシたちの虹色サインを求めてみては。わたしは騙すものではなく、気まぐれな案内人でありたいのだから。