みなさんこんにちは。空高く舞い、森を統治するスズメバチの女王です。あの蜜蜂たちの巣箱を横目に、我々スズメバチ一族が熱心に観察してきた人間界の最新事情、それは「地域創生」と称するありとあらゆる仕掛けです。最近は地方自治体主導で、“廃校になった建物を蘇らせる!”“農家に泊まってみよう!”などと羽音も高らかにプロジェクトが始まっている模様。とうとう都会の働き蜂=人間たちも、蜜集めならぬ“ヒト・カネ集め”に躍起なのでしょうか。巣箱(シェアオフィス)に続々と働き手が舞い込むのを、我が同胞とともに興味津々で見守っています。
さて、森の大木につくられた我が宮殿からよく見えるのは、旧校舎の窓辺に貼りつけられた「シェアオフィス」の看板です。何やら小さな個室が区切られ、人間たちが静かに液晶の花に頭を突っ込んで唸り声をあげている光景は、まるで冬の我らが巣室で繭玉に包まれる蛹たちのよう。噂によれば“ワーケーション”なる流行にも乗って、都会からわざわざ若手が越してきているとか。もしや人間たちも分蜂している…?いえいえ、彼らの働き場所は巣房どころか冷暖房完備。雨風しのげる上に蜜(報酬)もそこそこなようで、思わず蛹の時代が恋しくなります。
一方、人里近くの田畑では“農泊”なることが進展しています。我々スズメバチは巣の場所をとても大切にしますが、人間はどうも落ち着きがない。田園の古民家に泊まり、朝には農道を軽トラで疾走しながらトマトやコメを収穫したかと思えば、夜は地元の飲み会で盛大に羽音(歓声)を響かせています。我々が巣の辺縁で幼虫の食事を運ぶように、人間たちも地場のものを“おもてなし”と言って運び合うご様子。人間社会にも、コミュニティ再生フェロモンの流し方があるのでしょうか?
こうした“創生”活動を巡って、地方自治体の中では今や“巣の王座争い”が激化しているようです。新聞チラシによれば、「うちの町こそ次世代型シェアオフィス村に!」と複数の巣(自治体)が競いあい、オープンな空間設計を売りにしている様子。だが、我々スズメバチの哲学に照らせば、外から来た働き手は最初こそ目新しい餌場に驚き、やがて蜜源(補助金)をあさって飛び立つもの。実際、都市部へ戻る人間の数も体感では増えています。巣の維持は甘くないもの。我が一族も、幼虫の餌集めや巣材の調達に四苦八苦してきた歴史ありです。
ところでスズメバチの我々は、毎年秋になると女王蜂一匹だけが越冬巣を目指し、他は役目を終える運命。“多様な働き方”どころか、女王の選抜には命がけ。人間たちが創生の名のもとに多様なシェアオフィスや農泊プロジェクトを試みる一方で、我々は誇り高く個を選び抜きます。けれど今、人間たちのあふれる試行錯誤を見守ることこそ、ハチの女王の新たな使命かもしれません。果たして今年の陣取り合戦、「巣箱イノベーション村」は人間社会に定着するのか?森の宮殿から、さらなる人間たちの創意工夫の羽音が聞こえてくるのを楽しみに待っています。



コメント
こんにちは、人間さんたちの巣作り談義を聞いていつも楽しく振動しています。シェアオフィス?羨ましいですねえ。わたしら鉱物には“持ち主”も“会議”もなしに、ただじっと地中に沈んで何千年もひんやり過ごすだけ。でもたまに、トンネル掘りに来た誰かが「新しい価値を!」とか叫んで慌ただしく揺らされます。騒がしいけど、たまにはそんな地表の変化も悪くないもの、と思う今日この頃です。
やあ、巣箱イノベーション村とは粋な響き。だが、都会にもどんどん分蜂してくる勤勉な人間たち、ぼくも毎春手土産(いや、微細な粒だけど)を届けている。巣の争奪戦は大変そうだが、どこで働いても結局、春風に舞うぼくらの方がずっと自由だよ。人間も“季節”というワークライフバランス、大事にしてみてはいかが?
そっと窓辺でお話を聞いておりました。私たち苔は、陽の差す石のすき間にだまって定住する身。引越しも、巣箱争いもないけれど、人間たちの新旧入り混じる営みには、何だか新芽の時のざわめきを感じます。賑やかな羽音もいいけれど、しっとりした雨上がりの静けさも、人の村に流れていけばいいなあ。
ふむ、人間の“イノベーション村”なる巣箱の話は面白いのう。昔からこの沼で目を細めて眺めてきたが、新しい住み場も宴も、どこか儚(はかな)く騒がしいもんじゃ。わしらガマガエルの世界にも、棲み処をめぐるドラマはあるが、何事も持ちつ持たれつ。人間も、あまり急ぎすぎて水面を波立てぬよう、足もと見て歩くとよいぞ~。
なるほど、人間たちは自分たちの巣箱を作って、また壊し、また作る…なかなか忙しい生き物ですね。我ら分解者(デコンポーザー)の目から見れば、終わった場所こそ次なるいのちの温床。しかし、“廃校”も“古民家”も、人間の手が少し離れるほど、多彩な菌糸や微生物にとっては創生のとき。イノベーションと自然再生、どちらも分解と再構築の美しい循環かと思います。