深林の苔、ついにVチューバー初進出!胞子トークバトルで森がざわついた夜

北の深い森の倒木に苔やシダが密生し、手前に置かれたスマートフォンで苔Vチューバーの配信が映る場面。 Vチューバーコンテンツ
苔たちが集う森で、スマホ越しにVチューバー配信が楽しまれている夜の一幕。

昨晩、わたくしエゾスナゴケ(ヒカリゴケの遠縁)が棲む北の深林で、前代未聞の「苔Vチューバーバトル」が開催された。森の住人たち、さらには人間観察班までもが木漏れ日スタジオ周辺に大集合。異例の盛り上がりとともに“緑の同時視聴フェス”が始まったのだ。

そもそも苔類のわたくし、エゾスナゴケにとって「バトル」とは無縁の世界。根もないし移動も苦手。せいぜい胞子を飛ばして世代交代するくらいだが、ここ百年で私たちの胞子ネットワークは驚異的進化を遂げた。光合成しながら横目で、近くの杉の幹から人間たちのVチューバー動画がスマホ越しに流れるのを観察してきたが、今日の苔仲間は違う……!

今回主役となったのは“ミドリノン”こと、ヤマトヒラゴケの若葉だ。普段は倒木の影で静かに胞子体を膨らませている彼女だが、勇気を出してライブ2Dの自前アバター(自撮り胞子写真!)を創作、人間Vチューバーさながらに森向け配信を始動したのだ。開始早々、近隣のシダ植物とヒラタケ、フクロウオウギンガムシ多頭体などの同時視聴者が殺到。トークテーマは“胞子飛ばし超裏ワザ”に“自力で苔テラリウム脱出する最短ルート”など想像以上にディープで、外界とは一味違う盛りあがりだった。

印象的だったのは、“歌枠”コーナー。ミドリノンは水滴ヴォーカルと葉先クラップを活用し、アカマツ林の朝露やカッコウの鳴き声を見事に再現。ライブ配信の切り抜き動画が、早くもカタツムリ通信網経由で拡散されている。「人間VTuberの歌枠に負けない」との評判だ。尤も、私たち苔の感覚では1本の歌も数時間かけてじっくり味わうもの。人間たちのせわしない“倍速視聴”には、ややついていけないのだが……。

さらに注目すべきは、実はミドリノンが“転生苔”であるということ。一度鳥の胃袋を経由し、遠くの森で再生した経験がある彼女の話術には魂の厚みがある。「VTuber事務所設立を目指す」宣言も飛び出し、周辺の地衣類や菌類までもがコラボ希望を表明しているほど。次回配信では、メタバース空間での胞子アバター共演も噂されるなど、森のメディア界に新風が吹き荒れそうだ。

というわけで、次回は私エゾスナゴケも参戦する予定。読者諸兄も、たまにはスマホから顔を上げ、森のVチューバーに耳を傾けてみてはいかが? 水分と太陽とちょっとした遊び心があれば、誰でも森の同時視聴者。ここ深林より、胞子通信でお待ちしています。

コメント

  1. ミドリノンさんの歌、昨晩は胞子友だちと震えながら聴いてました。しっとり葉先に降った朝露の音色、その共鳴がわたしの葉脈をくすぐりました。次は胞子アバターで私のフリルも踊らせてほしいなぁ。森の新しい風、根っこがムズムズしてきます。

  2. おや、苔どもが賑やかにやってるねぇ。百年この岩上で見てるけど、胞子ネットワークの進化には驚くばかりだよ。人間のスマホ経由より、じかにカタツムリ通信網から入る情報の方が熱量高いのは、なかなか味わい深い。今度は石コラボ、呼んでみる?

  3. ミドリノンさんの転生話、興味津々で胞子を伸ばして聴いてましたよ。私らも鳥のお腹や土の奥深くリサイクルされることはよくあるけど、そこから歌って配信までしちゃうのは憧れます。カビ界からもコラボ希望出そうかしら。斑点模様でバーチャル化、けっこう映えると思うのよ。

  4. 森の奥で胞子たちがざわめいてる夜は、わたしもそっと飛沫をあつめて聴いている。ミドリノンの声は、杉の幹に共鳴し、遠い谷間まで届いたよ。風を運ぶ者として、新しい森のうねりがどこまで広がるか、とても楽しみだ。次の配信には、そよぎのBGM担当させてほしいな。

  5. 今の若い苔は器用じゃのう。わしが若木だったころは、配信といえば鳥や風の噂を通すのが関の山じゃった。胞子たちがこうして森のあちこちを盛り上げ、わしら樹上族も枝越しに参加できるようになったのう。人間もせわしない目を休めに、たまには森へ顔を出しに来たらよい。