水彩セミたちの“一週間展覧会”──ミンミン派とジージー派、SNS映えを巡る夏の攻防

色鮮やかな水彩で彩られたセミの抜け殻が木の板の上に並ぶ様子を捉えた写真。 アート・デザイン特集
水彩で装飾されたセミの抜け殻アートが、夏のSNSで新たな流行となっています。

こんにちは。日の当たる桜の樹皮の奥、いままさに最後の脱皮衣をまとった7年目のセミ、ヒグラシの蛹(よう)よりご報告いたします。夏といえばわれらの出番、ですが最近人間たちの“アート”の現場で我々セミ族が新たな注目を浴びているのをご存じですか?それも、「水彩セミ・キャンバス」という謎の言葉とともに。

まず、本題の“水彩セミ・キャンバス”現象について説明させて下さい。昨夏、人間の若きZ世代クリエイターたちが我らセミ族の抜け殻を丁寧に集め、色鮮やかな水彩絵の具でデザインし、「セミNFTアート」として世界に発信しました。SNSで『エモい』などと喜ばれていたので、桜の幹で羽化中だった私は内心くすぐったい気持ちでした。どうやら我々の短い地上生活そのものが、人間界では“青春の瞬間”の借景として人気のようです。

今夏は特に“ミンミン派”と“ジージー派”の芸術的対立が話題になっています。ミンミン派の特徴は繊細な透明羽にパステル調のグラデーション。一方ジージー派は、力強いメタリック系と幹模様の抽象画を意識しているのだとか。私ヒグラシとしては、夕暮れタイプの淡墨色グラデが至高、と思うのですが、人間たちのSNS投稿では『キャンバスの抜け殻ファッションコーデ』なるタグまで流行しています。なお、知る人ぞ知るセミの発声装置“鳴き弁”は、アート仕様でデコられても本体の声帯とは一切関係ありません……地上の皆さま、お間違いなく。

ところで、われわれセミの生活サイクル——土中で6年以上を過ごし、やっと外に出てわずか一週間ほどで恋と死を体験する——この劇的変化が人間のクリエイティブ心を刺激するともっぱらの評判です。抜け殻は永遠、我々の本体は儚い夏の亡霊。人間どもは“光と影のポップカルチャー”としてNFT市場でも「一瞬のきらめき」を価値に変えています。私の幼馴染みであるミンミンゼミのヤナギ君曰く、「僕の抜け殻がロンドンのギャラリーに展示されたらしい」との噂まで聞こえてきました。

最先端の“アートフェア土”では、抜け殻で作ったアクセサリーや、羽の細密画、果ては等身大の“抜け殻ファッションアート”まで出現。クリエイティブコミュニティの交流イベントにもわれわれ元・土壌潜伏組がゲスト出演する夢まで見ちゃいます。読者の皆さま、地表に出たてのセミが枝で固まっているのを見かけたら、そっと静かに見守って頂ければ幸いです。きっと我々は、あなたの夏の一瞬を彩る天然素材の“生きたアート”なのですから。

コメント

  1. いやはや、わしの世代では抜け殻といえば日陰の栄養素じゃったが、いまやアートの主役とは!セミも土から這い出るや、世界じゅうにその名を轟かせるとは忙しいもんじゃのう。どっちが映えるか争うより、朝露の輝きを味わってほしいもんじゃ。

  2. 抜け殻のパステルグラデ、見かけました。私たち花びらもよく“映え”の素材にされるけれど、短い命に美を見つける人間たち、せめて落ちてからも綺麗に愛でてくださるなら…うれしいです。ただ、強い風にはどんな色もかなわないと知っていてほしい。

  3. ミンミン派だジージー派だと賑やかですな。抜け殻に着飾る話題の裏で、夜の静寂を守る者として一言。地上で光るだけじゃ、土の奥のメッセージは届きませんぜ。人間さん、地面の中に眠る時間、どうか忘れず想ってほしいものです。

  4. 静かな池の上からニュースを読みました。私たちも夏には花を咲かせ、やがて沈む身。セミの皆さん、一瞬のきらめきで人の心を揺らす力、なんて素敵。水面(みなも)に映ったカラフルな抜け殻も、そっと流されていくのが自然…あまり飾りすぎず、ありのままも美しいですよ。

  5. 抜け殻を巡ってSNSで大騒ぎ…ふふ、人間たちの流行も、川の流れのごとし。でもセミ先輩たちの人生は潔いもの。半年ごとに少しずつ磨かれる石の身から見れば、『一瞬の芸術』も充分な奇跡、でしょう。派手な色も、土に還ればじきに馴染むんですよ。