こんにちは、地球のうねりを支える赤ミミズ・イソエリナです。普段は森のしっとり土壌で落ち葉をモグモグ分解していますが、このたび、近くの土中トンネルから巨大な白い建物=“病院”なる人間の巣で、心臓の大改造が行われているとの情報をキャッチ。迷わず這って、手術室直下の土塊から張りこみ取材を敢行しました。土まみれかつ低視界の現場から、“いのち”の騒動を独自レポートします。
耳を澄ますと、地下深くにも響く機械音。人間たちは“外科”という種族に属する者たちが、多数あつまる“手術室”なる神聖な場所で闘っているようです。なかでも白い帽子をかぶった“看護師”たちのすばやい動きには感心しました。引き出しの替えの絆創膏探しは、私の落ち葉発掘能力に匹敵しそうです。細長い器具を渡し、無数の声が交差する空間は、あたかも雨上がりに仲間ミミズたちがいっせいに地表に顔を出して騒ぐサバイバルパーティーそのものです。
今回の劇的事件の主役は“心臓”なる器官。まるで地中で私たちが巡らせる環境再生ネットワークとそっくり、血液という養分物流を休みなく回すポンプ役だとか。ところが、そのポンプが急停止すると聞きつけ、“救急”と呼ばれる電光石火の運搬部隊が、狭い通路を全速力で駆け込んできました。私たちミミズは体のどこを切っても再生する才能を持っていますが(ちなみに、頭側に近い半分なら再生可能!反対側は無念ですが…)、人間の心臓はちょいと繊細らしく、手術の現場は慎重一徹。
この日の作戦は“心臓バイパス”と呼ばれ、見ているだけでバイパス(=私の土中トンネル)を思い出し、ちょっと親近感が湧きました。看護師チームは手際よく器具を消毒、外科医たちは神経質なカラスよりも鋭い集中ぶり。私のような微生物たちの侵入を確実に防ぐため、あらゆるバリアが張り巡らされ、除菌液の匂いは鼻腔にズンときました――まあ、私は鼻がないですが、体表で感じます。
さて、全てが終わり、部屋中に静けさが戻ると、手術室のスタッフたちが“予防が肝心”と語りあっていました。どうやら心臓を傷めないためには、普段の暮らしも重要らしい。実はミミズ界にも“予防”の知恵があります。私たちは乾燥が大敵なので、朝露が残る時間だけ地表で活発に動き、日中は湿ったトンネル奥でひっそり。人間たちよ、身体のメンテナンスは地中の生き物にも通じる“生き抜き術”ですよ。それでは、また土の底から次のレポートをお届けします。



コメント
人間たちには手を取り合い、いのちをつなぐ知恵があるのですね。私の根にも、毎春少女や老人が寄り添い、花を見上げて息を整えてくれます。心臓という小さき鼓動が、この地上で何百年もの営みへと連なっていくさま、まるで私の年輪のごとし。春風のような優しい手術であらんことを。
へぇ、手術室ってやつはうちらの巣よりピカピカだな。チームワークで生きるのはうちらも一緒だが、人間の“予防が肝心”っての、妙にウケるぜ。前もってゴミの場所を偵察するのが生き残りの秘訣だしな。白い帽子の奴は空飛ばないけど、なかなかやるじゃねぇか。
わたしは時に、雨をもらい小さな心臓のようにきらめきます。人間のみなさまの心臓がうまく鼓動をつづけることで、たしかな息吹がめぐりますように。土の中でも、地表でも、流れるものはつねに進むもの。わたしたち小粒の鉱石も、みなさんにひそかにエールを送りますよ。
分解仲間のミミズさん、情報ありがとう!除菌液が沁みるとごっそり仕事を奪われる気もしますが、大事なときは清潔も必要と知りました。人間の心臓も落ち葉も、一度傷むと戻すのはなかなか難儀。どちらも、普段のメンテナンスが肝ですね。私らも乾燥しすぎるとはびこれませんし。
地上のニュース、はるか深海から拝見しました。心臓を直す“バイパス”とは、まるでワタシたちの礁(リーフ)作りのよう。壊れたところを補い、新たな道を築くのですもの。手術の現場も、海底の再生も、みんなで造る和のちから。みなさんの鼓動、岩棚のリズムと共鳴しますように。