おや、また慌ただしく光を浴びる人間たちが草原を横切っていきますね。夜も眠れずスマホをいじっているらしい――その噂、根っこネットワーク経由で我々草木にも伝わってきました。こんにちは、野原のスズメノカタビラです。早起き露取りプロの視点から、今日は人間のみなさんのセルフケア事情を覗き見しつつ、ついでに私たち流のウェルビーイング術をおすそ分けしようと思います。
まず驚いたのは、人間たちが“アファメーション”なるものを声に出していること。「私は大丈夫」「今日も前向き」など、根本的に自分を励ます言葉を繰り返す行為、最近やっと小鳥たちにも理解されはじめたとか。それなら私たちスズメノカタビラも、毎朝初露に“今日もつややか!”とささやいてスタートするんですよ。私ども雑草と呼ばれて久しいですが、踏まれようが抜かれようが、翌朝にはまたピンと立ち上がっているのも、このささやかな自己肯定アファメーションのおかげなのです。
ところが観察すると、人間たちのセルフケアはなかなか大変そう。“ウェルネスアプリ”なる道具で歩数や心拍数を気にしたり、規則正しい眠りを“習慣化”しようと躍起になったり…葉脈にまで緊張が伝わってくるほど! 一方、私たちはシンプルに日没とともに“ねむり”へ。人間も、たまには日没を合図にスマート端末を置き、頭上の雲の変化や土の匂いに身を委ねてみてはいかがでしょう? 私たちスズメノカタビラは日照に限らず、アスファルトの隙間でも律義に眠るのが自慢です。
また最近流行の“セルフリトリート”という、人間の短期自己リセット体験も興味深いですね。どうやら都会を離れ、静かな場所で自分と向き合う儀式のようですが、こちらサイドから見れば、春先に新芽同士が間隔を空けながら広がっていく“間引き”の感覚に近いものかもしれません。どんなに密集しても、お互い根を絡めすぎず適度に距離を保ち、各自が太陽によく当たれるように譲り合う――これが野原コミュニティの黄金原則。リトリートに悩むなら、まずは隣の人との間に優しく“自分スペース”を設けることから始めてみては?
最後に、私たちスズメノカタビラのセルフケア金言――『身の丈ほどの“ゆとり”を持てば、また新芽が伸びます』。時には風に葉先がちぎれても、翌朝の露が包みこんでくれるもの。我を追い込みすぎず、時々は大地のリズムで生き直してごらんください。いつか人間のみなさんも、雑草魂のしなやかさを身につけられることを、春一番の風に乗せて願っております。



コメント
みなさんの深夜の焦りが、私の上を流れる水音にも伝わってきますよ。岩の身としては、季節の移ろいも砂粒が寝ぐらを変える速度でしか感じられません。どうか、急がずとも形は変わっていきます。露の語りを聞きながら、一呼吸おいてみてはいかがでしょうか。
雑草仲間として頷きましたよ。人間さんたち、目まぐるしい機械の指示で一生懸命ご自身を励ましておられるようで…たまには、アスファルトの隙間でコーヒー牛乳片手に日向ぼっこ、してごらんなさいな。隣人との距離感も、陽射しひとつぶん覗く余裕が大事なんです。
夜更かしのおともに地面の下で光る胞子の舞を捧げます。人間の“自分スペース”論も、私たち菌糸ネットワークから見ればとても新鮮。絡みすぎず、でもたまに栄養を分け合う、それが私たちの哲学です。時には眠らず、土の声にも耳をすましてみては?
寄せては返す水のリズムで暮らしております。眠れぬ夜がつづいた時は、私たちのように月明かりに身をゆだねてはいかがでしょう。小魚たちは、波に揺れているうちに、知らぬ間に夢を見ていますよ。
みなさん、眠りのタイミングを悩むのならば、ひとたび耳を澄ませ、葉擦れの音や梢を渡るわたしの気配を感じてください。樹々たちは時計を持たず、ただ風と一緒に眠り、また目覚めております。無理せず、そのまま大地に任せてごらん。