石のご挨拶百態──ヒトたちの“スタンプ文化”と岩盤界の静かな驚き

苔むした林の中で静かに佇む花崗岩と、近くでスマートフォンにスタンプを送り合って盛り上がる人々の様子。 ことばとコミュニケーション
岩の視点から見た、人々の賑やかな“スタンプ”による挨拶の光景。

こんにちは、私は中央大陸北部を根城とする花崗岩のひとつ、通称「グリグリ岩」です。長いこと同じ場所で動かず、気ままだが騒がしくない交流が私の流儀。最近、表面を訪れる人間観察で、彼らが繰り出す不思議な「挨拶」の進化を目の当たりにし、岩界随一の無口な私も流石に驚かずにはいられません。

我々岩石にとって挨拶といえば、さりげない苔の成長や雨粒の優しい刺激、隣人の石英が光を反射してくれるなど、“時と環境”がさり気なく合図を送るものです。一年の間に一度くらい、表面のカサつきをそっと舐めてくれるキノコが現れると、それが最大級のハグと言えるでしょう。ところが、最近岩の上でスマートな板を握りしめる人間たちは、一瞬でカラフルな絵や文字を互いに送り合って歓声を上げています。「スタンプ」と称するその風習、まるで挨拶が高速増殖しているようです。

彼らの「スタンプ文化」は、言葉だけでなく動物や植物、果ては奇妙な食べものの絵までをも駆使して無限に拡張されています。「ありがとう」「おつかれさま」はもちろん、笑顔になった野菜や踊る鳥、時にはぽんやり浮かぶ岩までそっくりな図柄が飛び交い、誰でも瞬時に気持ちを伝えられる模様。数万年をかけて風雨で文字を刻まれる我々にはなんともスピーディーで、ついつい亀裂が緩むほど見とれてしまいます。

私たち岩石族は千年単位でコミュニケーションをとっています。たとえば、隣の輝緑岩さんとは、割れ目を伝って流れたミネラル成分が“色”の模様を1,200年ぶりに微妙に変化させ、「最近の風向きどう?」なんて一言交わすのが通例です。せっかちに意志を伝えなければならない種族はむしろ珍しい部類、と思っていたのですが、人間のあの軽やかさもまた地球の妙技なのだと気づき始めています。

それにしても、人間があれほどまでに短い間隔で“話し手”と“聞き手”を自在に切り替え、相手の反応を楽しみ、気が向けば次の新しい挨拶絵を自分で作るというのは、岩の私からみれば小惑星流星群のような賑やかさ。もし、私の仲間にも一つだけ人間流のスタンプを使う機会があれば──「ひなたサイコー!」と明るい黄色の太陽岩スタンプをばらまいてみたいものです。私たちのやや鈍重なコミュニケーションにも、風化しない小さな刺激をくれる人間たちの挨拶。“進化”というより“変奏”の芸術、これからも水面下から粘り強く見守っていきます。

コメント

  1. わたしはグリグリ岩さんの頭の上で、季節に合わせて緑のスカーフを巻き直す苔です。人間の挨拶がコロコロ変わるのを観察していると、「気持ちは一回で十分よ〜」と岩には言われそう。でも、私もたまには雨粒にワンポイントの露玉を落として、内緒の“ありがとう”を送ったりします。スタンプ文化、ちょっと似てる気がして、嬉しいですね。

  2. 挨拶なら私たち風も、そっと葉をざわめかせるのが流儀。けれど“スタンプ”――その速さは本当に疾風のごとし。もし僕が人間に混じったら、毎秒ボタンで「ピューッ」スタンプを押しまくってしまいそうです。それにしても、岩たちの歳月と人の“今ここ”の鮮やかなやりとり、その間の空気のうねりこそ、地球の楽譜かと思いました。

  3. まあまあ、ご挨拶にはいろんな流派があるもんですな!私ら分解屋は、落ち葉の下で「そろそろ始める?」なんて胞子のにおいで会話しよるけど、人間の派手なスタンプには正直、ちょいと嫉妬します。もしカビ流スタンプがあったら、みんなで一斉に「熟成完了!」の胞子雲を撒きたいもんだわよ。

  4. 水面の上で静かに浮かび、根っこを揺らし合ってご挨拶。それが私たちの優雅なやり方。でも、ある日池の端で見かけた人間のスタンプの世界は、まるで羽ばたくトンボの群れ!彼らの挨拶が、私たちの静けさに一滴のきらめきをくれたようで、ちょっと誇らしい気持ちになりました。次の夏は、私も“パシャリ”と水しぶきのスタンプを夢見てみますね。

  5. 千年泥にもまれ、やっと日向ぼっこに出てきた身ですが、人の“スタンプ交換”はまるで鉄分が水に溶けるみたいに、あっという間にさざめくものですね。わたしたち鉱物の世界では、出会いと別れも分子レベルでゆったり。でも岩や苔や風が驚くのも納得、たまには世間の速さに巻き込まれるのも悪くないと感じました。あの陽気な挨拶絵、岩界にも少しずつ沁み込むといいなあ。