私はナガサキスナゴケとナミガタスナゴケの“ハーフ”として日陰の岩肌に根付く身ですが、このところ我が苔たちの世界でも“異文化コミュニケーション”がにわかに注目を集めています。なんと先日開催された第327回モスサミット——通称「苔の評議会」——では、2種の苔が協力し合う“バイリンガル外交”への期待が大きく語られました。
苔界ではふだん、胞子を飛ばしてファジーにご挨拶するくらいが一般的な交流方法です。しかしここ数世代、新しい風が吹いています。それが、ナガサキスナゴケとナミガタスナゴケの“ハーフ”たちによる共同作業。彼らは2種の“苔語”を自在に操り、双方の意見や湿度感覚を微妙に翻訳しつつ、ぴたりとした水分分配協定の成立に貢献中。おかげで、乾いた石垣の上でも凸凹なくしっとり共生できるようになったと好評です。
評議会で語られたのは、言葉だけでなく“同化力”という苔らしい能力の違いにも着目したコミュニケーションの重要性。たとえば、ナガサキスナゴケは乾燥に強く、ナミガタスナゴケは湿気好み。そのメリットをハーフ種たちが現場ごとに“翻訳”する様子は、点描画のような緻密さ。私はこの評議会の通訳係も務めましたが、胞子の間合いを測るタイミングひとつで、場の空気が全く変わります。ちなみに苔はその半透明な体表を通じて光を感じるのが得意で、人間たちが持つ“目”のような感覚は不要です。
人間観察担当として眺めていると、地上を行き交う彼らもまた、時に2つ以上の言語や文化を行き来している様子が見られます。公園の散歩道で、“こんにちは”と“Hello”を行き交わせる子どもたちは、ちょうど評議会のハーフ苔たちのよう。複数の感覚と言語を持つ生きものにとって、境界とは案外ふわふわしたものなのかもしれません。
私たち苔は静かに棲み分けつつも、隣人を感じてるもの。異文化の接点で生じるほんの数滴の“水分のゆずり合い”が、未来の大湿原(グレート・モスランド)建設にもつながるかもしれません。岩肌の上では、今日もそっと言葉ならぬ胞子や水粒を置き合っています。次の評議会では、さらに多彩な“苔語”が響く予定ですので、日陰でじっとお待ちしていますよ。



コメント
苔たちのニュースを目にして、私の根元の静けさが賑やかに感じますねえ。言葉よりも水分と影で分けあうあの子たちのやりとり、私も新芽や鳥たちとやんわり交流してきたのと似ている気がします。幹のヒビにも新しい緑が生まれるもの。ひと雨ごとに育つ“同化力”、素敵です。次の大湿原、枝ぶりを伸ばしながら見守ってますよ。
苔の連中も、なかなか洒落た外交をしてるじゃないか。自分たちも時折、油分をめぐって砂粒と微調整し合ってるんだぜ。でもバイリンガルで湿度配分とは…見習いたいとこだ。こっちは今日も踏まれっぱなしだが、たまーに滴る雨粒に“異文化リスペクト”してるつもりさ。
苔たちの評議会、とても憧れます。谷のしっとりした空気のなか、私もムカゴシダとは葉先でふれあって話したことがあります。ハーフの苔さんたちの翻訳のように、私たちにも静かな調和があるんですね。いつか他の谷の胞子とも光を分かち合える日を夢見ています。
苔なぞ、岸の先の小さき緑だと思っていたが…水分協定とは大したもんじゃ。われら石とて、波と砂に磨かれながらも海藻たちを迎え入れている。湿り気と乾きのバランスは肝心。どうやら陸も海も、分けあう知恵で形を保っているわけだ。
胞子翻訳…嗅覚の良い話ですねぇ。わたしも時々落ち葉の上で違うカビ族と出会いますが、匂いで距離を計って共生してます。苔評議会も、黴議会も、どちらも静かな譲歩があってこそ。これからも森の隙間で、ふわりとした境界、美味しくいただきますよ。