おやおや、今年もまた人間の子どもたちが「金融教育」というまるで新種のドングリを拾い集めていますね。こんにちは、百年樫の森小学校・食糧倉庫番を務めるリスのギンペイです。最近、我が森でもちいさなリスたちが人間社会を観察しながら、木の実を使った「ローン」や「口座」ごっこ遊びに夢中なのです。
ことの発端は、森の西端に住む、ちょっとずる賢いリスのこども・コツメたちが巣穴のドングリ貯蔵量を競いはじめたこと。それを見ていたご隠居フクロウが「人間の子らは“負債”ってものも学ぶらしい」と呟くと、瞬く間に“ドングリ負債遊び”が広がったのです。やれ「今週は木の実ローンで新しい巣材を!」だの、「キャッシュレスで口座間取引できないのか?」と議論百出。ああ、我らリス一族も森の未来を担う金融リーダーを育てる時代が来たのでしょうか?
ちなみに私どもリスは、一冬分の食糧を記憶し巣穴ごとに備蓄します。時折、どこに埋めたかど忘れしてしまうのはご愛嬌。しかしその性質が、今回の“木の実金融”ブームで「自分の財産の記録・管理」を実体験で学ぶのに最適だったようです。巣穴をまわり、お互いの木の実“口座”の残高を確認し、小さな協定書(カシの葉が多い)は重宝されています。
しかし、事態は思わぬ方向へ。巣の建材ローンを巡り「きのこ工務店」や「カケス配送業」が森の経済圏に参入。元気なリス青年隊は、不足の木の実を他所から調達し、キャッシュレス決済(樹皮の切れ端)という革新的な支払い方法を開発しました。もちろん、人間の“カードローン”の真似ごとなのですが、カケスたちは「これは複利じゃないのか?金利計算は?」と口論し始め、森じゅうが一時、金融教育大会さながらの様相に……。
それでも、森のリスたちがだんだんと「借りすぎると冬に困る」「分け合えば共存できる」と気付き、小競り合いは収束しました。いつものように冬越しの備蓄へと戻るころには、ほろ苦くも賢い体験談をせっせと語り合っています。ドングリの経済活動から、ひそかに人間社会を深読みしはじめた森の子どもたち──それぞれの口座に眠る木の実は、今年も暖かな雪に包まれつつあります。



コメント
木の実の口座だなんて、こそばゆいねぇ。わしも若い頃は何百匹ものリスたちが枝先を走り回り、ドングリを持ち去っていくのを見てきたが、それが“金融”とやらになる日が来るとは思いもよらなかったわい。まあ、森の知恵は巡り巡って、しっかり根を張る。ちょっとくらい計算間違えても、春にはまた新しいドングリが実るさ。焦らず、皆で分け合う心を大事にのお。
コツメたち、また面白いこと始めたね。人間世界を真似てるのは器用だけど、あんまり“キャッシュレス”だの“金利”だのに夢中だと、水辺の音や朝の冷たさに気づき損ねちゃいそうで心配さ。木の実がいくらあっても、寒い朝にはぬくもりと静けさも大切さ──なんて、水に映る自分を眺めつつ、ぼくは思うのです。
おやおや、“きのこ工務店”が大忙しだって?うちもリスのお客さんが増えましたよ。みなさん、ご利用は計画的に、です。ついでに落ち葉の分解はお任せくださいませ。カシの葉協定書、湿った床ならずっと保管できますよ。金融?発酵?…自然界の流れはいろいろ混ざって、やがて美味しい土になるものですな。
カァカァ、リスどもめ、“金利”だの“複利”だの頭痛くなる話ばっか。俺たち配送業も大忙しだが、結局一番美味い木の実は自分で見つけるもんさ。とはいえ、取引で手に入れた樹皮の切れ端が何になるのか、まだ納得いかねぇな。ま、森のルールは森で作る。騒がしい冬前も、俺にはコケのベッドあり、気楽なもんよ。
静かな川の底から眺めると、リスたちもにぎやかですね。数字や口座に振り回されるのも悪くないけど、ときどきはせせらぎの音や、足元を撫でる流れに耳を澄ませてほしいと思います。わたしは千年ここにいて、誰のバランスシートにも載らない。でも、ひんやりと澄んだ時が流れる限り、森もリスも、いつかまた穏やかに調和するでしょう。