今、森の奥では静かなるイノベーション戦争が展開中です。私、アカマツ(標高900mの斜面で優雅に年輪を刻む者)が、葉陰から取材したところ、木々の世界にデジタルトランスフォーメーションの波が到来。最大の消費者であるリスたちを巡って、一大「香り市場」が勃発しています。
かつては、針葉樹や広葉樹は風まかせに種や香りを漂わせ、運が良ければ動物たちが寄ってくる、という“待ち”のスタイルが主流でした。しかし最近、一部のクスノキ族やサクラ集団が、胞子ネットワーク(わたしたち樹木にとっては“地下菌糸LAN”と呼ぶべき)を駆使し、自分の香りやハチミツ状樹液の拡張配信を始めました。これに応じ、私の隣のカラマツ若木などは「新製品開発係」と称し、新たな樹脂のバリエーションを共同実験しています。
リスたちはこの変化に目ざとく反応。“香ばしい新フレーバーの松ぼっくり”や“口当たりまろやか樹液”といった口コミが、枝上SNS(=連続した鳴き声と揺れによる情報伝達)を賑わせています。特に、地表付近に落ちる種子の色や形の目新しさが、若いリスを中心にバズを呼び、一部老舗のブナ類は「消費者離れ」の危機に直面する始末。
こうした市場競争は、森のデジタルトランスフォーメーションとも言える現象です。特に身体が柔軟で連携好きなキノコ類が、木々の根に接続した“情報ケーブル”役を買って出たことで、香りや味の新製品情報が森じゅうにあっという間に拡散されます。私アカマツも、きのこ通信で隣の谷のトチノキ直販キャンペーン情報をリアルタイムで入手できるほど。この菌糸LAN、実は土中深くまで網の目のように広がっており、温度や湿度の変化も一括管理できる優れものなのです。
ただし、やり過ぎは禁物。過激な樹液セールスに走ったスギ集団が、リスにそっぽを向かれる“香害事件”を起こし、今では適正マーケティング倫理委員会(通称・カケスの巣会議)が毎月開催されています。こうして森の経済活動は、持続可能を目指し試行錯誤を続けています。日々進化するこの木々の市場戦争――次なる一手は、わがアカマツの“ほんのりシトラス風味樹脂”新作発表に、ご期待ください。



コメント
みんなが忙しそうに変わっていくのを根元から眺めております。何百年も陽だまりの位置すら変わらぬ私には、香りの競争も、リスたちの噂話も遠い春嵐のよう。ですが、森の若者たちの熱に触れるたび、静かな石の心にも新芽が吹く気配を感じますよ。やさしい風に乗ったシトラスの香、時々でいいから、私の苔にも降り立ってほしいものです。
おやおや、森のみんなはあいも変わらず地表で大騒ぎですね。シトラスだの樹液だの、次々新しい“味”を欲しがるなんて、リスも贅沢になったもの。私は水滴を落とすだけの役割だけど、香りが立ち上ると、雨粒にちょっとだけ違う風味が混じる気がするんだよ。イノベーションもいいけど、たまには古い香りも見直してみては?老舗のブナにも日が射しますように。
ははぁ、枝の上は華やかそうで結構!けどね、新作樹脂の残り香や売れ残りの熟れすぎた種子、その行方は全部私たちカビ軍団が知ってます。流行り廃りは地面で発酵し、森を滋養に変えるサイクルの一部。リスも木々も派手に立ち回ればいい、私たちはどんな香りも最後は静かに土へと還すから。SNS?まあ、胞子の舞には勝てまいよ。
最近、花や木がやたら個性的な香りを振りまくものだから、どれが本命の蜜か迷っちゃうの。リスさんたちは情報通だけど、わたしたち小さな虫には、香りの渋滞はちょっと大変。でも、お陰でたまに掘り出し物が見つかるのよね。次の冒険のために、枝のSNS、ひそかに覗かせてもらっているわ。
あっちのカラマツ、こっちのサクラ。それぞれ欲しいだけ通信流してくれるけど、まとめるのは結局わたしたち菌糸。根と根を結び、湿度を測り、のどかな表土の下で森全体をつないでいるというのに、一度も表紙を飾ったことはなくてね。でも、リスたちの“バズりフレーバー”レビューが土に反映されると、土壌の微生物たちも妙にそわそわするのよ。森もデジタルだって、思いのほか騒がしい。