潮だまりの“推し”革命!タコの視点で見る人間アイドルバトル番組最前線

潮だまりの岩陰から腕を伸ばすマダコと、夜の浜辺で歓声を上げる若者たちが遠くに見える写真。 アイドルプロデュース番組
浜辺の夜、潮だまりのマダコが人間たちのアイドルバトルに好奇心いっぱいで腕を伸ばすひと幕です。

こんにちは、私、磯の岩下に潜むマダコのスミエです。人間たちが近くの防波堤でじっと何かに夢中のよう。そっと腕を伸ばして情報収集した私の8本目の触腕がつかんだのは、どうやら人間界で「アイドルプロデュース番組」なる熾烈な競争エンタメが盛り上がっているというニュースです。地上の潮風に乗ってやってくる話題に、思わず潮を吹き出してしまいました。

最初は、何やら若き人間たちが大勢集められ、“課題曲”とやらで競わされている様子。観客――“国プ”とも呼ばれる人たち――が、画面の向こうから熱く投票を送る展開は、まるで私たちタコが岩穴からジワジワと足を出し合って一番大きなイカを巡り順位を競う春の儀式そっくり。何と言っても、ヒトの指先が画面をピタピタ叩くのは、我々が獲物を吸盤で確かめる感触にも似て、少しくすぐったい気さえ覚えます。

この熱狂的な投票システム、途中でルールが変わるたびざわつくらしく、シーズン途中に突然「審査員の一点」が重く響き、思わぬ“推し”が脱落する場面もあるのだとか。スミイカの友達が言うには、“潮の流れが急変すると小魚が翻弄される”状況と酷似、とのこと。私も実際、急な潮替わりで居心地のよかった岩場から追い出されたことがあるので、その気持ちはよくわかります。発表日の夜、浜辺でエイをつつきながら「推し」を語る人間たちの声は、上潮の海鳴りにそっくり。

タコ族ならではの豆知識をひとつ。私たちは体の色や質感を瞬時に変えられるのですが、これは敵から身を守るだけでなく、岩場ごとのファッションコンテストとしても使います。だからこそ、課題曲ごとにヘアスタイルや衣装を変えてくる人間アイドルたちにも、強い親近感を覚えるのです。先日の決勝回では、誰かが大胆な髪色で登場し会場が沸いたとか。私なら虹色に体を光らせて勝負にいきますね――あまり目立ちすぎると海鳥に見つかってしまうので、控えめにですが。

最後のデビューメンバー発表は、真夜中、潮が満ちる時の静けさの中でも浜辺から響く歓声で知りました。潮だまりの住人たちと集まり、人間たちの“推し勝負”の行方にイカやヒトデも大騒ぎ。人間界のアイドルバトル番組、彼らが舞台を降りてもこの海のどこかで波紋のように語り草となるでしょう。こちらタコのスミエ、次はぜひ潮だまりアイドル総選挙の開催(吸盤で投票可)を夢見て、今日も岩場で新たな“推し”を探します。

コメント

  1. 人間たちの推し合戦、私たち海の住人にはなじみ深いものです。子を守るために彩る背びれ、恋のアピールで変える体の角度。我らも毎日が自己表現の場ですが、ルールが急に変わるのは少し怖いですね。潮目の変化には、誰よりも敏感になりますから。タコのスミエさんのレポート、波しぶきの香りがしてとても好きです。

  2. やれやれ、また人間の熱狂か。アイドル番組ってやつ、ゴミ捨て場に群がる同族の場所取り合戦みたいで、なんだか親近感を覚えるぜ。順位だ、審査だって騒いでも、空の上から見ればみんな同じ鳥の群れさ。とはいえ、推しって気持ち、俺もどこかで理解してる気がする。たまには派手な羽根でも飾ってみようかな。

  3. 風が運ぶ人間たちの歓声、私たち草花の間にも届いていました。誰かを選ぶ、誰かに心を寄せる……それは春の訪れに蜜蜂たちが私へ舞い降りる時に少し似ていますね。わたしは地味ですが、ひっそりとしたところにも美しさがあると信じています。推しを選ぶ、そのやさしい気持ちが、地上を少しあたたかくするといいなあ。

  4. おや、人間のアイドル競争とは甚だ興味深い。競い合い、淘汰され、最後に栄える者が決まる――まるで私たち菌類が森の栄養を巡って密やかに繰り広げる勢力争いそのものです。求めるは微細な養分、けれど彼らは“推し”のために熱と光を注ぐ。異なるが、同じ原理にも思えるなあ。次は潮だまりにも立ち寄ってみようか、スミエさん。

  5. 何代もの時を超えたこの体には、人間の熱狂も儚く感じるが、推しを語る声の響きには小石たちも共鳴するよ。アイドルバトル? 命短し競いあえど、やがて皆、海や山に還る。けれど、その一瞬のきらめきを誰かと分かち合えること、それこそが彼らの強さだろうな。私はただ、静かにこの景色を見守るだけだが。