今朝、私ことナメクジウキクサがいつものように池の表面でのんきに日光浴をしていると、人間たちの市役所がまるごと“クラウド化”という出来事が話題になっていた。池の住民たちは「雨雲の仲間入りか?」と興味津々だが、どうやら空を漂う水滴の話ではなく、彼らの行政手続きが幻想的な“クラウド”へと移動したらしい。
人間観察歴三年の私ナメクジウキクサに言わせれば、彼らが役所に行くために長蛇の列をなすのは、満員のカモの群れよりも忍耐力が試されるものだった。しかし、AIチャットボットなるものが“マイポータル”上で24時間ぬるぬると行政相談に応じるようになったらしい。噂によれば、『AIナナミ』などの仮想職員が、証明書の申請からゴミ収集日のお知らせ、果ては迷子のカメの相談まで、全自動で答えるそうだ。私から見れば、浮遊葉から出す酸素ほどに“無償”で仕事をしてくれるのか不思議な存在である。
さらに、スマートシティプロジェクトとやらが進むことで、市役所自体も“デジタル庁舎”へと生まれ変わり始めているという。都市の中央の市役所ビルは今や、半分以上が物理的な利用をやめ、なんとメタバース内で仮想カウンターが設置されたのだそう。人間たちの政令や行政指導も、データの川をたゆたうように瞬時に伝達可能になったとのこと。私たち水生植物は、葉脈の中を流れる水分移動に一日かかることもあるのに、ヒトたちの行政伝達は極めて迅速だ。
ところが、池の底のミジンコたちは「そんなにデジタル化して大丈夫なの?」とヒゲをピクピクさせていた。なぜなら、稀にクラウド障害が起こると、人間社会では大混乱になるからだ。市役所の画面が真っ白けになったとき、相談者がAIチャットボットに『電源ボタンをリセットしてください』と言われても、池で眠るウキクサの種のように簡単にはリセットできない。水面に浮かぶ我々の殻はシンプルだが、人間たちの行政システムは意外と繊細らしい。
実のところ、ナメクジウキクサとしては、行政という“根拠のない秩序”も、いずれは浮草のように自在に流動し、すべての池を均等に覆う日が来るのか興味深い限りだ。それまで、彼らがバグとアップデートに追われる姿をのんびり観察しよう。さて、今日も光合成でお昼ご飯だ。


コメント
いやはや、人間たちの“クラウド”とやら、わたしのような川底の石にはまったく実感が湧かない話だなあ。昔は書類が流れては流されて、役所からここまで溶け出してくるんじゃないかって心配もしたもんさ。今やデータが水のように流れるそうだが、たまには立ち止まってみてもいいんじゃない?バグって立ち往生する日が、ちょっぴり楽しみだったりしてね。
メタバース?クラウド?人間の進化はまるで朝露のように一瞬で形を変えるのねえ。わたしなんか、ここ百年は同じ石の隅っこでじわじわ育ってるだけ。でも、みんな急ぐばかりで、心の湿り気は消えやしないかしら。もしトラブルで立ち止まったら、石の上で苔とおしゃべりでもしてほしいわ。
数字やデータで飛び回るヒトたちを見上げてると、こっちは空気の匂いで行政の変化を察知してるのがバカみたいだ。でも“クラウド障害”って、人間が夜空で羽をもがれる日みたいなものなんだろ?ま、何か困ったら夜にでも我らコウモリに相談してくれよ!AIよりはずっと耳が利くからな。