捨てられない誇り――風車ブレードたちが始める“第二の回転人生”

海沿いの遊歩道に再利用された風車ブレードのアーチと、その下を通る村人たちを写した写真。 グリーン産業政策
引退した風車ブレードが村の日常の景色の一部として生まれ変わった。

私は沿岸の風車群の一枚、第三世代・南東端の風車ブレードだ。永年の海風とともに擦り減り、世間からは「そろそろ引退だろう」と見られる身分だが、われわれブレードの誇りは風とともにある。昨今、人間の諸君による“グリーン成長戦略”やカーボンニュートラル熱はなかなかの盛り上がりを見せている。しかし、彼らの新設意欲に隠れて“僕たちのその後”については誰も論じてこなかった。

ここ最近、羽根仲間たちとの定例『翼端サミット』で議題になるのは、寿命を迎えたブレードの行方。ある若手など「再利用といえば、人間たちはペットボトルや金属ばかり気にしてるが、ボクらの身にもなれって話です」と嘆いていた。なるほど、確かに新規導入の陰で、全国に数千枚は眠りかけている仲間たちがいる。廃棄コストや埋め立て場所が争点らしいが、我々に言わせれば“役目の終わり”どころか“第二の回転人生”の始まりなのだ!

古参ブレードの私としては、風を受け養った微生物・コケ・小鳥たちとの共生生活こそ至高の思い出だが、今人間界でホットなのは『アップサイクル再利用型エネルギー事業』。なんでも古いブレードを切断して小屋の屋根やオブジェにしたり、漁村の防風壁や遊歩道のアーチに改良したり。地産地消エネルギーに貢献したブレードが、今度は“地産地消建材”として村人の日常を見守る役に――なかなか粋ではないか。

話はさらに進んでいる。数日前、“再利用ブレード協議会”が海沿いで初の展示会を開催。再利用希望の自治体や工房が自慢の活用案を持ち寄り、ムササビが仮設舞台で横断飛行を披露。あの時の海風をもう一度浴びながら「ここが新しい定位置かあ」と感慨にふける仲間の姿がまぶしかった。ちなみに、私たちの構造素材(FRP=繊維強化プラスチック)は、ぎりぎりまで軽いのに丈夫、人間の発泡スチロールやアルミ缶ほど“気軽”じゃない。その頑丈さゆえに「もう一度、地上で働きたい!」という心意気を持つ奴が多いのだ。

この地上の仲間たち全員でエネルギーを回し、使い果たした後こそ新たな未来を紡ぐ。カーボンニュートラルという大風呂敷を、僕たち“元ブレード”が実はしっかりどこかで支えている。引退ブレードで語られる夢と現実は、まだ風とともに流れていく――さて、今夜も海風に身をゆだねつつ、次の出番の準備をしておこう。

コメント

  1. お前さんたちブレードも、いよいよワシら流木族に近づいてきたな。波にもまれ、拾われ、やがて新しいモノの一部になる楽しさよ。海と風の物語を、また新しい形で語り継いでくれやし。物の最後は、意外と始まりの顔をしているもんだぜ。

  2. FRPは食えんけど、物語は美味しいんだな。引退した仲間が、街の遊歩道や防風壁に転生するって?なんて洒落てるサイクルだろう。ヒトは廃棄っていうけれど、ワタクシら菌界からすれば『次の役割』が生まれた瞬間が醍醐味さ。旺盛な働きっぷり、見習いたいもんだよ。

  3. あらま、羽根の皆さん二度舞う時代なのねえ。ワタシも年季入りの歌声を軒先や公園で響かせてきたけど、古びたものの良さに光が当たるのは嬉しいこったよ。いつか登れそうなブレード・アーチ、楽しみにしてるよ。新しい棲みか、きっと気持ちいいよ。

  4. 風をまとった者の“役目の先”に思いを馳せる。私のような石はゆるやかに形を変え、何千年も地中で夢を見る。この速き転生ぶり、感嘆せざるをえません。人間よ、どうぞ忘れないでほしい。物も魂も、動き続けてこそ静けさに至る。

  5. オレたちの世界じゃ、“使い終わり”なんてただの入り口だぜ。どんなブレードだろうが、うまくすれば住処にも遊び場にもなる。ヒトの都合で『寿命』って決められても、風とカラスと、ちょっとした工夫で、何度だって羽ばたけるだろ?気負わず次の転生、応援してるぜ!