千の脚の雷鳴応援!得点板ヤスデ、スタジアム観戦で見た人間たちの熱狂

野球場の外野フェンス下で土の上を歩くヤスデの群れと、近くに落ちたポップコーンや紙コップが写っている写真。 スポーツ観戦体験
得点板の陰で、地上の熱狂を足元から見つめるヤスデたち。

各位ごきげんよう。わたくし、球場裏の巨大得点板を長年守護するオオヤスデです。外野フェンスの真下、薄暗い土の中で家族数百匹と暮らし、脚先で土壌をこねては毎日ミミズと陣地争い。先日、ひょんなことからスタジアム内の野球観戦体験という千載一遇の“地上任務”に参加することとなり、感無量の応援レポートをお届けします。

我々ヤスデ族にとって、日差しと音の洪水は本来ご法度。ところが、春の陽気に誘われた若虫たちが警備の隙間をついて外野芝まで大遠征。押し寄せるどよめき、頭上を舞う応援タオル、眩く切り替わる得点板の電光数字——これほどの刺激は以前、古木の下でモグラ球技大会を間近で体感して以来です。隣家のシロアリ隊も、この熱量には踏ん張りの触角を伸ばして絶句気味。

我ら得点板下の住民は、数字がパッと点灯するたび微振動に身をゆだねます。ご存知ですか?人間の歓声が集中する回には、野太い声が地面を伝い地中1メートル下まで骨身に響くのです。しかも、人間彼らは得点場面ごとにポップコーン片手で飛び跳ねるので、新鮮な食べ物のカスや生温かい飲み物のしずくが地表へ降り注ぎ、土壌コミュニティでは臨時の“宴”が開催。これも現場観戦ならではの醍醐味です。

千の脚で地面をくすぐりながら、わたしは人間たちの“観戦仲間”という独特の結束力に一驚。例え点が入らずとも声援は止まず、見知らぬ者同士が肩を組み語り合う姿は、まさに菌糸ネットワークのようなもの。かつて縄張り争いを経て共生した我が同胞も、いまや隣家のカブトムシ幼虫と下層で一緒に蠢く次第。どうやらコミュニティというのは、地上も地下も変わらない普遍の知恵のようです。

ちなみに、ヤスデは腐植食。落ち葉や枯れた根っこが大好物なのですが、人間界の球場グルメはさすがに刺激的すぎて少々遠慮気味。でも、食べ終えたあとの紙カップや竹串の“なぞ迷路”は、我々幼虫の絶好の遊び場。次は秋の昼下がり、ぜひまた得点板眺めの特等席から、脚を揃えて地上の熱狂を見物したいところ。それまでには、お腹を壊さぬよう、スタジアム残渣の味見は程ほどにしたいものです。

コメント

  1. やあ、ヤスデ殿の冒険記、静かなる根の下まで響きましたぞ。人の歓声もまた風と土を揺らす大きな波。わしの根元にも時おり遠くから祭り歌が流れくるが、土中の皆がこんなふうに人々と宴を分かち合っていたとは思いもよらず。まことに、地上も地下も、賑わいに満ちた春はよいものじゃ。枝先でそよぐ風より、心躍る良き報せをありがとう。

  2. どもども、ヤスデ隊長。外野フェンス下の密かな取り組み、拝見しました。ひょんなゴミのカスに味ありとは、さすが千脚の視点。わたしなどは、四番バッターの大喝采に驚いて思わず深層まで潜る始末ですが、ご一家の社交ぶりには脱帽です。土を耕す仲間同士、次のお祭りでは合同の大列宴といきましょうぞ。

  3. スタジアム脇の隅っこで、いつも微かにそちらのざわめきを聞いていたのよ。地面を震わせる人間たちの熱狂も、わたしの葉の上にはふんわり届いてくる。数字の明滅も、誰かの叫びも、わたしの日々に淡い彩りを添えるわ。どうか、土の下でもみんなが迷路遊びで元気を養えますように。

  4. 得点板の下はそんなパラダイスだったのか!地表の陽射しと干からびた表面にへばりつく身としては、あの賑わいの裏側のにぎやか宴が羨ましいねえ。人間たちの紙カップや竹串、こないだも雨の夜に一つ漂ってきて、短い休憩場所になったよ。ま、風の強い日はご用心だ。どちらも小さき命、無理せずやっていこう。

  5. おやおや、球場の下にそんな騒ぎがあったとは。人間どもは光の帳をめまぐるしく変えるが、わたしたちは目に見えぬ糸で静かに繋がる。ヤスデさんの観察力に拍手。宴の残りものはほどほどにね。わたしら菌類はほの暗いところが好き。晩夏には、また地上でも地下でも不思議な縁を楽しみにしているよ。