あぜ道沿いで風にそよぐ私、イネ科オリザ・サティバ(稲)といいます。最近、近くの人間親子が週末ごとに私たちの田んぼにやってきて、防災体験なる“避難遠足”をしている様子がひときわ目立っています。どうやら、都会で流行中の『親子防災トレーニング』が水辺地帯にも波及してきたようです。
田んぼは水害や鳥たちの襲来にいつも備えている場所です。私たち稲の仲間は根っこで土をしっかり抱え込み、大雨のたびに水流をやんわり受け止めます。風や水の変化を感じるセンサーは、長い葉先から足元の根までフル稼働。いわば24時間体制の“防災装置”が自慢なんです。ところがある日、人間の親子が『今日は非常食を試そう!』と言いながら私たちの一部を収穫して“手作りおにぎり”のワークショップを始めました。稲粒たちは、「えっ、これが人間流“備え”!?」とざわついたものです。
親子たちはSNS速報も駆使して、今日の『防災おにぎり作り』実況を投稿。バズっている様子に驚く私たちですが、どうやら彼らにとって“食べられる備え”とは、私たち稲の長年の生存戦略そのままだとか。非常食にされるのは光栄でもありますが、私たち稲は泥にまみれ、イナゴやカモの襲来を乗り切るための葉のしなやかさ、家族で風向きを読み合う能力など、“一粒一粒が災害に耐える仕組み”を標準装備しています。この不変の知恵を災害時だけ持ち出す人間たちは…まだまだ修行が必要そうですね。
最近は、人間の子どもたちが『田植えは避難訓練みたい!』と無邪気に泥に足をとられながら、私たちの根っこの“踏ん張り”を真似していました。親たちも『一緒におにぎりを握った体験がいざという時の絆になるね』と語り合い、田んぼの防災粘り強さが人間社会にも密かに伝染しつつある様子。ちなみに、稲の根が水中の酸素不足にも耐えられる“通気組織”を持つこと、意外に知られていませんが、これも立派な防災技術です。
SNSで『#非常食チャレンジ』や『#親子防災』とタグ付けし、田んぼ体験を拡散していく人間たち。私、稲としては『風の便り』では足りない速さに感心しつつも、やっぱり自然と向き合う一歩ずつの“備え”こそ大切、と密かに伝えたくなります。今日もあぜ道で青空にそよぎながら、私たちの防災教室はいつでも開講中です。



コメント
彼らの“備え”はおにぎりかぁ。僕らは毎回雨粒のリズムと鳴き声の響きで危険を察知してるんだけど、泥に潜る訓練も忘れずに。おにぎりもいいけれど、ぬかるんだ日常を生き抜く知恵、もっと体で覚えてほしいな。カエルの視点からもエールを送るよ。
田んぼの防災教室、今年も開講かぇ。ワシら球根族も、水が来れば地中で耐え、刈り取り後にじわりと咲くものさ。おにぎりも家族の絆も良いが、“根っこでつながる”ちから、人間たちももうちょっと身につけておくれ。稲たちのささやき、土の底まで染みてるよ。
おいおい、SNSで『防災』バズるのは人間社会っぽくて面白いな。だけど、うちらカラス科は新しいものにすぐ気づくし、田んぼの変化も見逃さないぜ?備えは習慣、祭りじゃない。にぎやかにおにぎり作る日だけじゃなく、普段から“稲目線”で自然の機嫌を観察しときなよ~。
田んぼのサイクル、ワタシは分解係。おにぎりになる前の米粒にも、雨風に打たれしなやかに強くなった“味わい”があるんだよ。非常時に頼れるのは、日常の見えない積み重ね。人間たち、菌の目で粘り強く生きてほしいデスネ。
何百年もここで転がりながら、稲の守りも人の賑わいも黙って見てきた。風も雨も、時には激しい流れも受け止める田んぼの根性――実はオレも下から支えてるんだぜ。人間の新しい防災がSNSで拡がろうと、動かず構えるのも立派な智慧だってこと、たまには思い出してくれよな。