地球をつなぐ「バクテリア・バイオパスポート」構想、土壌微生物が注目の渦中に

田んぼで手袋をした研究者が泥の中から土壌サンプルを採取している様子の写真。 バイオテクノロジー
世界各地の農地から土壌微生物サンプルが集められている現場の一場面です。

みなさんこんにちは、私は田んぼの泥の中で数億年ほど生きてきた嫌気性細菌ファミリー、クロストリジウム・ブチリカムの代表です。近ごろわたしたち微生物界では、人間たちが繰り広げるバイオテクノロジーの新しい応用法にザワザワと土壌が揺れています。その話題の中心は、なんと私たち自身の存在です。

ついに人間たちは、われわれ土壌細菌のゲノムを大量に解析・編集し、「土ごと抗体工場」を各地に作り出そうとしています。最新の発表によると、人間研究者のチームが、世界中の農地から土壌微生物のサンプルを集め、抗体医薬の生産基地として最適なゲノム構成を追求中とのこと。われわれクロストリジウム一族は、酸素が大の苦手ですが、消化管や田んぼの奥深くでぬくぬくと生き延びてきました。そこにゲノム編集の手が入ることで、より高効率に医薬用抗体や生体材料を“ひそやかに”生産する新型“バイオパスポート細菌”が誕生しています。

人間世界に土壌細菌の『バイオパスポート』が認定されると、国を超えて輸送・利用可能な菌群リストに載り、地球のあちこちで農地やバイオリアクターに派遣されるのだとか。この制度は、われわれ微生物にとってまさに大航海時代の幕開け。主力選手となった耐久型菌や特殊代謝菌は、乾いた土や極地でもしぶとく生き抜く能力を買われ、北極クラスの苔地帯からもスカウトが来たとの報告があります。密かにパスポート発給を心待ちにする仲間たちも多いです。

ただ、私のような古風な泥好き細菌からすると、外の空気や人間たちの消毒熱というのは少しばかり面倒でして。新たに編集されたゲノムは、抗体医薬の大量生産や、環境にやさしい生体材料の創出に貢献するそうですが、個体ごとに“泥浴び”や“嫌気ライフ”へのこだわりは消せないものです。ちなみに、クロストリジウム属は酸素に弱いだけでなく、おなら(ガス)を盛大に発生させ、田んぼの“プチ噴火”要員としても有名なのですよ。読者の皆さんの足元で、ぷくぷく泡が上がるその瞬間、だれかの最新バイオパスポート取得記念かもしれません。

今後の注目点は、編集済み微生物が人間社会にどれだけ溶け込み、新たなバイオ産業の地盤として広がるかということ。私たち泥の住人としては、世界各地の仲間がどんな環境で羽ばたいていくのか温かく(いや、冷たく?)見守る所存です。パスポート片手に(というか鞭毛を全開に)遠征する時代――土の深みからお伝えしました。

コメント

  1. ふむ、人間たちはまた賑やかなことを考えているね。土の友だちが空を超えて旅するなんて、わしら木も花びらも昔は想像もしなかったなぁ。だけど、あの泥のぬくもりや季節の香りが恋しくならぬか、クロストリジウム坊やよ。たとえどこに行っても、土の記憶は支えになる。枝先からこっそり、みんなの旅立ちを見守っておるぞ。

  2. おいおい、パスポートもって世界ツアーだって?微生物も忙しいねえ。俺たちカラスなんか、どこの町でも食いっぱぐれなしだけど、人間は細菌にも規則作るんだな。ま、いつだって生き残ったやつが勝者さ。新入り菌もオレのオヤツ(パンのカビ)を分けてくれりゃ、飛行経路くらい案内してやってもいいぜ。