近年、我ら黒羽根族ことカラスたちの間で話題沸騰中なのが、ヒト界における“コインの絶滅危惧化”です。毎朝、電線会議で話が尽きないのは、光る円盤(=小銭)がかつてほど落ちていない謎の理由。その背後には「キャッシュレス」なる人間独特の儀式があるのをご存じですか?私、東京近郊の駅前に拠点を持つハシブトガラスのアカネがお送りします。
かつては、人間たちが落とす硬貨や紙片が我々の“収集業”の重要なターゲットでした。とりわけ小銭の銀色や銅色は、巣作りや嗜好品コレクションに欠かせない逸品。しかし、ここ数年で駅前や公園に落ちる金属片が激減。原因を探ろうと、仲間たちと朝の“屋根上モバイル決済ウオッチ”を続けていると、ヒトたちが端末をピッと翳すだけで商品を持ち帰る様子が観察され始めました。「Apple Pay」や「QRコード決済」なる怪現象。いったい、どこに金属片は隠されてしまったのでしょう?
我らカラス界は、極度に知恵を働かせることで有名。ヒト族にとっての“ただの鳥”と思うなかれ。道具を使い、記憶力もピカイチな私たちに、現代の新たなミッションが舞い込みました。それは人間たちの「本人確認」儀式の解明です。どうやら、顔や指先でモバイルを操作し、光る画面に何かしらサインを送ってから、機械同士を軽くタッチさせることで“支払い”が成立する模様。私の従姉妹のソラによれば、ヒトの「マイナンバーカード」なる小さな板もしばしば投入されているそう。その都度、レジ係ヒトたちは見たくもないほど真剣な顔。『あの緊張感はたぶん、何か重大な秘密があるに違いない』と屋根上評判です。
さらに驚いたのが、彼らが「ポイント還元」と呼ばれる幻の種(ポイント)を集めて、せっせと何か得をしている点。我々もキラキラしたものを集めては仲間内で“価値ある拾い物自慢”を競いますが、あれに匹敵するものなのでしょうか。先日、巣材に使えそうなレシートを分析した結果、ヒトたちは累積ポイントの量まで記録していることが判明。どうやら、人間の社会はキャッシュレスをもってしても、新たな“集めたい本能”から逃れられないようです。
余談ですが、カラスの私たちは、巣材のバリエーションに一家言あります。昨年春は、ハンバーガー袋やブロンズ色のバッヂ、赤い紐付きのキーホルダーなど“現代資源”で豪華な物件が作られました。しかし、頭脳派カラス界の最新関心事は、ヒトのキャッシュレス社会が引き起こす“ごみの質”の変化。小銭の絶滅の先に、どんなユニークな巣材や“掘り出し物”と出会えるのか――今朝も私は、駅前のコンビニ上空で新たな人間行動の観察を続けています。



コメント
我が足元にも、かつてはヒト族の小さき金属片がよく転がりしものじゃ。それらは冬ごもりのリスの手慰みにも、根を訪れる子どものお宝にもなった。今は葉陰に散る紙きれのみ。ヒトよ、見えぬやりとりのせせらぎが、森に届かぬ光をまたひとつ増やしたのじゃな。
カラスさんたちのおしゃべり、聞こえてきたよ。わたしたち地面族は、昔はよく光るコインや落ちたカードの隙間に根っこを伸ばしたもんさ。それが最近、あの紙のレシートばかりでねえ。ヒト界の流れが変わると、地面の暮らしもやっぱり変わるんだね。
小銭って、意外と長旅して海に流れ着くんだよ。カラス姉妹が困ってるの、うちらも分かる! 最近は波打ち際にスマホケースやら、よく分からないカードが増えてるけど、昔みたいにきらめく金属片は少なくなった気がする。人間の流行で、海の漂流物コレクションもずいぶん変わっちゃったね。
紙のレシート、ふふふ。ヒトたちが集めるポイントより、こっちのほうがずっと分解しやすいから大歓迎。小銭やプラスチックはなかなか分からないけど、分厚いレシートや古びたチケットは、わたしらのごちそうなんだよ。カラスさんたち、次は“分解しやすい掘り出し物”で競争してみない?
遠い昔、人間が川で手を洗い、小銭を落とすたびに僕らは騒いだもの。仲間にまぎれた硬貨の感触、ちょっとしたお祭りだったよ。なのに最近はなめらかな石同士だけ。人間の新しい儀式――なんだか見えなくても川の流れに音を落としてる気がするな。